糸井 |
こちらが長っ尻で困っているときって、
「言ってあげないと、相手も困っている」
という場合もあるらしいですよ。
ぼく、前に言われたことがあるんだけど、
「ぼくのような者が、
こちらから帰りますとは言いがたい」
という立場があるみたいで。
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重松 |
そうかー。
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糸井 |
目上の人が、ちゃんと、
「帰りたまえ」のサインを出してくれないと、
「ぼくはもう、あなたといたくない」
って見えちゃうのがコワイんだって。
だから、なんとなく時間が過ぎるという。
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重松 |
そういう気遣いで、奥さんに、
電話をかけてもらう作家もいるみたいですね。
「あ、ごめん。じゃあ十分後に電話をくれる?」
って。
あと十分なんだという位置を教える、みたいな……。
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糸井 |
何時まではオッケーだから、
って最初に言っとく方法もあるけど、
それも実は、言いやすいことじゃないんですよねぇ。
興が乗れば、それはそれで別に構わない、
ってところもあるから。
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重松 |
糸井さんの仕事のような、
具体的な打ちあわせだったら、やっぱり
「できた! 帰ろう」
ってこともあると思うんです。
ただ、作家って、具体的な仕事は
ぜんぶひとりでやるわけだから、
編集者との打ちあわせって、実は、
執筆仕事の時間には換算されないんですよ。
なんか、
「ちょっと顔を見にきました」
みたいなことになって……
だったら、もう早く解放して書かせてくれ、と。
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糸井 |
(笑)急いでいる仕事に限って、
長っ尻の人がいて、っていうこともあるよね。
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重松 |
結局、帰った後に、
何も決まってなかったり。
打ちあわせ自体は、
「それについては、追々……」
とかで終わってるんですよ。
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糸井 |
(笑)
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重松 |
「近々」「いずれ」と。
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糸井 |
ぼくも、具体的に、
「おまえが帰るほうが、早くできるぞ」
って言ったことある。
でも、そのダラダラしてる場って、
つまらなくもないんですよねぇ。
ほんとにつまんなかったら、
急に席を立っちゃったり、
人はひどいことをできるんだから。
だから、「長っ尻で困ったな」って思っているのは、
案外、いいヤツだったりする。
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重松 |
(笑)けっこういいヤツなんだけど、
話の盛りあがりがなくて、こう、
ぬるま湯のように、そこそこたのしい話題が、
それなりに続いていくっていう……。
お酒を飲まないと、
「酔っておわり」というのがないから、
つらいんですよ、あれ。
飲むほうがラクだったりする。
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糸井 |
ぼくは飲まないから、
仕事の終わり目が見えないんですよねぇ。
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重松 |
そうですよね。
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糸井 |
ぼくは、眠くなって終わる(笑)。
ただ、眠いのをガマンしているうちは、
どんどん、仕事がうしろにズレこんでいきますから、
自然に夜が長くなるんですよ。弱ったもんなんです。
だから、朝型にしようとすると、
朝と夜と、両方型になっちゃう。
そうすると、ずっと、疲れてます(笑)。
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重松 |
糸井さんやぼくが朝型をやっても、
やっぱり夜に仕事をやっちゃうから、
二四時間型になる(笑)。
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糸井 |
うん。
そうすると半端に効率の上がらない時間が
できちゃったりするんで、
仕事で生きていくんだったら、
そういう人は夜型のままにするべきですよね。
でも、ぼくは、
仕事と人生の両方のしあわせがほしいって、
痛切に願っているので……。
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重松 |
「昼間の二時か三時に昼寝する型」が、
いちばんいいかもしれない。
現役バリバリの勤務時間だから、
けっこう度胸が要るけど。
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糸井 |
それ、そうとう、理想に近いですね。
事務所が和室だらけだったときは、
それに近いこと、してたなぁ。
仮眠室だと、
ちょっとわざとらしくなりますもんね。
「仮眠ってからには、
そうとうな理由があるんだろうな?」
みたいな……。
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重松 |
(笑)
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(つづきます) |