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小さいころ、お内裏様の「刀」が大好きだった。
妹の親王飾りの刀は、鞘ごとではあるが抜くことができた。
その精巧な細工の(子供の目にはそう見えた)刀を抜き、
お内裏様に持たせるようにして想像上の敵と戦うのが、
ひな祭りのひそかな喜びだった。
とんでもないことだが、
おひな様に刃を向けたこともあった。

気持ち的にお内裏様と刀は「おれの物」であった。
五月人形がない家だったのだが、寂しくなかったのは、
サムライ成分をひと足早く
お内裏様から吸っていたからだと思う。

今年生まれたばかりの娘のひな人形は、
長野の伊藤母が買ってくれた。
ずいぶん奮発してもらったようで、
とてもいいものだったが、
届いた時に心の中で叫び声をあげていた。
刀がない!!

童顔のかわいらしい木目込み人形であり、
お内裏様の腰に刀のオプションはなかった。
「‥‥こんなの、おれのお内裏様じゃない‥‥」
お前のじゃねー、と自分にツッコんでいるうちに、
3月3日になった。

【材料】
・干し椎茸(水で戻して、酒、みりん、しょうゆで煮る)
・油揚げ(油抜きをしてめんつゆで煮る)
・ご飯(固めに炊き、市販のすし酢をまぜる)
・卵(味つけなしで焼いて細切り)
・エビ(背わたをとってゆでる)
・タイの刺身
 (梅酢と煮切った酒を合わせたもので軽くヅケ)
・セリ
・紅ショウガ

妻にも、妻の母にもけっして言えない落胆を
隠し味にしたちらし寿司。
複雑なその思いが効いたのか、できばえはすごくよかった。
刀は、食玩でも探して買おう。

*「祝、再開」メール、ありがとうございました!

2010-03-11-THU
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