時はけっこうさかのぼって、2009年6月。
以前から、糸井重里と懇意にしてくださっている
(当時は)新潮社の編集者・松家仁之(まさし)さんが
2009年度から2010年度までの2年間、
慶應大学のSFCで、ゼミを持っていたんです。
で、そのゼミの授業の一環として
学生のみなさんが
「ほぼ日を、もっと良くするには?」
というアイディアを考え、
ほぼ日にもって来てくださったことがあります。
今から約2年前のことです。
ふだん、それほど交流が多いとはいえない
20歳前後の大学生が大挙してご来社。まぶしい若人。
何チームかにわかれて発表してくださり、
いろいろと
参考になる意見をもらったんですけど、
糸井重里の第一声は
「新しい読者を獲得するアイディアとかを
たくさん『プレゼン』してくれたけど、
きみたち、何かのセールスマン?」
ぼくら乗組員にとっては、
まぁ、ふだんのMTGのノリなんですが、
学生さんたちは、
やや面食らってしまったようでして。
そんな前段があっての、今回です。
松家さんが学生たちに課したのは
「ほぼ日に載せてもらうとしたら
どんなコンテンツ?」
という、さらに一歩踏み込んだ課題。
あとから聞いたら
「前回のリベンジだと思って頑張った」
学生さんも、少なからずいたようです。
そういう経緯を知ってるぼくらとしても、
ドキドキしつつ、かなり楽しみ。
2011年1月19日、発表当日。午後6時。
数ヶ月の制作期間を経て作り上げた
コンテンツを持って、
ぞくぞくと、学生さんたちが集まってきました。
こころもち、みんな緊張している様子。
こちら、ゼミの先生である、松家仁之さん。
前回、来ていただいたときは
新潮社の『考える人』と『芸術新潮』の
編集長を兼務されていました。
有名な作家の方々に、たいへん信望のあつい
名編集者・松家さんは、
このときすでに新潮社を退社され、
おひとりで、お仕事をはじめられたところ。
‥‥と、準備も整ってきたようです。
われら「ほぼ日」乗組員も
学生さんといっしょくたになって着席。
発表が始まるのを待ちます。
もちろん、糸井重里もいっしょです。
慶應大学SFCの学生さんたちは
いったい、どんなコンテンツを用意してきてくれたのか。
はっきり言って、ワクワクします。
さっそく、コンテンツを見せていただきましょう!
どんなコンテンツ?
「わたしは、大学に行ってないから」。
おばあちゃんがもらした
そんなひとことをきっかけにして
「ふたりのおばあちゃん」と
「ふたりの小学生」に、
大学生活を体験してもらうという企画です。
実際にデザイン関連の授業を受けてもらい、
生協で好きなお昼ごはんを買って食べ、
一日の最後に感想文を書いてもらいました。
知りたかったことは、
自分たちが何気なく通っている「大学」って
大学生じゃない人の目には、
いったい、どう映るんだろう‥‥ということ。
いちばん伝えたかったことは、
「大学って、楽しいよ」っていうことです。
担当
松村直・遠藤泰己・上原歩美・加藤千晶・大川朝子
どんなコンテンツ?
いま、ぼくたちを取り巻くネット社会のキーワードは
「デジタル」と「批判的」だと思いました。
そこで「デジタルをアナログに」「批判を肯定に」、
そんなコンテンツができないか考えたとき、
思い浮かんだのが「ラブレターを書く」ということ。
しかも、ただラブレターを書くのではなく、
ふだんの生活で、まったく感謝をしていないものに
ラブレターを書きたいと思ったんです。
そこで、ぼくたちは、
「胃」「肘」「眉毛」「コンタクトレンズ」
「体脂肪」「鼻毛」
‥‥というようなものに、ラブレターを書きました。
パッションだけで、突き進んでしまいました。
これが、ぼくたちのコンテンツのすべてです。
担当
土屋洋和・丸本智也・坪田美代子・中川佳織・森夏香
どんなコンテンツ?
ツイッターの「裏アカウント」を、そのまま見せる、
というコンテンツです。
裏アカウントというのは、
ふだん使ってる「表」アカントではつぶやけない
本音や愚痴などをつぶやく場所なんですが、
ぼくたちのチームは、なぜか根の暗いメンバーが
そろってしまいまして(笑)、
で、そんなぼくらがつぶやく「裏のつぶやき」を
単純に見てもらおう、というものです。
それを公開することで
何かメッセージを伝えたいということではなく、
自分たち自身も、
何を感じるかわからないんですけれど、
見た人が、どういうリアクションするか知りたい、
それを受けて、何かを考えてみたい、という
いわば「リアクション待ち」のコンテンツです。
担当
瀬川明日奈・塚本隆太・清水玲那・渡邊崇・西田将之
どんなコンテンツ?
このコンテンツの主人公は、ふたりの「孫」です。
島根県育ちの岸優希さんは
おばあちゃんから
開けた瞬間に「島根アピールのすごい」宅急便を
送ってもらっています。
さっき、暗いつぶやきをつぶやいていた
西田将之くんのおばあちゃんは、茶道をしていて、
日本中を飛びまわっています。
西田くんは、そんな元気なおばあちゃんから、
いつも日本各地の名産品を送ってもらっています。
ふだん、おばあちゃんから「もらってばかり」の
この一人暮らしの学生ふたりが、
「たまには、お返ししなくちゃね」ということで、
おばあちゃんへ「宅急便」を出し、
それが届くまでの記録を、コンテンツにしました。
担当
田中丸大・山本義仁・竹村めい・岸優希・龍山千里
どんなコンテンツ?
わたしたちは、ふたつのコンテンツをつくりました。
ひとつは、メンバーのなかに
「手フェチ」がけっこういることが判明したので
みんなで「手の写真」をたくさん持ち寄って、
別に「手フェチ」じゃないメンバーも含めて
「好きな手」について語っただけのコンテンツです。
もうひとつは、
「好きなもの」「きらいなもの」「虫」「鬼」など
いろんなテーマについて
大人とこども両方に絵を描いてもらったら、
どうなるんだろう‥‥というコンテンツです。
両方ともに、写真や絵を見ながら、
みんなで語り合う、というスタイルにしました。
担当
仲里和・寺園佳・藤澤伸・藤井陽平・遊佐純麗・森有紗
どんなコンテンツ?
ぼくたちは「今、やってみたいこと」を
コンテンツにしようと決めました。
そして、いろいろ話した結果、
それは「旅に出ること」だとわかりました。
6人のメンバーを、3人ずつの2チームに分けて
南北を目指し、青春18切符で、所持金は3000円。
温泉に入る、駅弁を食べる、名所を訪れる、という
みっつの課題をクリアしつつ、
それぞれ、1日で行けるとこまで行ってみるという
対決要素も入れました。
これは、たまたま同じ班になっただけの、
もともと友だちだったわけでもないメンバー同士が、
「移動がメイン」となるこの旅で、
空白を埋めるように無理矢理しゃべりしながら
衝動のままに旅をした、その記録です。
担当
中尾めぐみ・赤木央哉・山本倫子・竹村郁哉・渡邊佳奈・谷口駿太郎
さてさて、いかがでしたでしょう?
ぼくたち、ほぼ日乗組員は
「ほぼ日に載せる」という前提で
ほぼ日以外の人がつくってくれたコンテンツなど
見たことがありませんでした。
ですからそれぞれ、すごくいろんなことを、
感じたり、思ったりしたと思います。
ここに集まった6つのコンテンツは
「ほぼ日」にマッチしそうだ、
あるいは
「ほぼ日」には足りていない、
そういう視点から作られたコンテンツでも
あるんだろうなぁ‥‥とか。
そのあたりのことを、
学生さんたちと、たっぷり話し合いました。
もちろん松家さん、糸井重里もいっしょに。
そこにいた全員で、
「コンテンツ」について、「ほぼ日」について、
つまり
「クリエイティブ」ということについて、
いろいろと話し合ったんです。
学ばされることの多い、とても刺激的な時間でした。
次回から、そのようすを、お届けしていきます。
<つづきます>