── |
ぼくたち、今までに2度、
ロケットの打ち上げを見ているんです。
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星出 |
すばらしい。
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── |
種子島で見た
日本の国産大型ロケット「H-2B」と、
仏領ギアナで見た
アリアンスペース社の「アリアン5」と。 |
2011年1月、種子島から発射されたH-2Bロケット。写真提供:JAXA |
2011年5月、仏領ギアナから発射されたアリアン5。 |
星出 |
ええ、ええ。
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── |
でも、
それらいわゆる「ロケット型のロケット」と
ぜんぜん違うものとして
135回目の飛行を最後に退役した
「スペースシャトル」があると思うんです。
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星出 |
そうですね。
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── |
カタチもまったく異なりますし‥‥。
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星出 |
はい。
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── |
詳しくは知りませんけど
あれだけカタチが違うんですから、
なんというか、その‥‥「思想」みたいなものも
違うんだろうなと想像したり。
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星出 |
ええ、違いますね。
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── |
なので、そのスペースシャトルについて
実際お乗りになった星出さんに
ぜひともお話をおうかがいしたいな、と。
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星出 |
わかりました。
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── |
何より圧倒的に「かっこいい」と思うんです、
スペースシャトルって。
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星出 |
ええ、かっこいいです(笑)。
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── |
では、そのあたりから、お願いします。
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星出 |
そうですね‥‥。
私が初めてスペースシャトルに関わったのは
中学生のときでした。
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── |
え! 中学生で!?
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星出 |
いやいや、文化祭で
友だちとスペースシャトルの模型をつくって
展示したってだけなんですけど(笑)。
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── |
ああ、びっくりしました(笑)。
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星出 |
簡単なプラモデルをつくったんですが、
そのときからすでに
「他のロケットとはまったく違う魅力」を
感じていました。
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── |
それは、具体的には‥‥?
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星出 |
まず、飛行機みたいに翼がついている。
そして、滑空して地球に帰還してくる。
さらに、
一度きりじゃなく何度も宇宙へ飛んでいける。
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── |
打ち上げのときに「垂直に立ってる」姿も
「いっちょう宇宙へ飛んでくぜ!」
みたいな感じで、かっこいいんですよねぇ‥‥。
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アトランティス号の発射。写真提供:JAXA/NASA/Bill Ingalls |
星出 |
それから20年くらい経って
宇宙飛行士として接してみますとね。
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── |
はい。
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星出 |
われわれが「システム」として学んだときに
感じたのは、その「複雑さ」です。
なにしろ30年も前の機体ですから
インターフェイスには
昔ながらの武骨な部分が残っていて、
スイッチも多い。
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── |
へぇー‥‥。
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星出 |
コクピットのディスプレイを変更したりとか
少しずつ
アップグレードはしていましたが、
基本の部分は
30年前と変わらないつくりのまま。
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── |
じゃあ、こういったら何なんですけど、
そういう乗り物が
何度も、宇宙へ飛んで行ってたんですね‥‥。
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星出 |
スペースシャトルというのは、
「宇宙空間での活動」
については
基本的に「すべてできる」機体なんです。
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── |
ええ。
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星出 |
人間も上げられるし、荷物も上げられる。
ロボットアームもついてますし、
船外活動もできるし、実験もできます。
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── |
あれ一台で。
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星出 |
そう、あれ一台で(笑)。
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── |
オールマイティな宇宙機、なんですね。
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ISSから撮影されたエンデバー号。写真提供:JAXA/NASA |
星出 |
そうそう、はじめて肉眼で見た打ち上げも
スペースシャトルだったんです。
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── |
あ、そうなんですか!
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星出 |
そのとき、シャトルに乗っていたのが
若田(光一)飛行士。
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── |
じゃあ‥‥1996年ですか?
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星出 |
ええ、若田さん最初のミッションでした。
当時、私は、彼のサポートということで
打ち上げまでの1年間、
ずーっと、いっしょについていたんです。
なので、スペースシャトルで
彼が宇宙へ飛んで行くのを見てたんです。
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── |
‥‥どうでしたか?
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星出 |
もう、興奮の絶頂というか‥‥
「うお〜! うお〜! うおおお〜!」と、
叫んでたら、見えなくなりました。
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── |
つまり、言葉にならなかったと(笑)。
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星出 |
ロケットの打ち上げというのは
「見ているよりも
乗っているほうがラクだなぁ‥‥」と
今は思います。
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── |
おお、乗った人しか言えない意見!
じゃあ、お聞きしますが
「スペースシャトルの乗り心地」って
どんな感じなんででしょうか?
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星出 |
いいですよ。
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── |
おお! 「いい」ですか!
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星出 |
私が次のミッションで乗る
ソユーズは
ちっちゃなカプセル型の3人乗りですけど、
シャトルは7人乗りで
機内も飛行機のようにゆったりしてました。
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── |
へぇー‥‥。
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ISSから撮影されたディスカバリー号。写真提供:JAXA/NASA |
星出 |
宇宙から帰ってきて
滑走路に着陸したときも、飛行機の着陸みたいな
衝撃だったのを覚えています。
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── |
はー、そうなんですか。
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星出 |
操縦していたのが
NASAに所属する米海軍のパイロットだったから
着陸が荒かった、
なんて冗談を言ってましたが(笑)。
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── |
え、操縦してるのって、そういう人なんですか?
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星出 |
私のときは、米海軍でしたけど、
空軍の場合もあります。
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── |
米軍のパイロットって、宇宙にも行くんですね。
はーー‥‥。
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星出 |
ソユーズの場合は
パラシュートで地上に下りてくるわけですから、
最後はけっこうな衝撃を受けるんですけど。
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── |
ドシンと。そうでしょうね。
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星出 |
さきほど
シャトルの「思想」という話がありましたが、
ロシア、つまりソユーズの場合は
「人間は打ち上げるけれど
荷物は別の手段で宇宙に持ってく」んです。
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ちなみに星出さんのとなりに立っているのがソユーズの模型です。
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── |
つまり、人間と荷物を分けてるんですね。
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星出 |
そこを、スペースシャトルは
ぜんぶ一緒にやってしまおうという考え方で。
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── |
はい、はい。
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星出 |
ようするに「思想」というならば
そのために設計された機体であるわけです。
何でもできる機能を搭載していて、
「再使用できる」という点も含めて。
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── |
なるほど、なるほど。
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星出 |
ソユーズはソユーズで
ちっちゃいけれども、もう何十年もの間、
確実に人間を宇宙に送り込んで
帰還させています。
だから、
どっちがいいとか悪いとかいうものでは
ないんですね。
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── |
でも、やはりすごい機体だったんですね‥‥。
スペースシャトルって。
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星出 |
はい、そう思います。
残念ながら2度、事故も起きてしまいましたし、
いろんな理由があって
2011年に退役してしまいましたが、
われわれ人間が
あの唯一無二の宇宙機をつくったということは
やはり、誇るべきだと思います。
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── |
そうですか!
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星出 |
人類の宇宙史を考えたとき、
「ガガーリンの人類初の宇宙飛行」や
「アポロの月面着陸」に
勝るとも劣らないと
個人的には思っていますから。
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── |
そのふたつに並びますか!
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星出 |
スペースシャトルを運用してきた30年間、
われわれは宇宙空間で
たくさんのミッションを遂行してきました。
宇宙ステーションをつくることができたのは
スペースシャトルがあったからです。
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── |
ええ、ええ。
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星出 |
ですから、「貢献」という側面で語るなら、
「ガガーリン」や
「アポロ」に勝る面もあるかもしれません。
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── |
はー‥‥。
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星出 |
なにより‥‥「かっこいい」ですしね。
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── |
あははは、やっぱり最後はそこに(笑)。
でも、見た目がかっこいいっていうだけで、
「宇宙のファン」を増やしましたよね。
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星出 |
いや、それは、本当に大きいです。
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── |
かつての星出少年みたいに。
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星出 |
スペースシャトルを語るうえで、
ものすごく大切なポイントだと思います。
「かっこいい!」‥‥と、いうのは。 |
ケネディ宇宙センターに着陸するアトランティス号。
写真提供:JAXA/NASA/Bill Ingalls |
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<つづきます。> |