みうら |
佐賀県ですか。
ええー、何年が経ちますでしょうか、
若者が「それってヤバイよね」と
言いはじめてから。 |
ほぼ日 |
「ヤバイ」が若者言葉として定着しだしたのは。 |
みうら |
だけど、ほんとうにヤバイことというのは、
きっと戦争のことじゃないですか。 |
ほぼ日 |
そうですね。 |
みうら |
なのに、ちょっとイケてる服などに対しても
若者は「ヤバイ」を多用します。
けれども、佐賀県ではそれを
「ガバイ」って言うんですよ。 |
ほぼ日 |
ふ‥‥。 |
みうら |
いまはまさに
「それってガバイよね」という
使い方をしていると思うんですけど。 |
ほぼ日 |
いや、ちょっと違うと思います。 |
みうら |
‥‥そうですよね。
『佐賀のがばいばあちゃん』のどこを読んでも
裏原宿のことすら出てこないんで、
ぼくもようやく違うことがわかりました。
でね、佐賀県には
佐世保バーガーがあるんです。 |
ほぼ日 |
それは長崎県じゃないでしょうか。
あの‥‥「がばいばあちゃん」については、
もう終わりですか。 |
みうら |
もう終わり、終わりです。
導入部でちょっと笑いを取ってみたんですが、
いまひとつだった感じなんで。 |
ほぼ日 |
いえいえ、いえいえ。 |
みうら |
まぁいいですよ。ところで
佐賀県といえば、とにかく焼物です。
伊万里焼もありますし、日本全国、
あんなに焼いてるところはありません。 |
ほぼ日 |
そうなんですか。 |
みうら |
もう、佐賀県は何でも焼きます。
呼子(よぶこ)という町では、
イカを焼いています。 |
ほぼ日 |
イカですか? |
みうら |
呼子のイカは、うまいんですよ。
イカの朝市もあります。
イカがどんどん焼かれている朝市の中で
なぜかおばさんの服屋さんが
やっているんですよ。 |
ほぼ日 |
イカを中心とした朝市に、服屋さんが。 |
みうら |
長期で旅をしていますと、着るものに
気を使っていられなくなってくることがあります。 |
ほぼ日 |
はいはい、わかります。 |
みうら |
短期の旅行でしたら、旅先で
気に入った服をちょっと着てみようかな、
なんてこともありますけど、
そんなパリコレみたいなことじゃないんです、
地方に行くということは。 |
ほぼ日 |
と、いいますと? |
みうら |
そこに適した服を
リーズナブルに、快適に着ていく。
それが、旅人の条件でもあるんです。
しかし、ぼくもまだ半端な歳なので、
「おい、ちょっと!!
駅前に、おしゃれな店とかないの?」
なんて言ったこともありました。
「そんな店はない」「ないです」
この言葉を何度か耳にしたとき、
ぼくは朝市に目をつけました。 |
ほぼ日 |
おばさんの服屋さんに(笑)。 |
みうら |
「おばさんの服の店のどこが
おばさんなんでしょう?」
ということを、突き詰めて
考えたことはありますか? |
ほぼ日 |
ありません。 |
みうら |
おばさんが着るから、おばさんの服なのか?
それは、おかしいでしょ?
「紳士が着るから、紳士服」という発想と
おなじなんです。
それは、不自由じゃないですか。
もっと自由でいいじゃないですか。
子どもが紳士服を
着たっていいわけですから。
そういう自由さが必要だとぼくは思います。
おばさんの服は、確かに、安いんですよ。 |
ほぼ日 |
安いです、安いです(笑)。 |
みうら |
ビームスの3分の1です。 |
ほぼ日 |
はははは。 |
みうら |
巷では「やっぱりユニクロが」とか言いますけど、
ユニクロよりも安いです。
特に、店頭の一番前に並んでるやつは、
300円の段階からありますから、
飛びつかない手はないわけですよ。 |
ほぼ日 |
ないですね。 |
みうら |
しかも、柄がとてもサイケです。
プリントってワンポイントでも高いのに、
おばさんは全面プリントなんですよ。
そのうえ、バックプリントもついてます。
それで300円とはこれいかに、と
思ったわけですよ。 |
ほぼ日 |
ふはははは。 |
みうら |
「おばさんじゃなくたっていいじゃないか」
と、呼子のおばさんの店に飛び込みました。
案の定、そこのお店の人からは
「大丈夫じゃないのー」って
愉快な声が聞こえてきましたよ。
人というのは、歳を重ねるごとに、
性別をなくす生きものなんです。
ぼくはもう、おばさんになってきているんです。
後ろ姿とか、完全におばさんでしょ? |
ほぼ日 |
うはははは。 |
みうら |
昔は「ロックだね」とか、
「エェーッ、女みたい」とか、
言われていたものです。
でもいまは、限定で、おばさん。
そういうことで、いいんです。
もう性別もなくなって
自由になってきたわけですから。
なのに、服に対してだけは
まだ躊躇があるなんてダメだ、
そう思って、2枚買いました。
ものすごいペイズリーがいっぱい入っている
ピンク色のシャツでした。 |
ほぼ日 |
それはまた、思い切りましたね。 |
みうら |
はじめは、ステッチの具合や
衿がちょっぴり開いているのが気になるでしょう。
でも「気にしない!」と思うことにして
そのまま2、3時間着てみてくださいよ。
誰も気にしません。自分すら気になりません。
300円で、ポーンと楽になれる、
そんな旅人でいきましょうよ。
でもね、そのシャツは
あまり汗を吸いませんでした。 |
ほぼ日 |
ああ、生地がちょっと。 |
みうら |
そこで、タグを見てみたら
「MADE IN INDIA」でした。
ぼくたちがあんなに憧れた、インドです。
ああ、これでいいんだ、
おばさんが、いま、インドブームだったら。 |
ほぼ日 |
ということは、
真のヒッピー精神を受け継ぐのは‥‥ |
みうら |
真のヒッピーは、おばさんです。
それがわかる旅でもありました。 |
ほぼ日 |
おばさん用の服でも
みうらさんのサイズには合ったんですか。 |
みうら |
ぜんぜん合います。
おばさんって、フリーサイズなんですよ。
フリー、つまり、自由なんです。
ズボンも買いましたが、
もちろんウエスト部分はゴムです。
誰でも入ります、フリーですから。 |
ほぼ日 |
なるほど。 |
みうら |
話をイカに戻しますけどね、
呼子にはイカの「いけす」がある店も
たくさんあります。
そこでは、イカがぶんぶん
流しそうめんみたいに泳いでますよ。
水槽をじっと見ていると、
イカが怒ることがわかります。
イカ同士の体がぶつかったりすると
「ぷーん!」って色を変えるんです。
イカクする、ってやつです。 |
ほぼ日 |
‥‥‥‥。 |
みうら |
「がばい」につづいて、
また言ってしまいました。 |
ほぼ日 |
ええっと、佐賀県といえば、
吉野ヶ里遺跡があります。
ここは、縄文ローラーについても、
お話をうかがっておきたいのですが。 |
みうら |
ああ、佐賀県は縄文でしたね。
吉野ヶ里遺跡には
縄文人の方がうろうろされてるんですよ。 |
ほぼ日 |
え? |
みうら |
「すいません、縄文の●×△はどこですか」
と訊くと、縄文の方が教えてくれます。 |
ほぼ日 |
そういう施設で、そういう係員さんなんですか。 |
みうら |
そうですそうです。
いまは遺跡の一部を掘ってるみたいで
ぼくが行ったときは工事中だったんですよ。
それは、かなり不思議な光景なんです。 |
ほぼ日 |
というと? |
みうら |
ブルドーザーが入ってる遺跡って、
あんまり見たことないですし。 |
ほぼ日 |
まぁ、そうですね。 |
みうら |
ISEKIってあるでしょ、
ブルドーザーの会社に。
つまり、ISEKI農機の名前のルーツは、 |
ほぼ日 |
‥‥はは。 |
みうら |
あ、またウケなかった。 |
ほぼ日 |
がばいとヤバイ、イカの威嚇、
遺跡とISEKIで、 |
みうら |
3つそろいましたね。
ええっと、佐賀県でもうひとつ
ぜひお話しておきたいのが論語カルタのことです。
これ、すごいですよ。
|
ほぼ日 |
論語って、中国のですか?
孔子ですよね。 |
みうら |
孔子の教えが
カルタになってるんですよ。 |
ほぼ日 |
江戸時代は佐賀県の多久市に
学舎があったようですね。
学問の象徴として孔子が祀られ、
そこが公開されている、と。
おみやげとして売られているんですね。 |
みうら |
このカルタで、いちど遊んでみました。
「すなわちをーまなぶー」
「すぎたるはぁ」
「しんーぎ、いにーのるー?」
まず読み札が難しすぎてなかなか読めないので
取るほうがあたふたするんですよ。
「おい、ちゃんと読めよ」
「取りにくいじゃねえか」ということになり、
札を取ったとしても
合っているのかわかんないような、
カルタ大会になってしまいました。 |
ほぼ日 |
こりゃ難しい。 |
みうら |
しかも、札を読まれたときに
ちょっぴり叱られているような気になる
内容ですね。
まあ、論語は昔々の話ですけどね。 |
ほぼ日 |
だいぶ昔ですよね。紀元前ですね。 |
みうら |
論語・ロング・アゴー、
ということを、
締めとして言わせていただこうと思います。 |
ほぼ日 |
‥‥‥‥。 |
みうら |
思います。 |
ほぼ日 |
ありがとうございます。 |
みうら |
ありがとうございます。 |
|
今回のお話をノーカットでごらんになりたい方は
下の動画でおたのしみください。 |