第4回バードハウスがあるだけでいい。

シジュ
鳥となかよくなる方法と
注意点はだいたいわかったジュ。
早く鳥が来ないかな‥‥。

井筒
まぁまぁ、急がずに。
鳥とのつきあいは、つまり
自然とのつきあいです。
ゆっくりやっていくことが肝心だよ。
シジュ
またデジタルな悪い癖が出ちゃった。
井筒
アメリカでは、国民の3人にひとりが
野鳥となんらかのコミュニケーションをしている
「バーダー」であると言われています。
野鳥が身近な存在なんですね。

鳥は、人間に自然の健全さを
教えてくれる存在だと、ぼくは思っているんです。
バードハウスをかけることももちろん
そのきっかけになるけど、
シジュちゃんも、道端や近くの公園にやってくる
野鳥に目を向けてみるといいよ。
シジュ
鳥と友達になることで、
鳥の視点を手にすることができるんだジュな。
井筒
だから、極端に言うと、
バードハウスに鳥がやってこなくても、
それは大きな問題じゃない。
シジュ
そうなのか‥‥。
井筒
自然というのは、みなさんもご存知のとおり、
思い通りにはいかないことだらけです。
計画して、準備しても、
「なぜかしらダメだ」ってことも多い。
シジュ
恋もそういうことばっかりだジュ‥‥。
井筒
それは、人間も自然の一部だから。
人間も野生動物です。
だから、自然とつきあうには
どういう心構えでいればいいのかを、
バードハウスをかけることで
学ぶことができるんです。
バードハウスに、鳥が
入らなくたっていいじゃないか。
ぼくはそう思います。
シジュ
なんでも、もともと
思い通りにいかないんだ、
ということが学べる。

井筒
つまりこれはゲームじゃない。
自然とのつきあいなんです。
それこそが、いまみんなが
求めているものなのかもしれません。

こういう考えは
自然保護につながっていくと思うけど、
自然を保護するということは
ほんとうはとても「だいそれた」考えなんです。
自然をなんのために保護する必要があるかというと、
それはなにより、人間のためなんです。

自然保護は、とても自分勝手だと思うけど、結局
人間がなるべく快適に、
長く暮らしていくための工夫だと思います。
なかには違った活動もあるとは思いますが、
たいていは、地球のためとか、
緑のためじゃないと思います。
野鳥が住みやすい環境は、
人間も暮らしやすく、たのしいのです。

だから、ぼくは、バードハウスが
都市にこそ必要だと思っています。
シジュ
都会に緑をたくさん残そうとしたり
保護林があったりするのも
そういうことだジュな。
バードハウスがあることで、
身近なところから自然に関心を持てる。
井筒
科学的な正しさを追求するだけが、
道じゃないんだよ。
ぼくたちがやっているのは
鳥類保護や自然保護などという
だいそれたことではなく、
人間性の向上なのかもしれませんね。
だから、「やりたいからやる」で
いいんだと思いますよ。

たとえば──そうですね、
フィンランドのクリスマス飾りの
お話をしてあげましょう。
フィンランドのクリスマス飾り、
どんなのか知ってる?
シジュ
知らないだジュ。
フィンランドを知らないだジュ。

井筒
フィンランドでは、クリスマスになると
日本のお正月の松飾りのように、
麦の穂の束をわらでくくって
庭先に立てるんです。
冬場、食糧不足に苦しむ鳥たちのために、
そうするんだね。
シジュ
飾りと鳥の食べものが一体化してるんだジュな。
井筒
クリスマスのお祝いなんだし、
鳥たちも食べてね、という意味で
麦を飾りに用いるのでしょう。
そういう「いっしょに」という気持ちは
人をたのしくさせますね。

また、別の国のお話ですが、
夜になると人の家を熊が襲う事件が
たくさん発生したことがあります。
そのときに、人びとはどうしたか?
シジュ
役所に電話する。
井筒
そうではありません。
くまがなぜ人の家を襲うのか、
みんなは考えたのです。
そして出した結論は。
シジュ
結論は‥‥(ごくり)。
井筒
犬を夜に外につながない、
ごみを夜は外に出さない。
そう決めたのだそうですよ。
シジュ
へぇえー。
井筒
そうやって、みんながどんなふうに
自然とつきあっているかを見ることも
とても大切だと思います。
シジュ
ほかの動物のことを考えることで
自分たちを考えるんだジュな。
バードハウスについて、よくわかりました。
先生、いろいろ教えてくれて
ありがとうございます。

(おしまい)

2015-07-30-THU

鳥紹介

都会の庭にもやってくる鳥その1シジュウカラ

スズメよりはすこし大きく
ハトよりは小さい鳥です。
身体は黒褐色で、
頬は白い部分があります。
夏には虫をよく食べて
樹や畑を守ると言われています。
えさが不足する秋冬には
木の実をよく食べます。
街路樹などをねぐらにすることも多く、
群れになって活動します。
くちばしと足はオレンジ色。
ムクドリのバードハウスをつくるには、
入口の穴の大きさは6cm必要になります。

ちいさなクエスチョンハウス

シジュ

Q

バードハウスって
最初に誰がつくったの?
井筒

A

縄コロンブスの時代に
アメリカ先住民がひょうたんで
鳥の家をつくっていた、
という記録があります。

アメリカで最も古いバードハウスは
先住民がつくった、
ひょうたんのバードハウスと言われています。
棲みついたのは、
パープルマーチンという鳥でした。
パープルマーチンはトウモロコシを
食べるカラスや、
家畜を狙うタカやワシの来襲を
鳴き声で人に教えたといわれています。
また、季節にあわせて
避寒地メキシコから飛来してくるので、
アメリカ先住民のカレンダーの役割を
果たしていたともいわれています。

アメリカ鳥類学の創始者
アレキサンダーウィルソンの著書によれば、
荒野で孤独な暮らしをしていた人たちは
パープルマーチンに対して
特別の尊敬の気持ちをもっていたようです。
バードハウスは、
孤独をなぐさめてくれた、
もともとの居住者であるフェザードフレンドを
もてなすための
ゲストハウスだったんですね。

わたしたち人間も、鳥も、そのほかの生きものも、
自然に迎えられた顧客です。 お互い思いあって、 環境をうまく共用していけるといいですね。

これで井筒先生とシジュちゃんによる
バードハウスのプロローグはおしまいです。
明日から、東北ツリーハウス観光協会と石巻工房の
バードハウスについて、紹介していきます。
おたのしみに。