重松 |
不思議なんですけど、
「ほぼ日」に手帳なんかが販売されていて、
ほしいからクリックしますよね。
「いいものを手に入れたよなぁ」
なんて、うれしがって買ってるんだけども、
「よく考えたら、これでイトイさんのところに、
けっこう儲けが行ってるんだな」
って、あとで気づくわけです。
インターネットって、
商売感を与えない、と言うか。
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糸井 |
そこは研究課題なんですけど、なるべく
与えるようにもしてるんです、ときどきは。
「ムーミン谷じゃねぇんだからさ」
っていう言いかたを、しているんだけど(笑)。
ただ、ぼくたちとしては、
「買ってくれることが、いちばん望んでること」
っていうふうにはしたくないんです。
イヤなら買わなくてもいいや、 ってところがないと、
商売としてはダメなんですよね。
読者にお願いをすることがあるとすると、
たったひとつで、ひたすら
「ほぼ日」を読んでくれること、 それだけなんです。
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重松 |
それって、紙芝居屋のオヤジが、
「紙芝居見るなら、水飴買わなきゃダメだよ」
って言うみたいなところじゃないですか?
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糸井 |
(笑)そうそう!
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重松 |
たぶん、イトイさんも、
水飴屋さんじゃなくて、あくまでも、
紙芝居屋さんなんだよね、主眼としては。
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糸井 |
それ、いいたとえだなぁ。
これから俺、そのたとえ、人に使おうと思った。
確かに、ぼくも、
紙芝居がすごい好きだったんですよねぇ。
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重松 |
紙芝居屋さんって、
「絶対に買わなきゃいけない」
って決まり、ないんですよね。
こっそり見ていてもいいんだけど、
おじさんから
「たまには買えよ」って言われたりしてね。
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糸井 |
ただ、いつも買ってくれる人の中には、
「水飴そのものが好きだ」
って人も現れるんですよね。
手帳なんか、毎年コツコツ改良してると、
そうなってきた。
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重松 |
うん、うん。
たぶん、食玩なんかもそうだけども、
やっぱりぼくは、今は、なんか、
「ふたつないとダメなんだ」と思うんです。
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糸井 |
(笑)
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重松 |
おまけと、キャラメルと。
ライダースナックで育った世代としては、
やっぱり「ふたつ」って重要なんです。
やっぱり、スナックもカードも、
両方好きだったもん。
ひとつのものに、
ふたつの価値観が含まれている、
そういうよさって、あるんだろうなぁ。
手帳が便利っていうのと、
いろんなエッセイを読めるっていうのと、
いっぺんにできちゃう。
ふたつになると、遊びになるわけですよね。
商売だと、一対一対応になりがちだけど、
「うわぁ、ふたつ来ちゃったよ!」
っていうおもしろさで。
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糸井 |
(笑)「ふたつ」って、
いいヒントをくれたと思うんです。
商売とおたのしみって、
そういう関係、ですよねぇ。
たしかに、ぼく自身も、よく、
楕円構造っていう言い方をしてまして。
作り手の側にも、楕円のように、
中心がふたつあるというふうに 持っていかないと、
自分で自分を
追いこんでいくようになると思うんですね。
それが結局は、受け手の側にも、
不自由な思いをさせてしまうから。
住まいで言うと、ぼくは今年じゅうに、
たぶん京都に行くようになって、
東京とふたつの拠点で
仕事をするようになるはずなんです。
それがあるおかげで、ぼくもラクになるけど、
ラクになったぼくの影響を受ける社員たちも、
ラクになるだろうと思うんですね。
ライダースナックも、両方ないといけないから、
ぼくが今あれに関わるとしたら、
スナック菓子のほうにチカラを入れて、
捨てられないようにするでしょうね。
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重松 |
ところが今は、
それと逆の方向になっていて、
ライダースナックを復刻したら、
カードが増える方向に行っているんです。
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糸井 |
そうなんだ?
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重松 |
ええ、だからそれは、違うだろうと。
たぶん、糸井さんが
言っているようなことだと思うんですね。
ぼくも、作家をやって、
ルポルタージュを書いて、って……。
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糸井 |
重松さんも、そうだよねぇ。
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重松 |
ええ。
で、おそらくやっぱり小説でも、
ぜんぜん傾向の違うものを出していかないと、
やっぱりイヤなんです。
ひとつになってしまうのは避けたくて。
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糸井 |
なるほどなぁ。
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(おわります。ご愛読、ありがとうございました。
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