糸井重里が知りたいことシリーズvol.1歩く 糸井重里が知りたいことシリーズvol.1歩く
些細な悩みから哲学的な話まで‥‥
学びたいこと、知りたいことは、
おとなになってもつきることはありません。
むしろ、歳を重ねることで、
興味が広がっていくようにも思います。
そこで新しい座談会のシリーズを
はじめることにしました。
糸井重里が「知りたいこと」をテーマに選び、
その専門家の方と一緒に学んでほしい方をおよびして
学びを深めていきます。
テーマから、自由に話は広がっていくでしょう。
第一回のテーマは「歩く」です。
歩くことは運動の基本、
健康にも大きく関わってきます。
東京大学で老いについて研究している飯島勝矢先生と、
犬のお散歩やロケで日々歩くカンニング竹山さん、
おふたりとじっくりお話しました。



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第2回 歩くってなんだろう?
写真
竹山
ときどき「運動ってなんだろうな?」と
思うことがあるんです。
僕よりすこし上の世代の方々って、
トライアスロンをやっている方が多いんですね。
ご自分の体調管理をしっかりしていそうなタイプの、
社長さんとかお偉いさんとか。



でも、変な話、
トライアスロンってけっこう過酷だからか、
急に心臓を壊して亡くなってしまう人が
僕の身のまわりで続いたんです。
運動は健康にいいと思っていたのに
逆効果なこともあるのかなと、
それから思うようになって。
糸井
勝手なイメージですけど、
身体を大きく変化させてしまうほど運動することは
過剰ゆえに、何かが壊れてしまうのかもしれないですね。
飯島
身体を酷使することは仕事にしても
スポーツにしても、ダメージは大きいですよね。
どんなことも、
やっぱり適度に、ほどほどに。
竹山
ほどほどに。
糸井
でも、職業病のような方もいますよね。
たとえば漫画家さんで
座り仕事が続いて背中が曲がってしまったり、
野球選手でひじを壊したりする人は多い。
プロだからしょうがないんですかね。
飯島
参考になりそうな研究として、
1964年の東京オリンピックに出場した選手の
現在の身体の状態を、同世代の一般人と比べた
研究結果が発表されたんです。
当時20代だった選手も、現在は70代。



どうなっているかというと、
関節障害や損傷など、
一般人よりもいっぱい身体の故障で
悩んでいる人が多かったんですね。
引退後に、スポーツを継続して続けていない方が
多いのも一因ではあると思いますが、
一時的な筋肉量は蓄積されない、ということです。
写真
竹山
なるほど。
糸井
「歩く」という行為は
ほどほどなイメージがありますよね。
運動としてはどうなんでしょうか?
飯島
僕個人の研究に基づく見解としては、
歩かないよりは歩いた方が当然いいと思います。
しかも1000歩くらいすこし歩くよりは、
しっかりと5000歩~1万歩くらい歩いた方がいいです。



ただ、一般的に「身体にいい運動=歩くこと」
という先入観がありますよね。
だから、いっぱい歩いた方がいいとみんな思っています。
竹山
思ってます、思ってます。
飯島
ですが、歩くという運動の動作自体、
有酸素運動なので身体にはいいけれど、
全身が鍛えられるわけではないんですね。
鍛えられているのは、
主に「ふくらはぎ」でしょうかね。
竹山
えーーっ!
写真
糸井
あらら。
飯島
歩く運動は、ふくらはぎにはとってもいいです。
でもみなさん、歩くことで
足腰全体が鍛えられていると勘違いしている人が
多いのではないかと思います。
竹山
そうだと思っていました。
糸井
僕もですよ。
でも、ふくらはぎだけなんだ。
写真
飯島
歩くというのは水平動作なので、
鍛えられるのは主にふくらはぎなんです。
太ももを鍛えるためには水平運動ではなくて、
上下運動をしないといけないんです。
手軽な運動はスクワット、
あとは階段の上り下りや山登りなんかもいいですね。
竹山
歩くことは運動の基本、
全身鍛えられる魔法の運動だと
勘違いしていました。
糸井
あの、裏切るような発言をするんですが、
僕はスクワット派です。
スクワットは欠かさない。
竹山
ええっ。糸井さん、
スクワットしてるんですか(笑)。
糸井
歩くことも意識しているけれど、
太ももの筋肉を鍛えることが大事だと
誰かから聞いたんです。
それから毎日スクワットをするようになったら、
調子がいい気がするんですよね。
飯島
ただ、上下運動さえできていればOKではなくて、
運動というのは総合的なもので、
もちろん水平運動も大切です。
水平運動と上下運動、
すなわち筋トレ的なものも、
すべてコンビネーションなので上手に組み合わせて、
バランスよく運動をしてくださいね。
写真
糸井
竹山さんは習慣的にやっている運動はありますか?
竹山
いや、やってないですね。
今はロケだったり犬の散歩だったり、
生活の中で満たそうとしています。
運動不足を感じたら
「ちょっと散歩行ってくるか」みたいな。
糸井
僕は一時、それがぷっつり止まっちゃったんですよ。
理由はブイヨンがいなくなったから。
犬との散歩って、おしゃべりしながら歩くような
たのしさがあるんですよね。
だけど、そのたのしさがなくなると、
どんなに「運動は身体にいいです」と言われても
しなくなりますね。
定期的なたのしさを持っていることは、
身体にとっても大事なことなのかもしれない。
写真
飯島
そうですね。
誰かとのつながりがあることはたのしさを生みますから。
だから、竹山さんのロケや犬の散歩は
いい運動だと思いますよ。
糸井
もしかしたら竹山さんが、
いちばん健康的な生活をしているかもしれないですね。
街歩き番組やロケで、
いろんな人に出会って、話して、
おいしいものを食べて呑んで、
トータルでいいじゃないですか。
仕事が増えると、どんどん健康になっちゃう(笑)。
竹山
そうですかねえ(笑)。
たしかに、ある時から、
プライベートでも変装せずに
街中を歩くようにしはじめたんですね。
そうしたらコソコソ歩いていたときよりも、
なんとなく調子がいいんです。
声をかけられても「どうも、どうも」って、
普通に歩いている方が精神的にも楽で。
だから身体の調子がいいのかも。
飯島
心の問題は身体に影響しますからね。
糸井
僕も鶴瓶師匠がされているNHKの『家族に乾杯』の
出演依頼は断らないようにしているんです。
なぜかというと、歳を重ねると
だんだんと人に会うのが億劫になるから。
それを無理にでもできる場所が、
あの番組なんですよね。
はじめての人と会っておしゃべりすることは
えらく大変なんだけど、あれができることが
自分にとって大事だと思うので、
「行くぞ!」と気合いを入れて行くんです。
竹山
普段しないですもんね、
知らない人とおしゃべりなんて。
糸井
ええ(笑)。
そう思うと、外回りの営業マンなんかは、
ものすごく健康的ということですか?
飯島
そこは、もしかしたら、
営業成績やノルマという大きなストレスとの戦いが
並行してありますから、
別問題かもしれませんね。
竹山
心の問題か。
飯島
健康にいいことをしよう、なんて
医者に言われなくても人間の常識ですよね。
でも「健康のために明日からがんばろう!」という
気持ちだけでは、なかなか続かない。
そんな時は家族を守ろうとか仕事のための体力だとか、
心持ちが別のところにあって、
その延長で運動ができると続きやすいですよね。
写真
(つづきます。)
2018-10-10-WED