── |
須賀さんのお仕事は、制作進行ということですが
具体的にはどのようなことを
されているのでしょうか。 |
須賀 |
まず、『読売新聞』主催ということで、
今回の展覧会を主催している会社の人間として
現場にはいるわけですが、
実作業としては、広報ですとか事務作業、
いわゆる裏方のお仕事ですね。 |
高橋 |
須賀さんにはいちばんつらい部分を
担っていただいたんですよ。 |
須賀 |
いやいや、そんな(笑)。
|
── |
つらいお仕事。
たとえば、どのような‥‥。 |
須賀 |
いや、まああの、作品の収集実務ですとか、
契約書を交わしたり、
作品の情報について事実関係を確認したり。
走り回る毎日でした。 |
── |
ドイツとのやりとりも。 |
須賀 |
はい。英語で大丈夫でしたので。 |
── |
約130点を集めるとなると、
やはりたいへんでしたか。 |
須賀 |
そうですね。
紆余曲折というか、
どたばたもありまして。 |
── |
どたばた、というと? |
須賀 |
あの、高橋さんもおっしゃってましたが、
ゾーヴァさんの絵は、変化してますでしょ。 |
── |
はい、上塗りをするので。 |
須賀 |
「卵問題」ですとか。 |
── |
「卵問題」(笑)。
『ちいさなちいさな王様』ですね。
『ちいさなちいさな王様』より
© Michael Sowa
|
須賀 |
よくよく見たら、
「あれっ? 卵がないぞ」って(笑)。 |
── |
(笑) |
須賀 |
気づいたからよかったんですが、
図録やチラシとかグッズ関係にも、
「卵あり」の絵が使われていたので。 |
── |
あ、それはたいへん。 |
須賀 |
修正修正、差し替え差し替えで。
|
── |
卵1個で大騒ぎですね。 |
須賀 |
そういうのは他にもありまして、
たとえばこの『ケーラーの豚とアヒル』。
|
Kohlers Schwein mit Ente
ケーラーの豚とアヒル
© Michael Sowa
|
── |
豚がジャンプしてますね。 |
須賀 |
これとは別の絵で
『ケーラーの豚』というのがあるんです。
前回の展覧会で展示されたのですが、
それがこの絵とほんとにそっくりで。
てっきり今回もそれがくると思ってたんです。
でも、よくよく見たら、
なんですか左の方にアヒルがいる。
前回の『ケーラーの豚』には、いなかった。
確認しましたら、別の絵だったんです。
|
── |
危なかったですねー。
チラシやポスターで
メインに使われている絵ですよね? |
須賀 |
はい。それをまちがえたら、
たいへんなことでした。
さいわい早い段階で気づいたので
よかったんですが‥‥。
ええと、こちら、こちらは土壇場で。 |
Geburtstag-Pinguine
ペンギンバースデー
© Michael Sowa
|
── |
ペンギン。かわいいですね。 |
須賀 |
これが最後のどんでんがえしでした。 |
── |
どんでんがえし。 |
須賀 |
バースデーカードの絵ですが、
これにメッセージの文字が
「英語版」のものがあって、
その英語版をチラシに印刷していたんです。 |
── |
展覧会に来るのは「ドイツ語版」なのに。 |
須賀 |
そう、ドイツ語のほうなのに。
あわてて印刷会社に電話して‥‥。 |
── |
‥‥お疲れさまでした。 |
須賀 |
あとは‥‥ |
── |
まだあるんですね(笑)。 |
須賀 |
この並木道の絵にも混乱しました。 |
Schone Allee im Osten von Berlin mit Frau
ベルリン東部の並木道
© Michael Sowa
|
須賀 |
もともとよく知られている
2作品の並木道の絵があったんです。
その2点を並べて展示したい
ということになりまして
ドイツの方にリクエストしましたら、
来ることになったのが、これと(上の画像)
それからこの絵の2枚になったんです。 |
Schone Allee im Norden von Berlin
ベルリン北部の並木道
© Michael Sowa
|
── |
リクエストしたのとは違ったんですね。 |
須賀 |
そうですね、
モモンガらしきものが飛んでいるのは、
ぼくらも知らない新バージョンで、
日本側が混乱してしまって。 |
── |
これも、上塗りでしょうか? |
須賀 |
だと思うのですが、謎が多くて‥‥。
この新たなバージョンが、
前の作品に上塗りされたものなのか、
はたまた第三の作品なのかは
今のところわからないのです。 |
── |
たいへんだったのでしょうが、
うかがっていてすごくおもしろいです(笑)。 |
須賀 |
あとはこういうパターンも。 |
Die Frau in der Schiffahrt
航海中の女たち
© Michael Sowa
|
── |
これも上塗り? |
須賀 |
いや、上塗りだと思い込んでいたら、
新たに描かれた別の絵だったんです。 |
── |
ああ、そういうパターンも。 |
須賀 |
あと、こちらも混乱しました。 |
── |
まだある(笑)。 |
Uberfahrt
渡航
© Michael Sowa
|
須賀 |
最初の頃、ドイツから送られてきた一覧表には、
これが「サーファー・シープ」
という名前でリストアップされていたのです。 |
── |
シープ。
「ひつじ」ということですね。 |
須賀 |
はい。
ところがこのちいさく描かれた動物。
どうみても、豚なんです。 |
── |
あー、ほんとだ、豚です(笑)。 |
須賀 |
はい(笑)。 |
── |
もう、まちがい探しですね、これは。
いやはや、お疲れさまでした。 |
須賀 |
でも終わってみれば、
とても楽しかったなと思っています。 |
高橋 |
須賀さん、
まだ終わってないですよ(笑)。
|
須賀 |
そうでした(笑)。
まだ、開催前ですからね。
(お話は4月上旬にうかがいました) |
高橋 |
届いていない絵が、まだ1枚ありますし。 |
── |
あ、そうなんですか。 |
須賀 |
そうそう、そうなんです。
開催の直前に、ゾーヴァさんが
ご自分で持ってくる1枚があるんです。 |
── |
ご自分で? なんでまた‥‥。 |
須賀 |
ぎりぎりまで、上塗りをしたいそうで(笑)。 |
── |
すごい(笑)。 |
須賀 |
ぶじ届くようにと、それが心配で‥‥。
ぜったいに欠かせない1枚なので。
こちらなんですが。 |
Plakat "lieber lesen!" 30 Jahre Kunstmann Verlag
クンストマン社30周年記念のポスター“読書のほうがまし!”
© Michael Sowa
|
── |
ポスターの原画ですね。 |
須賀 |
じつは今回の展覧会の「あいさつ文」に、
ゾーヴァさんが、
「この展覧会には、ある間違いがあります。
それを探してみてくださいね」
というようなことを書かれているんですね。 |
── |
またそんな、ちゃめっけのあることを(笑)。 |
須賀 |
で、言ってしまいますが、
その答えは、ゾーヴァさんが自分で持ってくる
まさしく「その絵の中」にあるんです。 |
── |
うわあ、それは欠かせません! |
須賀 |
はい。
まあ、そういう心配もありますが、
きっと大丈夫だと思いますので(笑)、
このゴールデンウィーク、
ぜひ多くの方にゾーヴァさんの原画を
観に来ていただきたいと思っています。 |
高橋 |
ほんとに貴重な機会ですので。
|
高橋さん、須賀さん、
現場のお話を、ありがとうございました。
ちなみに先日、須賀さんからこんなメールが。
「ぜったいに欠かせない1枚は
ぶじゾーヴァさんと一緒に来日しました!」
どんなふうに「上塗り」されているのか、
観てみたいですよねー。 さて次回は、展覧会の会場だけで販売される
「図録」を編集された方のお話をうかがいます。 |
(つづきます) |