ファッションデザイナー・平武朗さんが
世界各地から集めた
ヴィンテージ・セーターの柄模様をプリントした
ほぼ日Tシャツ2008「AcousticT」。

ベースとなったセーターの編み目や毛羽立ちなど、
「本物」のディテールを再現するために
最適なプリント表現を求めて、
さまざまなインクや手法を試してみました。

その結果、デザインによって、
2種類のインクと、2通りのプリント手法を
使い分けることにしました。




「柄をたのしむ」というコンセプトが
なかでも強くあらわれている次の5枚のシャツには、
「顔料インク」を使ってプリントしました。

   
アルパカニット   サマーベスト   トナカイのショール
         
     
10のダイヤのアーガイル
(ホワイト)
 

10のダイヤのアーガイル
(グレー)

   

顔料インクによるプリントは、
生地にインクが染み込むので、仕上がりがやわらかく、
ボディの全面に大きくプリントしても、
それほどシャツの通気性を損なうことがありません。

また、他のインクとくらべると、仕上がりが自然で、
繊細な表現にすぐれています。
実物を手にとっていただくとわかると思うのですが、
もとのヴィンテージ・セーターの編み目や質感が、
かなり細かいところまで再現されています。

ただし、インクの特性上、洗濯を繰り返すと、
じょじょに「色落ち」してきます。
着込むうちに、だんだん変化していく風合いごと、
お楽しみいただけたらと思います。



その他のデザインには、
発色がよく、プリント部分にしっかりとした存在感が出る、
ハーフラバーインクを使用しています。

「ちいさなアーガイル」をはじめ、
小ぶりなデザインでも
きりりと際立たせてくれるインクをえらびました。



次の3枚は、生地をTシャツのかたちに
縫製し終えてからプリントする、
「製品プリント」という手法を選択しました。
(その他のシャツは、裁断した生地に
 プリントしたあと、縫製しています)

   
アルパカニット   サマーベスト   トナカイのショール

襟やそでまでふくめた広範囲に
一気にプリントしますので、
とくに襟のリブのまわりや、肩・そでの縫い目など、
「段差」のある部分に、じゃっかんですが、
インクの「かすれ」や「たまり」が
見られることがあります。

インクかすれの例


インクたまりの例
(少し光ったように見えるところ)

生地の裁断が終わった段階で、
ボディとそでに別々にプリントし、
あとから縫い合わせるというやりかたもあったのですが、
製品に一気にプリントしたほうが、
ヴィンテージニットにふさわしい迫力と味わいが出るため、
あえて、このような手法をとりました。

プリントは、手作業で行ないますので、
「かすれ」の程度も「たまり」の出かたも
1枚1枚、それぞれにちがいます。
手づくりによるシャツの個性として、
愛着を持っていただけたら、うれしいです。



Tシャツにデザインをプリントする場合には、
デザインデータから「版」を制作し、
その「版」をもちいて、インクを印刷します。

ふつうは、その「版」の大きさの範囲内で
デザインをするのですが‥‥。

なんと、ごらんのように、
「トナカイのショール」のM・L・LLサイズでは
プリント面にたいして版の大きさが足らず、
そでの部分のデザインが、
途中で切れたようになっています。

LLサイズ

これも「ボディとそでに別々にプリントする」ことで、
問題は回避できるのですが、
きっちりお行儀よくプリントするよりも
わざと「途中で切れてしまっている感じ」のほうが、
なんだかおもしろいし、かっこいい。
そう考えて、そのままでいくことにしました。

ラフでワイルドな魅力を、お楽しみください。



同じように
「10のダイヤのアーガイル」のXS・SSサイズでは
スソの折り返しの部分にプリントがかかっているため、
見ためには、
ダイヤ柄が切れたようなデザインになっています。



XS・SSのボディサイズより、
プリント範囲のほうが大きいため、こうなるのですが、
これら小さいサイズについては、
ダイヤ柄が裾で切れるほうがバランスがよかったので、
意図的に、このデザインを採用しました。

「トナカイのショール」と同様、
これも、シャツの魅力のひとつとして、
お楽しみいただけたらと思います。



ことしの「AcousticT」でも、
これまでの「ほぼ日Tシャツ」同様に、
「ちくちく、ゴワゴワしない」と
評判のよい「プリントタグ」にしました。

「サイズ表記」や「洗濯表示」を
首のうしろにプリントしています。
けっして派手ではないものの、
根強く支持されている「ほぼ日」定番のタグです。