糸井 |
重松さんの
『ニッポンの課長』(日経BP社)を読んで、
まず思ったのは、
「全員が課長の組織って、理想じゃん!」
ということ、なんです。
あちこちの課長に
重松さんがインタビューしたものを読んだら、
「課長」という役職は、多くの場合は、
「プロジェクトの責任者」と言い換えられるから。
重松さんが、課長にターゲットを絞って
取材をしたがった動機は、
「チームプレイでやっている仕事を見たい」
と思ったから、なんじゃないですか?
|
重松 |
重松清さん |
そうなんです。
ぼくのオヤジは、
営業課長だったんですが、
ぼくの持っている課長の印象って、
その昭和四〇年代のイメージで
終わっていたわけです。
係長以上、部長以下。
ぼくにとっての課長は、
組織の序列の、
双六のマス目の中の
ひとつに過ぎなかったんですよ。
ところが、今の課長を
ちゃんと取材してみると……
すごい仕事をしている実感が
あったと言いますか。
たとえば、チョウザメ課のトップは
チョウザメの仕事をしているし。
糸井さんがおっしゃったように、
プロジェクトの単位としての課があるから、
企業内企業のように自立している面があります。
ただ、同時に、課長と言った瞬間に、昔ながらの
社長、専務、常務、という序列も意識されますよね。
課長という職制自体は減ってきて、
シニア・ディレクターとか、
いろいろな呼ばれかたを
するようになってきていますけど、
二一世紀の組織に向かう、
過渡期の課長の姿を、調べてみたいと思いまして。
|
糸井 |
そう言えば、課長の名刺って、
最近、もらわなくなったもんね。
「課長」って、確かに、
これから失われていく絶滅種なんだけど、
機能としては、かならず、何かに、
その遺伝子が受け継がれていくだろうし。
だから、
「重松さん、課長を調べるなんて、
いいカンをしているなぁ」と思った。
この本に出てくる課長って、
それぞれ、ひとりずつ、立っているんですよね。
ツブ立ちしているというか。
これが係長だと、
「いやぁ、ワタシじゃなくて
あの人に聞いたほうがいいんじゃないか」
みたいなことになりそうだし。
|
重松 |
横に逃げちゃう。
|
糸井 |
部長になると、「詳しいことはわからん!」とか。
|
重松 |
(笑)そうそう。
|
糸井 |
その点、課長は、
プロジェクトのぜんぶを掴んでいる。
だからおもしろい。
|
重松 |
課長って「責任者」ですよね。
だから、ツブ立っているんだけど、
取材していて思ったのは、
「個々の課長の立ち方と部下の数が、
反比例していること」なんです。
ひとりぼっちの課のひとが、
いちばん、キャラが立っている(笑)。
ところが、おそらく組織の中では
浮いてそうなタイプだったりするんです。
課長が沢山の部下を率いると、
管理職のひとりになっちゃうんで、
やっぱり、
「ひとりしかいない課の課長」っていうのが、
なんか、いちばん潔くてスガスガしくて。
|
糸井 |
(笑)そのとおりです。
|
重松 |
糸井事務所には、課長って、いないですよね?
|
糸井 |
役割としては、ひとりずつが、課長なんですよ。
「予算組がちいさければ、
仕事はいくらでも増やしていい」
というやりかただから。
仕事を無限に増やしていくと、
そうならざるをえないですよね。
役職をつけると上下が生まれちゃうんで、
今は、平らなままにしているんですけど。
|
|
(土曜日に、つづきます) |