糸井 |
組織が大勢でいる理由って、たとえば
「ロジスティックスを組みやすい」
とか、そんなことばかりでしょう、早い話が。
みんなが欲しがってるところじゃないところに、
どんどん、金がかかっていますよね。
ただ、ほんとは、今の時代の商品って、
結局は「精神的なコスト」っていうのを、
やりとりしてるんだと思うんですよ。
「思いやり」であるとか、「情熱」であるとか。
だったら、大企業につきものの中間業者を、
はぶいてやっていくことができるわけです。
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重松 |
ええ。
お会いした課長さんなんかでも、
みんな、けっこう情があるんですよ。
仕事に対する情もあれば、
組織に対する情もあるんです。
やっぱり、
情報って「情」に「報いる」と書くわけで……
だから、商品って、「情」だと思うんですよね。
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糸井 |
そうなんだよねぇ。
それがないと、やっぱり人は動かない。
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重松 |
動かないんだよね(笑)。
ところが、大きい組織って、
情を捨てないと機能しなくなってしまうんです。
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糸井 |
今、いろいろな組織のなかで
大きなコストになっているものから、
「イヤだけどしなきゃいけないこと」
っていうのをピックアップすると、
たぶん、「悪い人対策」なんですよ。
そこに、めちゃくちゃ時間がかかる。
お菓子の中に自分で虫を入れて
「虫がいた」って騒ぐ人がいないとは限らない、
という前提で動かなきゃいけない会社も多いし、
それ専門の部署もあるわけです。
「郵便ポストの中に生魚を入れて
切手を貼って送る人がいるから、
郵便ポストに
網を張らなきゃならないかもしれない」
みたいなコストって、きっと、高すぎるんですよ。
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重松 |
悪意への想像力を、増やさざるをえない。
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糸井 |
ただ、小さくて顔が見えている範囲で
商売をやってる場合には、
そこのところは「うわぁ、ゴメン!」で
済む場合がけっこうあって。
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重松 |
(笑)はははは。
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糸井 |
組織を小さくすると大変になるけど、
心にはいいんですよ。
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重松 |
そうそう。
そういう面でも、
部長だと大きすぎる気がするし、
課長がいちばん身の丈サイズっていうのは、
あるかもしれません。
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糸井 |
やっぱり
「日本国民で会社に勤めている人は、
全員、課長になれ」という話になるよ。
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重松 |
ニッポン総課長化計画(笑)。
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糸井 |
うん。
課長も、たいしたもんなんです。
たとえば、学生は急には課長になれない。
やっぱり、誰かに小さい拍手をもらったとか、
誰かから銭をもらったとか、励まされたとか、
そういう取引がないと、課長は生まれないものね。
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重松 |
そうそう!
そう言えば、部のない課ってけっこうあったけど、
課のない係って、あんまりない。
課って、部のしばりは、あんまりないんです。
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糸井 |
重松さん、
「課」っていう言葉の語源は調べましたか?
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重松 |
ぼくは、語源じゃなくて、
言葉遊びを書こうと思ったことはあるんです。
「係長」の「係」って、
ニンベンに「系」でしょう?
人間関係の中のものですよね。
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糸井 |
「ライン」ってことかも。
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重松 |
ええ。
それで、「課長」の「課」って、
言ったことが果実になるっていうか。
言葉が実になる。
だから果実を出さなきゃいけないっていうかね。
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糸井 |
成果の「果」なんだ。それ、いいわ。
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重松 |
一回この本にそう書いてみて、
書いたらちょっとクサいなと思って
やめちゃったんですけど。
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糸井 |
口で言うぶんには、いい話だなぁ。
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重松 |
「課」って、課役とかにも使う言葉ですよね。
義務と罰とかにもなる。
ひょっとしたら、懲役囚の労働かもしれませんし。
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糸井 |
「部」との、文字のスタイルの違いもおもしろいね。
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重松 |
たぶん、その懲役のイメージのほうにいて、
愚痴しかこぼさない課長も、日本には、
それはもう、いっぱいいると思うんです。
だけど、愚痴だけじゃない
果実を実らさせている課長もいていいと思ったし、
実際に会ってみるといたから、
ぼくはホッとしましたよ。
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(明日に、つづきます!) |