重松 |
そう言えば、ぼく、
「ほぼ日手帳」を使っていますよ。
追加販売で、
「まにあわない、買わなきゃ!」って慌てて……。
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糸井 |
(笑)ありがとねぇ。
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重松 |
スケジュール帳が、
「はたらけ」って言われてるみたいですね。
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糸井 |
その思想からはじまった手帳だ、
っていう気はします。
仕事のための手帳でもあって。
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重松 |
ただ、あの手帳って、いかにも、
今を生きるコピーライターの作った手帳だ、
というふうに思ったことがあって……。
一週間の俯瞰ができないじゃないですか。
「今日、一日」しか、
糸井さんの念頭には、ないんですよ。
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糸井 |
一か月か、一日だもんね。
そっかぁ。
そんなことは、思ってもみなかったなぁ。
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重松 |
だからぼくは、
一週間を俯瞰で読む手帳を、別に買ってます(笑)。
短編小説なんかは、
だいたい、三日で一本、書くんですよ。
だから、しめきり日だけを書いてもダメなんです、
それまでに二日要るから。
そうすると、一週間のほうが、
ぼくにとっては、使いやすいんですけれども。
糸井さんは、瞬間で仕事をするんですよね?
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糸井 |
うーん。
長い期間の仕事のときは、
ただ、イヤがってるだけかも(笑)。
確かに、そう言われてみれば、
ぼくは、あらゆる長期の話は、
いったん一日の単位に変換してやってますね。
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重松 |
わかります。
糸井さんのペースって、そうですよ。
ぼくらは、三日の中で何時間寝るか、
とか計算して……。
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糸井 |
それもわかるなぁ。
でも、重松さん、
三日って、作家としては早いですよ。
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重松 |
一年ぐらいかかる人もいますから。
手帳の思想って、あると思うんですよ。
三年連用日記の思想とか、明らかにあるね。
「ほぼ日手帳」がうれしいのは、
二四時間制のところですよね。
夜十一時で終わっちゃう手帳もあるから。
ぼくの仕事って、書いてるのが、
そこから次の日の朝までだったりするんです。
夜十一時で終わる手帳だと、
どこにその予定を入れていいか、
わからなくなっちゃって。
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糸井 |
夜中から明け方までやる仕事って、ありますよね。
ぼく、今、なるべく
朝型に直そうとしているんですけど、
すっごく、仕事ができないですね。
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重松 |
でしょう?
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糸井 |
やっぱり、今までって、
人が寝てからの時間を、使っていたんですよ。
自分では、使っていないと思ってたんです。
どうせ、ダラダラしてるんだし、と思ってた。
でも違った。けっこう、
その時間に、仕事を埋めこんでたんですよ。
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重松 |
そうですよね。
あと、ぼくみたいな仕事をしていると、
手帳に書きこむことが、
あんまりおもしろくないんですよ。
家で仕事をやってると、
手帳に、「恵比寿」とか「田町」とか、
書けないんです。
せいぜい書いても「日経BP来」とか。
でも、それって、相手が来るだけだから。
病院のお医者さんみたいなもんで。
それって、手帳を書く甲斐がない生活で(笑)。
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糸井 |
自宅にいつづけると、
アタマの機動力が、弱まりますよねぇ。
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重松 |
弱る弱る。
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糸井 |
イヤでも出むかないと、
やっぱり、目に見える景色が同じってことは、
人間をつまんなくしますよね。
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重松 |
出向かないとなぁ、とぼくが思うのは、
向こうが長っ尻だった場合、困るんですよね(笑)。
帰ってくれない……。
出向いていると、自分のペースで帰れるじゃない?
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糸井 |
わかるわかる。
飲み屋のママが体を壊すのと、おんなじですね。
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重松 |
(笑)ええ。
三回ぐらい
「じゃ、そういうことで」とか言っても、
通じなかったり。
こちらが、手帳、閉じたりしてるのにね。
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糸井 |
(笑)
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(明日に、つづきます) |