CHABUDAI
チームプレイ論。
『ニッポンの課長』から見る仕事と組織。
腕のいい個人事業主として技術を磨けば磨くほど、
職人としての技能は、仕事をする中の一部だと実感する?
作家・重松清さんの近刊『ニッポンの課長』をきっかけに、
おたがいの最近の仕事論や組織論を、ぶつけあってみたよ。

もともとは、別の雑誌に掲載する用の対談だったんですが、
『日経ビジネスAssocie』さんのご厚意により、脱線込みの
たっぷりした時間を、「ほぼ日」にもまるごと掲載します!

『疾走』『ビタミンF』などの小説で知られる重松清さん。
二〇年前の下積時から、多数のペンネームを使い分けて、
どんなジャンルの本も手がけてきた職人ならではの言葉を、
語ってくれたんですよ。対談後半部は息を呑む展開に……。

第17回 よろこびは「ふたつ」にあるんだ

重松 不思議なんですけど、
「ほぼ日」に手帳なんかが販売されていて、
ほしいからクリックしますよね。

「いいものを手に入れたよなぁ」
なんて、うれしがって買ってるんだけども、
「よく考えたら、これでイトイさんのところに、
 けっこう儲けが行ってるんだな」
って、あとで気づくわけです。
インターネットって、
商売感を与えない、と言うか。
 
糸井 そこは研究課題なんですけど、なるべく
与えるようにもしてるんです、ときどきは。

「ムーミン谷じゃねぇんだからさ」
っていう言いかたを、しているんだけど(笑)。

ただ、ぼくたちとしては、
「買ってくれることが、いちばん望んでること」
っていうふうにはしたくないんです。
イヤなら買わなくてもいいや、
ってところがないと、
商売としてはダメなんですよね。

読者にお願いをすることがあるとすると、
たったひとつで、ひたすら
「ほぼ日」を読んでくれること、
それだけなんです。
 
重松 それって、紙芝居屋のオヤジが、
「紙芝居見るなら、水飴買わなきゃダメだよ」
って言うみたいなところじゃないですか?
 
糸井 (笑)そうそう!
 
重松 たぶん、イトイさんも、
水飴屋さんじゃなくて、あくまでも、
紙芝居屋さんなんだよね、主眼としては。
 
糸井 それ、いいたとえだなぁ。
これから俺、そのたとえ、人に使おうと思った。
確かに、ぼくも、
紙芝居がすごい好きだったんですよねぇ。
 
重松 紙芝居屋さんって、
「絶対に買わなきゃいけない」
って決まり、ないんですよね。
こっそり見ていてもいいんだけど、
おじさんから
「たまには買えよ」って言われたりしてね。
 
糸井 ただ、いつも買ってくれる人の中には、
「水飴そのものが好きだ」
って人も現れるんですよね。
手帳なんか、毎年コツコツ改良してると、
そうなってきた。
 
重松 うん、うん。
たぶん、食玩なんかもそうだけども、
やっぱりぼくは、今は、なんか、
「ふたつないとダメなんだ」と思うんです。
 
糸井 (笑)
 
重松 おまけと、キャラメルと。
ライダースナックで育った世代としては、
やっぱり「ふたつ」って重要なんです。
やっぱり、スナックもカードも、
両方好きだったもん。

ひとつのものに、
ふたつの価値観が含まれている、
そういうよさって、あるんだろうなぁ。

手帳が便利っていうのと、
いろんなエッセイを読めるっていうのと、
いっぺんにできちゃう。
ふたつになると、遊びになるわけですよね。

商売だと、一対一対応になりがちだけど、
「うわぁ、ふたつ来ちゃったよ!」
っていうおもしろさで。
 
糸井 (笑)「ふたつ」って、
いいヒントをくれたと思うんです。
商売とおたのしみって、
そういう関係、ですよねぇ。

たしかに、ぼく自身も、よく、
楕円構造っていう言い方をしてまして。
作り手の側にも、楕円のように、
中心がふたつあるというふうに
持っていかないと、
自分で自分を
追いこんでいくようになると思うんですね。
それが結局は、受け手の側にも、
不自由な思いをさせてしまうから。

住まいで言うと、ぼくは今年じゅうに、
たぶん京都に行くようになって、
東京とふたつの拠点で
仕事をするようになるはずなんです。

それがあるおかげで、ぼくもラクになるけど、
ラクになったぼくの影響を受ける社員たちも、
ラクになるだろうと思うんですね。

ライダースナックも、両方ないといけないから、
ぼくが今あれに関わるとしたら、
スナック菓子のほうにチカラを入れて、
捨てられないようにするでしょうね。
 
重松 ところが今は、
それと逆の方向になっていて、
ライダースナックを復刻したら、
カードが増える方向に行っているんです。
 
糸井 そうなんだ?
 
重松 ええ、だからそれは、違うだろうと。

たぶん、糸井さんが
言っているようなことだと思うんですね。

ぼくも、作家をやって、
ルポルタージュを書いて、って……。
 
糸井 重松さんも、そうだよねぇ。
 
重松 ええ。
で、おそらくやっぱり小説でも、
ぜんぜん傾向の違うものを出していかないと、
やっぱりイヤなんです。
ひとつになってしまうのは避けたくて。
 
糸井 なるほどなぁ。
 
  (おわります。ご愛読、ありがとうございました。
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『ニッポンの課長』



「チームプレイ論。」バックナンバー
2004-02-06 第1回 課長はチームプレイの起点
2004-02-07 第2回 タバコを辞めた理由
2004-02-08 第3回 ちいさな自由
2004-02-09 第4回 孤独のともだち
2004-02-10 第5回 仕事の単位は何日なの?
2004-02-11 第6回 夜型? 朝型? 二四時間型?
2004-02-12 第7回 おとなになる、ということ
2004-02-13 第8回 「仕事が好き」と言いきれること
2004-02-14 第9回 理想の組織は、小粋なチーム
2004-02-15 第10回 商売も人も「情」で動く
2004-02-16 第11回 今いる場所を、愛するということ
2004-02-17 第12回 目を届かせない管理
2004-02-18 第13回 だらしがなくなるという成長
2004-02-19 第14回 ほんとは戦争のように重い仕事
2004-02-20 第15回 クリエイター主導の会社が潰れる理由
2004-02-21 第16回 職人の技術は、仕事のほんの一部?


これまでの重松清さん。
父親になるということ。
  重松清さんと、 ややこしくたのしい話をした。」

(2002/12/04〜09)

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2004-02-22-SUN

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