「糸力カレー」は、山梨に釣りに出かけたとき、
たまたま行った「日帰り温泉」で出てきたカレーです。
サラサラ式のカレーなんですけど、
ものすごくおいしくて、びっくりしたんです。
それで、作り方を聞いてみたら、
「糸力」という地酒のお店から仕入れていると
いうことだったので、
わざわざ訪ねていきました。
そしたらやっぱり、すごくおいしくて。
あまりにおいしかったから、しばらく、
チルド(冷却)したものを家に届けてもらって、
ずっと食べていました。
それであるとき、ふと、
「このカレーがレトルトだったらいいのにな」と思って、
「糸力」のご主人と『通販生活』に声をかけて、
一緒にレトルトカレーを作らせてもらったんです。
レトルトっていろいろと制限があるから
お店のものとまったく一緒とまではいかないけれど、
けっこういいものができたので、
それを『通販生活』で販売したんです。
だけど、実際に販売がはじまって、
「これは引っぱりだこになるかも‥‥」
なんて思っていたら、予想外にも、
苦情のハガキがじゃんじゃん届きはじめました。
「こんなのカレーじゃない」とか「まずい!」とか。
おいしいという声もけっこうあったけど、
それ以上に、反発する人たちの熱がすごかった。
「こんなまずいカレー、初めて食べました」とか。
これには本当にびっくりしました。
でも、そのままで終わるわけにはいかなかったんで、
「まずい」という人、「おいしい」という人、
みんなに京王プラザホテルに集まってもらって、
カレーを食べる会を開いたんです。
「糸力」のご主人が手で作ったカレーと
レトルトのカレーと、両方を食べてもらいました。
そうしたら、食べているうちに
「まずい」と言っていた人たちの意見が、
なんだか、グラグラ揺れはじめたんです。
「‥‥いや、まずいっていうんじゃないんですけどね」
なんて、あやふやになったりして。
最終的に、はっきりした理由はわからなかったけど、
どうも「まずい!」と強く主張していた人たちは、
ごはんにカレーが染みるのが、嫌だったみたいです。
そのとき、カレーのおいしさというのは
本当に人それぞれで、
みんな、自分の好きなカレーへの「こうあるべきだ」が
非常に強くあるんだ、と教えてもらいました。 |