このおはなしの登場人物

井筒明夫先生

建築界で活躍するかたわら、
バードハウスの研究家でもある。
庭先にやってくる
「翼を持つ友人」に
もてなしの心を忘れない。
もっとくわしくは、
こちらをごらんください。
BIRDHOUSES FEEDERS MUSEUM

フェザード・シジュちゃん

鳥と友達になりたいと
思っている宇宙鳥。
青山の「ほぼ日」で修行中。
都会の野外暮らしに
チョッピリ疲れ気味。
住む家を探している。 Instagram:@feathered_shiju Twitter:@feathered_shiju

第1回バードハウス、「巣箱」とはちがうの?

シジュ
井筒先生、はじめまして。
井筒
はじめまして、こんにちは。
シジュ
井筒先生のおうちには
バードハウスがたくさんあるんですね。

▲井筒先生のおうちは、すてきなバードハウスでいっぱいです。

井筒
私たちは、野鳥たちのことを
「フェザード・フレンド(羽根を持つ友人)」と
呼んでいるんですよ。
シジュ
フレンド‥‥友達なんだジュか‥‥。

▲シジュは、語尾が「ジュ」になることがあります。

井筒
鳥もぼくたちも、
同じ環境を生きぬく仲間ですからね。
シジュちゃんも、庭やベランダに
バードハウスを設置して
フェザード・フレンドを招いてみてはどうですか?
シジュ
ハウスに鳥がやってくるの?
どんな鳥がバードハウスに住むんだろう‥‥。
井筒
バードハウスに巣をつくるのは、
原則的に、木の洞(ほら)などの「穴」に
巣づくりをする鳥です。
鳥の種類は、最もかんたんに言えば、
「玄関の穴」の大きさによって変わります。
シジュ
へぇ、穴!

▲バードハウスには、親鳥が出入りしたり
 えさを雛に与えるための「玄関の穴」があります。

井筒
たとえば、玄関の穴の大きさが直径9cmだと
オシドリやアオバズクのバードハウス。
5cmにすると、アオゲラやヤマゲラ。
大きな鳥に住んでもらうためには、
バードハウス自体も、大きくする必要がありますよ。

9cmオシドリ、6cmムクドリ、5cmアオゲラ、ヤマゲラ、4cmアカゲラ、3cmスズメ、2.8cmシジュウカラ

シジュ
オシドリやアオバズクって、
見たことがないだジュよ!
井筒
ははは、そうだね。
都会でバードハウスを利用するのは
スズメやシジュウカラだと思います。
シジュ
なんで都会のスズメやシジュウカラは
バードハウスが好きなんだジュか。
井筒
じつは、日本じゅうの街で、
鳥が巣をつくることができるような、
洞のある木々がどんどん減っているんです。
スズメが巣をつくるような瓦屋根の家も、
現代では隙間を密閉してしまうことが多いんですよ。
シジュ
いまはビルやマンションが多くなったし、
住宅難だジュ。
井筒
それから、鳥が水浴びできるような場所も、
都会ではほんとうに少ないのです。
舗装がきれいになって、
道路に水たまりもできないし、
小川は管になって道の下に埋めらました。
シジュ
水遊び、砂遊びは、鳥に必須だジュね‥‥。
井筒
鳥の好きな、実のなる木も少なくなりました。
原っぱが消えて、雑草の実も減った。
ミミズも少なくなった。
それらすべて、
都会の野鳥たちにとっては深刻な問題です。
シジュ
生ゴミなんかも街から消えつつあるだジュね。
人間が衛生を求めたり危険を避けるため
がんばって改善してきたということも、
もちろんよくわかるし‥‥。
井筒
ぼくらが暮らしを変えていくことによって、
都会の鳥が過酷な毎日を強いられている、という
一面があります。

でもそれは、ほんとうは、
鳥でなくとも、同じかもしれないんですよ。
私たちだって、自分たちの手で毎日を
過酷にしているかもしれないんですよ。
シジュ
どういうことだジュか‥‥。
井筒
小川のせせらぎを耳にしたり、
鳥や虫たちの姿を目にしたり
できなくなっていって
さみしいと思うことはない?
シジュ
いま「ほぼ日」で修行中だけど、
四角いビルにいて、インターネットして、
スマホが好きだからいつもいじってSNSしてる‥‥。
井筒
ネットの中の友達だけでなく、
羽根を持つ友達を、ほんとに
庭に呼んでみるといいよ。

ぼくは、ちょっとだけ、
自分の世界が変わると思うんです。

目の前を鳥がいきかい、さえずる声を聞き、
食べものをついばむ姿を
窓から眺める毎日をすごすと、
ぼくたちとは違う次元で生活している
友人たちの毎日に
思いを馳せるようになります。

▲小さなお庭であっても、羽根を持つ友達が来てくれたら。

小鳥の住んでいる世界にふれれば、
自分がこつこつ仕事をしたり
家事をしたりしていても、
「この世界は、あの鳥たちも
 いっしょに生きているんだ」
と思うだけで、うれしくなる。
姿を見て、声を聞くだけで、
うきうきするようになるんだよ。
それに、鳥たちにとって住みやすい街は、
つまり、きれいな空気と水を保持する、
人間にとっても住みやすい世界である
ということなんだ。
シジュ
へぇぇぇ!
ところで、バードハウスって
巣箱とはちがうのかな。
井筒
外見は、まぁ、同じです。
でも、鳥は人間が用意した家を
「巣」にするだけではないのです。
寒さや風雨をしのいだりして
年中利用するから、
「ハウス」と呼ぶのにぴったりなんですよ。
ですからぼくは、
害虫駆除用や観察するための「巣箱」じゃなくて
「隣人の家をつくる」という気持ちで
バードハウスをかけています。

(つづきます)

2015-07-27-MON

鳥紹介

都会の庭にもやってくる鳥その1シジュウカラ

バードハウスを家の庭やベランダにかけたら、
やってきてほしい鳥、ナンバーワン。
昆虫を主食としますが、
黒ひまわりの種も、よく食べます。
牛脂も大好き。
黒い帽子とネクタイ模様がかわいい鳥です。
よく通る声で「ツツピン、ツツピン」と鳴きます。
バードハウスにシジュウカラ専用の家にする場合には
穴を28mmにするといいですよ。

ちいさなクエスチョンハウス

シジュ

Q

鳥ってふだんは何を食べてるの?
井筒

A

虫を食べて
樹を守っているよ。

鳥は、植物の種子や虫を食べます。
花の蜜を摂取することもあります。
樹につく虫を食べるため、
農業や園芸にとって、野鳥は古来より
たいへん有用でした。

虫が樹にたくさんつくと、
葉や根を食べて樹を弱らせてしまうからです。

明治時代、日本では害虫駆除のために
野鳥を「益鳥」として扱い、
森林に巣箱をかけました。
殺虫剤や農薬が普及し、
巣箱を利用した害虫駆除は、
一般的ではなくなりました。

樹と虫、鳥が、適切なバランスを保つことで
豊かな森がつくりあげられます。
鳥はまた、木陰で身を隠したり休んだりもします。
鳥と植物は、たいへんなかよしなんです。
もし、家のベランダや庭で植物を育てていたら、
バードハウスもいっしょに置いてみてください。

石巻工房について

石巻工房は、宮城県石巻市沿岸部の商店街で
2011年に生まれた「地域のものづくりの場」です。
東日本大震災による津波によって
大きな被害を受けた地域で、
当初は首都圏のデザイナーを中心とした有志が
工房に補修道具や木材を集めて提供し、
復旧・復興のために自由に使える
公共的な施設としてスタートしました。
被災した人々が手を動かす「DIY(Do It Yourself)の
支援活動を行うほか、地元の店舗を復旧、
デザインワークショップを開催するなど、
コミュニティの場としても運営。
地元の高校生や子どもたちへ
技術指導を継続的に行うなど、
将来を担う人材育成にも協力しています。
石巻工房は、自らのアイデアとストーリーとともに、
DIYの世界と可能性をデザインの力で押し広げる
世界初の「DIYメーカー」としての一歩を
踏み出しました。

石巻工房は、地元の人々の自立運営する
小さな産業として、地域を活性化する
起爆剤になることをめざしています。
これまでの活動を通じ、DIYスキルとデザインが
どのような状況にあっても役立つことを実感し、
クリエイティブな製品企画には
人々の意識を変える力があることを確信しています。
そして、世界中の人々が自らの手に
創造性を取り戻し、暮らしや街が
より豊かなものになる姿を夢見ています。

北海道立旭川美術館で、バードハウスの企画展があります

▲〈バードハウス〉(アメリカ) 織田コレクション蔵

2015年9月11日より、北海道立旭川美術館で
鳥やバードハウスをテーマにした企画展が開かれます。
鳥をテーマにした美術作品や、
ユニークでデザイン性の高いバードハウスが
よりすぐって展示されます。
また、美術講演会として、
9月12日(土)に、井筒明夫先生の講演会
「アートとしてのバードハウス
 ~北海道から始まった日本のバードハウス運動」
も開かれます。
井筒先生の聴講は無料ですので、直接会場にどうぞ。
また、バードハウスのワークショップもありますので、
ご興味ある方はぜひ美術館にお問い合わせください。

「バード&バードハウス織田コレクションを中心に」

会場:北海道立旭川美術館 第2展示室
日時:2015年9月11日(金)~11月8日(日)

■美術講演会

「アートとしてのバードハウス
 ~北海道から始まった日本のバードハウス運動」
講師:井筒明夫さん(バードハウス研究家)
日時:9月19日(土)午後2時~3時30分
会場:北海道立旭川美術館講堂(聴講無料)
*事前申し込み不要。直接会場にお越しください。

■ワークショップ〈バードハウスをつくろう〉

日時:10月3日(土)13時30分~16時30分
会場:北海道立旭川美術館講堂
講師:NPO法人フェザードフレンド
対象:小学生(定員15名)、保護者と一緒に参加も可
参加費:1人 1,130円
(材料費、レクリエーション保険料込み)
募集:8月20日(木)9:30より電話にて受付
(旭川美術館 0166-25-2577)

休館日や入館料、交通アクセス、 ワークショップの
くわしい案内については 北海道立旭川美術館の
WEBサイトをごらんください。