語り旅で富士山を
めぐったあと、
あと5県しかない
寂しい「県くじ」を引くみうらさんです。
くじを引きながら、
そういえば東京都、大阪府といった
大きな都市が残っていますね、と
話していたら
さっそくこの県が出てまいりました。
大阪府 陰陽の連動がわかる街。
みうら (くじを引きながら)
これは、小さい県だなぁ。
‥‥あ、きっと大阪だ!
ほぼ日

はい、そのとおり、大阪です!

みうら ええっと、そうですね、
みなさんが大阪に行かれたときは、
きっとたこ焼きを食べようと思われるでしょう。
大阪では、たこ焼き屋さんのお店が
2軒並んでるところがあるんです。
ほぼ日 そうなんですか。
みうら

それも、軒を並べていまして、
ひとつは「本舗」
そしてもうひとつは「元祖」
書いておられたと思います。
軒をつらねたたこ焼き屋さんのうち、
1店舗はものすごく人が行列してるのに、
1店舗はガラガラなんです。

ほぼ日 えええ?
みうら

やっぱり観光客としては、
並んでるほうがうまいだろう、と考えて
列に入るのですけども、
わたしは大阪のほうで、
長いことテレビ番組をやっていて、
毎週大阪に行って、
毎週たこやきを食べていました。
そのため、心の余裕ができて、
「隣も入ってやろうかな」と思いました。

ほぼ日 はい、はい。
みうら そうしたところ、
まったく味が同じだったんです。
ほぼ日 ふははははは。
みうら どこも違わないんです。
「おやっ?」と思ったんですけども、
それは、このシリーズのどこか
すでに話したような気がしますが、
同じものを扱うみやげ物屋さんが、
並んで存在するという、あの現象と同じです。
軒を並べて、ほとんど同じものを
売ってらっしゃるにもかかわらず、
売れてる店と売れてない店が発生する、
あの現象です。
ほぼ日 はい、憶えています。
みうら

長いことビジターをやってますと、
「それは同じ経営者なんじゃないか」
という疑いは、当然持つわけで、
それが、健全な考え方だとぼくも思います。
並んでるたこ焼き屋にいると、
並んでないたこ焼き屋さんが
かわいそうに見えますけども、
同じ経営者である場合、
かわいそうも何もないんだよ、
ということなんですよね。

ほぼ日 はあ。
みうら

ですから、軒を並べた店のうちの一方が
行列を作っている場合には、
隣は同じ経営者の場合がある、
ということをふまえて、
並んでないほうに行けば、
スムーズに買えて
同じたこ焼きを食うことができる、
と、ぼくの言いたいことはそういうことです。

ほぼ日 勉強になります。
みうら

九州の福岡、
長浜のラーメン屋さん街なんかでも、
そうでしょう。
ずらっと屋台が並んでますけども、
どこがおいしいんだろう、なんて、
とかく初級者は思います。
けれども、
人の腹にはそんなにラーメンが入らない、
人の腹にはたこ焼き何個分しか容量がない、
ということを考えていただきたいと思います。
そう考えれば、
どこでも同じだ、
という考えも出ます。

ほぼ日 容量が‥‥。
みうら

食べ歩きも、行って2軒です。
しかも、2軒目はかなりきつい。
しょっぱなにものすごく
お腹を空かしていけば
どんなものでもおいしく食せるという、
これは教訓です。
ですから、空いてるところに行くということは、
無駄をなくし、時間を有効利用できる
ということです。

ほぼ日

‥‥‥‥。

みうら みんなは人が並んでいるからおいしいと
勘違いしていますけども、違います。
並びたい人が並んでいるわけで、
それは、おいしいことと
イコールにはならないのです。
たこ焼き屋で、それが確実にわかりました。
まったく同じ味でしたよ。
ほぼ日 だんだんそういう気持ちに
なってきました‥‥。
みうら そうそう、大阪といえば、
岩が自然に落ちたような風情の神社があります。
川のところにダンダンダンと
大きい岩が落ちてるんですけれども。
ほぼ日 もしかしたら、
交野市の磐船神社でしょうか。
岩窟拝観というのがありますね。
白衣とわらぞうりを社務所で貸し出し‥‥?
みうら

それは、落ちた岩の間の
ちょっとした隙間をぬって
人が入っていくという儀式のことだと思います。
その神社に到着してブラブラしてると、
その岩くぐりから出てきた人を
見ることになるんですが、みなさん、
ぼろぼろになって
出てきます。

岩くぐり用に貸し出される
白装束とわらじが、
ぼろぼろになっているんです。
先ほどは、あんなに陽気に
真っ白で巡礼に出かけたみなさんが、
数分後、どろどろになって
現れる姿を間近に見ることができます。
ああ自分も、こうなるんだと、
覚悟しなければなりません。

ほぼ日 ハードなお参りなんですね。
みうら 大阪にそのようなところがある、
それは、意外な発見でした。
そして、どういったらいいでしょうか、
この世の中のシステムとして、
陰と陽があるのは、みなさんもご存じでしょう。
片方が黒く、片方が白い
太陽があたるところと、
あたらないところがある、
うれしいときもあれば、悲しいときもある、
このように、すべてのことは、
対になっているのです。
大阪で、そのことがはっきりわかる場所は
大阪万博の跡地です。
万博跡地に行くと、岡本太郎作の
「太陽の塔」が立っています。
みなさんは「太陽の塔」の前の顔しか
ご存知ないと思いますが、
裏に回ってみると、黒い顔があるんです。
それによって
人間は表裏一体であるということを
岡本さんはきっと、おっしゃったんでしょう。
ほぼ日 なるほど。
みうら だから、もしも
「自分、悩んでるな」
などと思うときには、
「太陽の塔」に裏と表があるように
自分にも裏と表があり、
待っていればまた
新しい風景が出てくるということを
思い出すようにするとよいでしょう。
人生というものは
裏と表が連動して
成り立っているんだということが、
「太陽の塔」でわかると思います。
ほぼ日 裏と表が、連動‥‥してるんですか。
みうら そうです、連なっているわけですから。
暗い、明るい、暗い、明るい、
うれしくない、うれしい、
うれしくない、うれしい、ね?
その連なりが、人生というものなんです。
「太陽の塔」は、それを教えてくれる
シンボルでしょう。
ほぼ日 暗い日があったら、次は明るいぞ、
ということですね。
みうら そうです。
暗い日のあとには、明るい日が来るに
決まってるわけです。
暗い日の次に、また暗い日が来るとしたら、
それは「もっと暗い日」が
来ているだけのことです。
しかし、暗いほうも、行きつくと、
出すカードがなくなってきます。
そんなにずっと続いたら、
「暗い」も弱ってくるんですよ。
ほぼ日 はぁ。「暗い」も、弱るんですね。
それは「気の持ちよう」というのと、
また別の話ですね。
みうら 「カードの持ちよう」ですよね?
ほぼ日 ‥‥ははははは。
みうら 相手のカードが
何枚残っているかということを
探るということが肝心です。
要は、自分じゃない。相手です。
ほぼ日 ええっと、その場合、
相手は誰でしょうか。
みうら 「暗い」という相手です。
ほぼ日 ‥‥ははははは。
みうら 「暗い」という奴と、
「明るい」という奴がいる、
それだけのことです。
ポーカーのときも、
相手が何のカードを持ってるか、
予想するじゃないですか。
そういうことを考えていかれたほうが
いいんじゃないでしょうか。
前に「暗い」に会ったとき、
あいつは4枚出したけど、
今回はもう持ってないんじゃないか、とか
たいがいはわかりますもん。
相手が「もう、ない、まいった」
というところですからね。
そうしたら、
途端に次の日、ピーカンですよ。
こころの中は、ピーカンです。
今回のお話をノーカットでごらんになりたい方は
下の動画でおたのしみください。

みうらさんは、その神社の
ぼろぼろになる岩くぐりを
経験されたそうです。
白装束を借りずに私服で入ってしまったため、
ものすごく狭い、湿った岩をくぐり、
案の定、どろどろになったそうです。
その後、泥のついた衣服のまま
心斎橋まで行くことになり、
大変な目に遭ったのだそうです。
「白い、汚れる、白い、汚れる」
それも連動のひとつだと、
みうらさんはおっしゃいます。
来週も、連動しつつ、
日曜日にお会いいたしましょう。

2008-07-13-SUN
みうらじゅんさん&安斎肇さんが
結成した「勝手に観光協会」作の
すばらしい大阪府ご当地ソング
「大阪ベンチャーズ」を
どうぞお聞きください。