重松 |
タバコの「間」って、
大事だったりするんですよ。
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糸井 |
作家は、そうかもしれないですね。
橋本治くんなんか、
「タバコなしで、もの書きはありえない」
っていう勝手なドグマを作り出してた(笑)。
実際、ぼくも、タバコがあったときの
リズムっていうのは、
「ああいうのは、よかったんだろうなぁ」
ということを、いくつか、思いつきますよ。
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重松 |
ぼくは、左手にタバコを
はさんでいるっていう前提で
体のバランスを取っているんで……。
たまに、何も持たないでパソコンに向かうと、
左側が、傾いちゃう(笑)。
それに、タバコなしだと、
なんかマジメに仕事をしてるような気がして。
「仕事感」があるんですよ。
「労働感」が出てきちゃう。
でも、タバコを持って、こうやると……
趣味の延長、みたいな。
そういう気持ちって、あるじゃないですか。
工場労働者って、
みんな、タバコを吸えないじゃない?
だけどやっぱり、
大工さんなんかは、くわえタバコですよね。
そんな違いかもしれない。
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糸井 |
ちょっと昔の映画をビデオで見ると、
みんな、すごい勢いでタバコを吸ってるよね。
たしかに、タバコって、
「自分にとっての、ちいさな自由」なんだと思う。
ちいさな自由を、自分で
ハンドリングできるというところに、
「生きかたの自由」が表現されるんですよね。
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重松 |
そうなんですよ。
さっき、
「インタビューを受けているときでも、
タバコがないと熱弁になる」
と言ったのは、
ほんとに、そういうことなんです。
ぼくがタバコを箱から出して、
くわえて、火を点けて、
最初の煙を吐き出すまでは、
相手は待ってくれますよね。
そうすると、かりそめでも、
その時間をコントロールできるっていうか。
でも、タバコがないと、質問されたら、
さあ言わなきゃ! すぐ言わなきゃ!
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糸井 |
わかる、わかる。
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重松 |
その場の「間」に、負けちゃうんですね。
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糸井 |
タバコに変わるヘンなことを
発明すればいいのかもしれない。
ぼく、今はガム習慣になっているんですよ。
ガムを食ってるヤツって、
自分でもイヤだと思っていたんです。
態度、悪いですよね。
でも、今のぼくは、どうも、
ガムでタバコの代償にしてるんです。
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重松 |
なるほど。
タバコの灰がポロッと落ちるのは、
かっこいいですよね。
ただ、ガムを噛みながらパソコンを打って
夢中になると、
よだれがたれちゃうんですよ(笑)。
牛みたいになっちゃって。
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糸井 |
重松さんも、タバコに関しては、
いろいろ、苦労があるでしょうねぇ。
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重松 |
けっこう、考えているんですよ。
タバコって、パソコンには絶対悪いから、
と思って試すんですけど。
ヘッドフォンをつけてガムを噛んでると、
こめかみの動きで
ヘッドフォンが動いてきちゃったり、
タバコよりもめんどくさいんです。
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糸井 |
タバコをやめといて言うのもなんだけど、
どこまで行っても、
「吸っていたほうがよかったじゃないか」
という気持ちをひっくりかえすぐらいの
何かっていうのは、
今はまだ、出てきていないですよね。
「最初から吸っていなければ、
こういう問題はなかったよな」
とは思うときがあるんです。
「吸っていなかった場合の
『間』って、なんだろう?」とか。
最近は、吸わないまま来たけど、
けっこう自由に生きている人、
いっぱいいるんですよね。
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重松 |
ぼくの場合は、
「大人の男は、タバコを吸わなきゃいけない」
という刷りこみとかが割とあって、
「タバコも吸わないなんて、軟弱だ!」とか。
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糸井 |
うん。
それに、タバコって、
昔の「小銭で手に入る遊び」なんですよね。
今はやっぱり、世の中が豊かになったんですよ。
タバコなんか吸わなくても、
小銭の使い道がいろいろある。
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重松 |
いろいろ、ありますからねぇ。
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糸井 |
でも、ガムも困りもんですよ。
ガムはガムで、たとえば、包む紙が要る。
ポケットに、いつもこう一枚あるというか。
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重松 |
思い出した。
一晩中仕事をして、ボトルに入ってる
ガムみたいなものをカラにしちゃったら……
ゴミ箱がティッシュだらけになっちゃって。
なんか、その風景が、すごい卑猥なんですよ。
高校生の部屋みたいになっちゃって(笑)。
ガムって、けっこう、いやらしいんです。
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糸井 |
(笑)
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(明日に、つづきます) |