福森道歩さんの
土鍋料理。
2018

「きのこがおいしい季節になりましたよ。
そろそろ、遊びにいらっしゃいませんか?」

土楽の八代当主、福森道歩さんから
そんなおさそいをいただいた私たち。
ひさしぶりに土楽をたずねました。

メニュー

  • たことしょうがのご飯
  • 季節の蒸し野菜
  • えびのエスニック鍋
  • スペアリブと大根のみそ煮込み
  • 土楽の松茸ご飯
  • 伊賀牛と松茸のすきやき
  • 回鍋肉
  • グラタン
  • きのこのペペロンチーノ
  • 野菜とチキンのカレー
  • 麻婆豆腐

この日の風はすこしつめたくて、
もうすぐ土鍋の季節が来る、
そんな予感にみちていました。
そう、寒くなってくると
すこしさびしい気持ちになるいっぽうで、
「お鍋のおいしい季節」というたのしみが!
蓋をあけると立ち上る湯気、ぐつぐつ煮える音、
旬の食材ならではのいいにおい。
よそって、ふうふうと息をかけて、
あつあつをいただくその瞬間を思うと、
ちょっとワクワクしてきます。

陶芸作家であるとともに料理家でもある道歩さんは、
ちょうど『ひとり小鍋』という新刊を上梓したばかり。
「ひとり」とタイトルがついていますが、
分量をかえれば、大人数でも使える、
おいしいレシピがたくさん掲載されています。
今回は、そのなかからのいくつかと、
いまの季節ならではの土鍋料理を
つくってくださることになりました。

これは、いったい‥‥?

「たことしょうがのご飯」です。
すぐに、炊き上がりますから、お待ちくださいね」

秋で土鍋といえば、ご飯!
「土鍋でご飯をおいしく炊くのはむずかしい」
と思うかたも多いのかもしれませんが、
そんなことはありません。
こればっかりは写真や文章では伝えきれませんが、
土楽の土鍋で炊いたご飯は、
火のエネルギーが、土を介して、
ごはんに封じ込められたような、
パワフルなおいしさがあるんです。

お水は(お酒を入れるときは合計で)
計量したごはんと同量。
最初は弱火。
ふちが熱くなってきたら、強火。
ぐつぐつと沸騰したら、弱火にして12~13分。
このとき「すこし焦げたにおい」が
するくらいがちょうどいい頃合いです。
そして火をとめてすこし蒸らせばできあがりです。
ちなみに「たことしょうがのご飯」は、
だし、お酒、塩、しょうゆで味付けされています。

「そろそろ、いい頃合いかな」

うん、いい感じに炊き上がりました。

大胆に、でもふんわりと混ぜて‥‥。

よそって、できあがり!
土楽では、お米も自家製。
伊賀のお米って、土の質のためでしょうか、
さっぱりしていて、粘りがすくないので、
こんなふうに炊き込みご飯にすると、
あまみと具材の味が絶妙なバランスになるんです。

続いて道歩さんがつくってくださったのは、
「季節の蒸し野菜」。
土鍋で蒸し料理? そうなんですよ、できるのです。
水を張って、まるい網をおいて、蓋をして中火に。
沸騰して湯気が立ったら、
さといも、カリフラワー、ブロッコリ、
かぶ、そしてさつまいもを入れ、また蓋をして、
火が通るまで加熱すればできあがり!

野菜の味付けは、各自、食べる前に、
オリーブオイル、しょうゆや塩、ゆずなどで。

金属の鍋で蒸した野菜と、
土鍋で蒸した野菜って、
微妙に味がちがうんです。
芯までほっこり火が通り、水っぽくなく、
あまみも、なんだか増しているような!
見た目は生野菜のようなのに、
アツアツで、さめにくくって、
口に入れるとやけどをしそうなほどです。
いい素材を、いい道具で調理すると、
なんでもないようなものが「ごちそう」になるのですね。

つづいて、道歩さんが運んできてくださったのは、
えびのエスニック鍋。

ここに香菜をどっさりのせます。

香りだけで辛いのがわかる!
しかも土鍋なので、熱さ、はんぱなし。

秋風のなか、汗をかきかきいただきました。
‥‥すると、さらに汗のでそうな一品が。

スペアリブと大根のみそ煮込みです。
骨からほろりと崩れるほどやわらかく煮た
スペアリブと、しゃきしゃき感ののこる大根、
それがピリ辛でアツアツの、みそ味で仕立てられています。

ここまでお読みのみなさま、
「取材しながらぜんぶ食べたの?」と
思っていらっしゃることと思いますが、
ハイ、食べました。
不思議なほどにスルスル入るんです。
道歩さんの料理って、
こんなふうにダイナミックで、
いかにもお酒のつまみに
よさそうなものが多いのですけれど、
(なぜなら、本人がお酒が好きだから!)
見た目ほど、塩辛くはないのです。
だしの味は濃いのですけれど、しょっぱくない。
だからどんどん入っちゃうのかもしれません。