前回、タワーが上にいくにしたがって
三角形から円形に変化していくことを
お話しましたが、
この△から○へという平面の変化は、
外観の表情の変化となって現れています。
そこでは、「そり」と「むくり」と呼ばれる曲線が
繊細な構成美を生み出します。
平面形は、
足元の三角形から徐々に円形になり、
地上300m付近で
完全な円へと変わっていきますが、
それを横から見ると、
三角形の頂点から伸びるラインは
それぞれが地表から地上300mに向かって
凹状のゆるやかな円弧を描いています。
これが「そり」です。
一方、三角形の三つの辺の
まんなかあたりから伸びるラインは
それぞれが凸状のゆるい円弧を描いています。
これが「むくり」です。
一見、単純に見えますが、
実は極めて複雑な曲面になっているんですね。
ここでいう「そり」とは
線または面が凹に湾曲していることで、
「てり」ともいいます。
「むくり」とは
線または面が上方に凸に湾曲していることの意味です。
いずれも日本の伝統的なデザインモティーフで
寺社建築や茶室、日本刀などに現れています。
そして、立ち姿において
2種類の曲線(曲面)があるために、
東京スカイツリーを見る方向によっては、
両側が「そり」に見えたり、
右側が「そり」左側が「むくり」に見えたり、
その逆に見えたりと、
そのシルエットが変わって見えるのです。
スカイツリーの姿が見る方向によって変わることは、
設計のときから考えていたことのひとつでした。
というのは、
完成後にはとても多くのひとが
毎日目にすることにもなるものですから、
単調で退屈な印象となってしまわないように、
634mの高さの中に形態的な変化をもたせ
景観としても変化をもたせ
威圧感なく心地よい佇まいにしたいと考えていたのです。
最後に小ネタをひとつ。
このようにタワーの鉄骨部分は
ごくごく緩い曲線になっているのですが、
それを円になぞると
その半径はいちばん大きいところで6km。
これだと、中心点が皇居に位置する、巨大な円の
ごく一部がスカイツリーなっているということなんです! |