亜熱帯のような夏も。〈O2〉な涼しいツーピース、できました。

tsuku.s 末永津喜子さん 第一紡績株式会社 白石浩二さん・阪本豊さん

予告01

はじめて着たとき、おどろきました。
かるくて風通しがよく、しわになりにくく、
水に濡れてもすぐ乾く。
触りごこちはコットンのようなのですけれど、
ポリエステル100%だときいて、もういちどびっくり。
それは新素材の「DRY-X®(ドライエックス)」という
糸でつくった生地でした。

この生地だったら、蒸し暑い夏でも
さわやかに着られる服がつくれるかもしれない。
うだるような暑さで、外をあるけば汗がじっとりにじむ、
まるで亜熱帯のような日本の夏の毎日を、
快適にすごせるにちがいありません。

そう考えた〈O2〉チームは、
昨冬の「エア・スウェッツ」が大好評だった
「tsuki.s」の末永津喜子さんに相談しました。

できあがったのは、
上下セットでワンピースにも見えるけれど、
じつはTシャツとスカートのセットアップという、
ツーピースの服。
もちろん「夏だけ」の服ではなく、
夏にこそ! 着ていただきたい服が、
ちょっと個性的な
4つの色のラインナップで完成しました。

デザイナーの末永さんと、
素材を開発した第一紡績株式会社の担当、
阪本豊さん・白石浩二さんに
くわしくきいた素材とデザインのお話、
どうぞお読みくださいね。

末永 津喜子(すえなが つきこ)

糸会社にて編物講師、ニットテキストのデザインを経て、
大手アパレルのニットデザイナーとなる。
2011年に自身のブランド tsuki.s を立ち上げ
現在にいたる。

第一紡績株式会社

紡績(糸作り)から編み立て、染色までを
自社の同一敷地内で一貫生産できる
「垂直型一貫生産システム」を持つ、
日本で数少ない企業のひとつ。
1947年の設立以来、真摯なものづくりの姿勢と
その確かな品質で業界内でも信頼が厚い。
今回は営業部 営業第一課 課長・阪本豊さんと、
営業部 営業第一課ブランドユニット主任・
白石 浩二さんにお話をうかがいました。

1+1が2以上になる、ツーピース。

――
「DRY-X®」の生地を使って、
上下セットでワンピースに見えて
単品でも使えるツーピースを
末永さんに作っていただきました。
末永
昨年、この生地を見せていただいたとき、
この生地でつくるのなら
旅行にも持っていける便利な服がいいなって思ったんです。
軽いしシワにならないから、
クルっと丸めれば小さい袋にも収まりそう。
――
いまはなかなか旅行にでかけられない状況ですけれど、
きっと便利ですよね。
ワンピースではなく、ツーピースにしたのには、
なにか理由があったのですか?
末永
Tシャツとスカートに分けたのは
着回しのしやすさを考慮しました。
ワンピースもいいんですが、
それでしか着られないからバリエーションが少ない。
たとえば、旅先のリゾート地で
かわいい麻のブラウスなんかを買ってすぐ着たいとき。
このスカートはうすいのに透けないし、
控えめなデザインなので
上に合わせるトップスを活かしてくれる。
――
プリント入りのTシャツとかを合わせてもかわいいですね。
末永
そうですね。
夜は上下でワンピースっぽく着てアクセサリーをつけたら、
ちょっとしたレストランにも行けますし。
1枚のワンピースより、
ツーピースのほうが使い方の幅が広がりますね。
――
自由な着こなしがたのしめそうです!
気兼ねなく旅行にいける日が、待ち遠しいですね。

では、それぞれ見ていきましょう。
スカートは生地がたっぷりあるのに軽くて、
ふわりとした風をはらむようなボリューム感があります。
末永
全体的にギャザーをいれて、
フロントはタックも入っています。
ウエストベルトは、ゴムを後ろ側だけに入れて、
フロントはすっきりした見た目に。
――
前だけTシャツをタックインしてもきれいに見えますね。
お腹まわりもすっきり。
小澤
そうですね。
ギャザーだけだとお腹まわりも
気になってしまうところだと思うんですが、
タックを入れることで、
下に落ちるドレープがきれいに出ます。
――
丈の長さも、裾を引きずらないけど、
短くもない絶妙な丈感です。
末永
ウエストがゴムなので、
留める位置を調整すれば好きな丈感にできますね。
――
Tシャツはちょっと横に広い襟ぐりになっていて、
袖も小ぶりで女性っぽい品があるなって思いました。
末永
ボートネックっぽく襟ぐりは横にすこし広げて、
袖は短めにシュッとして上品に見えるような
デザインにしました。
かといって、腕を上げても中が見えづらいし、
腕にぴっちりくっつくわけでもありません。
――
そこが絶妙ですよね。
裾に太めの切り替えが入っているのも
デザインのポイントになっています。
末永
ボディすべてが同じ鹿の子地だと、
ちょっと素っ気ない感じもするので、
すそや襟にプレーティング天竺の切り替えを入れることで
見ばえも変わって、フィット感も増します。
フラットに見えて、肌あたりもいいです。
――
Tシャツのようだけど、ブラウスっぽいというか、
1枚で着ても主役になるようなたたずまい。
末永
着ていだだくと、
きれいにふくらみが出てやさしい雰囲気にもなります。
――
色は、目にあざやかな「コーラル」、
清涼感のある「スチールブルー」、
甘さも感じる「ビスケット」、
そして深みのある「ミッドナイトブルー」、
この4色をそろえました。
末永
どれもすてきな色合いですよね。
赤みのあるコーラルは、夏になると着たくなる色ですね。
一見派手ですが、
鹿の子は凹凸があって細かい陰影ができるので、
明るい色でもちょっと落ち着いた感じになっています。
――
ワンピースで真っ赤な色だとちょっと勇気が必要ですが、
ツーピースだといいかなって気持ちがわきますよね。
末永
「ミッドナイトブルー」は彩度が低くて、
黒に近いというか。墨っぽい感じもあって、
4色の中ではいちばんシックですよね。
グリーンがかったニュアンスのある
「スチールブルー」もいいし、
tsuki.sの定番色でもある「ビスケット」も
落ち着いて見えます。
――
色選びに悩んじゃいますね(笑)
派手な色も分けて着られるから、
いろいろたのしめそうです。
末永
これはもうぜったいに便利だと思います。
真夏なんかに着ていただいて、
生地の機能性を実感していただきつつ、
それぞれでもワンピースっぽくでも、
シーンや気分で使い分けて
着ていただけたらうれしいですね。

誰もがポリエステルだと思わない。

――
今回使わせていただいたこの生地、
触ってみて「これはコットン?」と思ったんですが、
じつはポリエステルと聞いて、
最初は信じられませんでした。
白石
よくうたがわれますが(笑)、
正真正銘ポリエステル100%です。
特殊な製法で、コットンのような風合いに
仕上げているんです。
“いかにも合成繊維”の着用感が好ましくないと
思われる方もいらっしゃると思うんですが、
そういう方でも違和感なくお召しいただける素材です。
――
コットンのようで、正体はポリエステルだったなんて。
白石
触り心地はコットンのようですが、
機能はポリエステルなので、吸水速乾性はばつぐんです。
洗濯機にかけても脱水が終わったらほぼ乾いています。
形態安定性もあるので型くずれしにくいのも魅力です。
――
ポリエステルと聞くと、
実はちょっと抵抗があるというか、
天然繊維のほうがいい、みたいな思いこみがありました。
白石
そう思われる方もいらっしゃるんですが、
ポリエステルは、速乾性などの機能面では
コットンよりも格段にすぐれていますし、
汗をかくシーンでは早く乾くので、
ベタつき感や冷え感もおさえられるので、
おすすめです。
しかも、「DRY-X®」のような紡績糸は、
みなさんがポリエステルと聞いて想像する
スポーツウェアのテロっとした感じではなく、
紡績や加工の技術で、よりコットンに近づけています。
――
そうだったんですね。
どうやら生地の作り方に秘密がありそうな‥‥
白石
ポリエステルは一般的に、
釣り糸のような一本の長い繊維でつくられています。
それを3センチくらいにカットして綿(わた)状にし、
さらにいろいろな綿(わた)とブレンドして、
コットンと同じように紡績していく、
という作り方をしています。
――
え、それだけで
このふわったとした感じになるんですか?
白石
それは糸のつむぎ方に秘密があります。
通常は綿状にしたものをくしでとかすように方向をそろえ、
ねじるようにして糸を作っていくんですが、
これは、小さな穴が開いたノズルの中に
グルグル回る空気のうずを起こして、
そこにきれいに引きそろえた綿を投入していきます。
そうすると周りの繊維が空気のうずに巻き込まれてからみ合い、
真ん中の繊維はそのまますとんと落ちていきながら、
一本の糸が出来上がっていきます。
――
なるほど。
空気のちからでつむがれているんですね。
それでいて、生地の表面ががきれいなのもすごい。
ポリエステルって、
よく毛玉ができる印象があるんですが‥‥
白石
ポリエステル生地の表面が摩擦でこすれると毛玉になって、
しかも繊維が強いから毛玉がとれにくいんですが、
「DRY-X®」はそもそも毛羽が少なく、
ふつうの糸と比べたら毛玉になりにくいです。
毛玉という障害物が空気をさえぎることも少ないので、
通気性も確保できます。
――
すごい。
一本の糸に第一紡績さんの長年の研究と
実験の成果がつまっているんですね。
白石
ありがとうございます。
速乾性にも秘密が隠されているんですよ。
糸の中心部はすとんと落ちていって、
周りの繊維がからみあって糸になっている。
その二重構造によって、水が中心部の繊維を通って
分散するので乾きやすい。
ポリエステルなのでもともと速乾性はあるんですが、
糸の作り方でさらにパワーアップさせています。
阪本
夏はこの「DRY-X®」のポロシャツを
ずっと着ているんですが、とても涼しいです。
たまにふつうのコットンのポロシャツを着ると、
着ていられなくなります。
真夏だと、1回着ても、脱いで着替えるぐらい。
コットンより圧倒的に涼しさを感じていただけると思います。
――
汗をかいても、肌にはりつく感じがなさそう。
阪本
そうですね。鹿の子編みなので
肌に接する面積が少なくて、肌ばなれがいいんです。
シワにもなりにくい利点があります。
しかも、紫外線カット率は90%以上という
試験結果も出ています。
――
それはうれしいですね。
夏の暑い日に着るのが、今からたのしみです!
ありがとうございました。

(おわりです)

フレフレ・ツーピース
各¥13,200(税込)

第一紡績株式会社が開発した糸「DRY-X®」で編み立てた
鹿の子生地をつかって、夏にべんりなツーピースを作りました。
「フレ」はフランス語で「さわやかな」「涼しい」という意味。
じっとりと暑い夏でも、快適にたのしくすごしてもらえたら。
そんな応援の気持ちもこめて、この名前をつけました。

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