糸井 |
ぼくが半年前にタバコを辞めた理由って、
無意識だったんですけど、
会社ではたらくということに
すごく関わっていて……
後で気づいたんですけど、
やっぱり禁煙の動機は、
「社長になったから」なんです。
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重松 |
そうなんですか?
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糸井 |
経営者になると、責任が生まれるんですよ。
責任を持たない経営者も、世の中には山ほどいて、
ぼくも、かつては
そのうちのひとりだったとは思います。
だけど、少しは、
その責任を感じていたんですよね。
だから、もちろん、
健康状態はチェックするし、
保険もかけてはいました。
「保険をかける」というのは、
自分がいなくてもやっていけるように、ですよね。
ただ、途中で気づいたのは、
人間ドックに毎年行っている人間が、
タバコを吸うことで、
何かの病気の見つかる発見率を
高くしているっていうことなんです。
オレは、みんなに、
ぜんぜん責任を取っていないな、
と思ったんですよ。
それが、ようやく去年です。
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重松 |
なるほど。
それは、
「扶養家族を持ったお父さんの責任感」
と同じですね。
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糸井 |
そうです。
ただ、娘ができたときは、
まだ、娘のことも、
自分のものだと思っていたんですよね。
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重松 |
うん。わかります。
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糸井 |
ただ、会社にいる子って、
家族のようで他人である、
という存在じゃないですか。
社員に子どもが生まれたりもする。
そうすると、すごい責任があるなぁと思うんです。
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重松 |
昔の糸井事務所のときは、
そうは感じなかったんですか?
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糸井 |
感じなかった。
そのときは、まったくぼく個人の仕事でしたし。
個人事業主の仕事が忙しくて、
寄り集まった、みたいな感じだったからね。
それが最近は、やっぱりどこかで、
この子たちの幸せはぼくが握っている、
とも思うようになったんですよ。
で、禁煙まで行き着いたんです。
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重松 |
おそらく、次は、
自分が死んだあとに、この組織はどうなるか、
というところを考えると思うんです。
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糸井 |
それは、まだ、来ていませんねぇ……。
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重松 |
糸井さんは、タバコをやめて、体調、いいですか?
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糸井 |
息切れはしないです。胃も調子がいいです。
ただ、なによりもいいのは、
どこかでミーティングをしているとき、休憩時間に
「あ、外でタバコを吸ってこなきゃ」っていう、
あくせくした気持ちにならなくていいことで。
それがいちばん、大きいです。
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重松 |
タバコを吸う場所を探さなきゃいけないし。
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糸井 |
重松さん、吸っていなかったですよね?
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重松 |
吸いますよ。
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糸井 |
じゃ、どうぞ。
ぼく、自分もそうだったから、
人が吸いたがるのは、ぜんぜん平気なんです。
長い会議で苦しがってる
かつての仲間を見ることも多いし。
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重松 |
わかります……。
スターバックスとかでも、
タバコを吸えないじゃない?
だから、ぼく、
行きたいのに、行ったことがないんですよ。
スタバに限らず、禁煙のところに行くと、
あっという間に飲んじゃう。
なんか、間がもてなくて。
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糸井 |
外に出たくなるんだよね。
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重松 |
タバコを吸えない場所だと、
インタビューでも、熱弁をふるっちゃうんです。
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糸井 |
話が終わるように、
とどめを刺したくなっちゃうんだよね。
「はい、もう充分です」って言われたくて(笑)。
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(明日につづきます) |