FEATHERED SHIJU
HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
IS EAGER TO HELP!
START

フェザード・シジュはお役に立ちたい!

あつま町でハスカップを収穫するだジュ! の巻

ほぼ日の見習い乗組員、宇宙鳥のシジュちゃんは、
「なんかやることないかなぁ」と
ブラブラしてばかりの日々を送っていました。
そこで、みなさんのお役に立つことが
自分の新たな使命ととつぜん思いつき、
活動することにしたそうです。
最初に向かったのは北海道。
4週間しか収穫できない、めずらしいくだもの
「ハスカップ」の農園のお手伝いです。
銀の鳥はちゃんとお役に立てたのでしょうか。

第2回
わたしゃ、
あまいハスカップが食べたい。

みなさんこんにちは。
宇宙鳥のシジュだジュよ。

北海道あつま町のハスカップ農園で、
収穫のお手伝いをしています。

かなりはりきっています。

ハスカップの実は
人間の小指の先くらいの大きさ。
クルッとまわして摘んですぐさま
収穫カゴに入れるんだよ、と
ゆみこさんが教えてくれただジュ。

紫の実のハスカップ。
ゆみこさんに収穫の手順を教えてもらうシジュ。

「じゃ、いっしょに収穫していこうね。
シジュちゃん、摘んだ実を入れるカゴを
腰に巻いてくれるかな?」

カゴ?

「ほら、背後にある」

背後に青いカゴ。ああ、あれな。
収穫カゴを装着しました。
腰に巻くのではなくて羽根の上、
あやうくどじょうすくいの5円玉の位置ですね。

「果実に指紋がつかないように
まずは手袋をしましょ‥‥、あ、
シジュちゃんは指紋が」

ないから大丈夫だジュ。
よし。じゃあ、このままバケツに、
ハスカップを摘んで入れて、と。

ハスカップをひとつずつもいで、カゴに入れる。
やっぱり手が‥‥。

ゆみこさん。
こ‥‥コツは、あるだジュか。
ハスカップ収穫のコツは。

「さわるとすぐに落ちちゃうから、気をつけて、
やさしくクルッと回して収穫します。
収穫したらすぐにそのカゴに入れるのよ。
ハスカップが手の温度で
少しでもあたたまったら、つゆが出てしまうの」

すぐに、カゴにだジュな。

「上手な人はカゴの位置を上のほうにして、
すぐさま入れるのよ」

つまりは人の手がさわってる
時間を短くするんだジュな。

「そう、そう」

カゴをうえのほうにするとプロっぽいのか。
ちょこっとカゴを上のほうに調整してさらに、
どじょうすくいっぽくしてみよ。

その間じゃんじゃん採っている、ゆみこさん。
はー、ハスカップ収穫はたのしいな。
うふふ。
あははははは。

「シジュちゃん‥‥‥」

こうしてハスカップアイドルに
なりきっているうち、
理系なシジュは木によって
実が大きかったり小さかったりするのに
気づいたんだジュ。

ときどき小さい実の木があるんだジュよ。

ゆみこさんが教えてくれました。

「ちっちゃいハスカップは、
94歳のみちよおばあちゃんが植えた木だよ」

小さなハスカップは、昔ながらの木。
味はあまりあまくない。
だから生ではそれほど食べなくて、
お菓子やジャムに使ったりするそうです。
昔は塩漬けにして、
おにぎりにも入れてたんだって。
うわぁ、それっておいしそう。

「みちよおばあちゃんは昔っから厚真にいるけど
小さい頃はハスカップを食べてなかったんだって。
大人になってから、田植えが終わった忙しくない時期に、
勇払原野に群生している野生のハスカップを、
みんなで摘みにいってたみたい。
シジュちゃんは、山菜採りとか、したことある?
いまのハイキングみたいに、
みんなでレクリエーションで原野に出かけて、
ハスカップを摘んでたみたいだよ。
それを塩漬けにしたり、冬の保存食にしたり、
お菓子屋さんに売ってお小遣いにしたり
してたんだって」

へえぇー。
ハスカップはもともと野に生えてて、
保存食やお小遣い稼ぎのための、
たのしみだったんだジュな。

おばあちゃんは畑のそばに住んでる。シジュはごあいさつにいきました。
おばあちゃんは「まぁまぁようこそ」と、シジュにぜんぜんびっくりしなかったよ。
さすがは94年の経験値。

「でも、1970年代に、
港を整備することになり、
勇払原野も開拓されることになっちゃった。
つまり、ハスカップの木がなくなっちゃう」

たいへんだジュ。
おばあちゃんたちのレクが!

「だったら抜いて厚真に持ってこよう、
ということになって、
みんなで勇払原野に行って抜いて、
家に持ってかえってきたんです。
それが厚真町のハスカップ栽培のはじまりだったんだよ」

よかったー、みんなで抜くなんてワイルドだジュな、
ハスカップがぜんめつしないでほんとよかったー。
それでみんなで野生のハスカップを
原野からひきついで育てはじめたんだジュな?

「ところがね。ひとり、
すごいおばあちゃんがいたの」

誰だジュか。
みちよおばあちゃん?

「ううん。それはみちよおばあちゃんじゃなくて、
山口さんちのおばあちゃんよ」

山口さん。

「山口さんのおばあちゃんだけは、
ハスカップはすっぱくて渋くて苦手だ、
と言いはじめたの」

それがハスカップじゃんか。

「そうなんだけど、
とにかく山口さんのおばあちゃんは、
嫌だったのね。
そこで、子どもたちに命令をくだしたの」

どんな。

「苦い木に印をつけたら100円やるぞ」

そりゃやるわ。

「でしょ。そして子どもたちは
ゲームみたいにハスカップをもいで、
渋かったりすっぱかったら、印をつけた。
おばあちゃんの作戦はみごとだったの。
だって、子どもたちはまず、
お小遣いでやりがいを見つけるでしょう?
そして、舌が確か。
子どもは苦味を感じやすいからね。
ぜんぶの木に印をつけ終えたおばあちゃんは、
印のついた木を残らず引っこ抜いたの」

ひぃええええ。
容赦ない! 

「そうよ。おいしい木だけを残したの。
それがいまある選抜育種。
そのおかげで、おおきな実の
あまいハスカップが
厚真町に残ることになりました。
山口さんちにあった
1000本のハスカップのうち、
なんと20本だけが残ったそうです」

に‥‥2パー!

「そう。すごいでしょ」

つまりそれだけ、
わたしゃ、あまいハスカップだけが食べたい! 
という情熱があったということだジュな。
すごいな、すごいな! 

「厚真町の生ハスカップのいまがあるのは、
そして、全国で
厚真町のハスカップがおいしいと評判になったのは、
山口のおばあちゃんの情熱のおかげです。
そうやって生まれたのが
『あつまみらい』と『ゆうしげ』という品種」

それがこの、大きい、生で食べるハスカップ。
あつまみらいと、ゆうしげというのか。
しげさとさんにちょっと似てて親近感あるな。

「シジュちゃん、さっそく
ハスカップ、食べてみる?」

うん!

「その前に、ハスカップは
どれだけ収穫できたかな?」

シジュはどれだけ収穫できたか?
ほら、見て!

「けっこう採れたね」

でしょでしょ。
じゃあ、さっそく食べよう。

「シジュちゃん‥‥」

ドキッ。

うそです。
これはぜんぶ、プロなゆみこさんが採って、
シジュのカゴにごっそり入れてくれました。
シジュはひとつぶだって、収穫していません。
おしゃべりだけ、してました。

シジュがハスカップを摘むフリをしながら
ゆみこさんにいろんなことを訊くようすを
動画でおたのしみください。

明日はいよいよ、
ハスカップを食べてみますよ。
どんなお味なのでしょうか! 
つづきます。

そうそう。本日こそ、鳥仲間のお知らせがあります。

北海道のみなさん!
シジュちゃんの鳥友だちの
浅生鴨さんが、北海道でプチお店を開いています。

地球の友だちが数えるほどしかいないシジュちゃんの
大切な鳥仲間、作家の浅生鴨さんが
いま北海道にいて、
稚内の日本最北端の記念碑の前で著作本を販売しています。
ど平日ですが、行ける方、ぜひ行ってみてください。
もし行ったら「シジュちゃんの記事みて来ました」と
告げてください。行き帰り気をつけてね! 

2019年8月7日(水) 
午前10時~17時くらい
稚内 日本最北端記念碑の前で
浅生鴨さんが本を売っています。

くわしくは浅生鴨さんのTwitterを見てね。

2019-08-07-WED