福森道歩さんの
土鍋料理。
2018

「きのこがおいしい季節になりましたよ。
そろそろ、遊びにいらっしゃいませんか?」

土楽の八代当主、福森道歩さんから
そんなおさそいをいただいた私たち。
ひさしぶりに土楽をたずねました。

メニュー

  • たことしょうがのご飯
  • 季節の蒸し野菜
  • えびのエスニック鍋
  • スペアリブと大根のみそ煮込み
  • 土楽の松茸ご飯
  • 伊賀牛と松茸のすきやき
  • 回鍋肉
  • グラタン
  • きのこのペペロンチーノ
  • 野菜とチキンのカレー
  • 麻婆豆腐

秋の土楽を訪ね、
陶芸作家であり料理家でもある
八代当主・福森道歩さんに
土鍋料理をつくってもらいました。

こちらは道歩さんのお父様である福森雅武さん。
土楽の七代当主です。
雅武さんの「土鍋をつくり、うつわをつくり、
料理をつくり、もてなす」スタイルは、
娘の道歩さんにも、受け継がれています。

伊賀でとれる伊賀牛、
そして、ことしは豊作だったというきのこ。
きょうはこの材料でごちそうをつくってくださるそう。

ひゃあ、こんなにたくさんの松茸が。
きっと、これを炊き込むのですね。

「ちゃいますよ。炊き込むわけじゃないんです。
炊き上がったご飯といっしょに、蒸す感じです」

こんぶ、お酒、塩を加えて炊いたご飯に。

刻んだ松茸をどっさりのせて。

蓋をして蒸します。
時間にしておよそ10分、
火をとめたばかりで土鍋はアツアツ、
ご飯もかなりの高温ですから、
それで「蒸す」のですね。

蒸し上がったら、しっかりまぜて。

「土楽の松茸ご飯」のできあがり。
ゆずをしぼって、いただきます。
生ではないギリギリの調理で、
松茸のシャキシャキ感がしっかりのこり、
香りもきわだちます。
こりゃ、おかず、いらないです。

そしてもう1品、伊賀牛のすきやきを。
みなさま覚えておいででしょうか、
土楽の土鍋は煮炊きだけではなく、
「焼き」ができます。
買ったばかりではできませんが、
最初にお粥を炊いてから、
4~5回、汁もの(いわゆる「お鍋」)で
たのしんでいただいたくらいから、
フライパンのようにお肉を焼くのに
使うことができるんです。

「なんだかこわいなあ」と思われてしまうのですが、
まず空だきをして、煙が立つくらいまで熱します。
そこに牛脂をのせて、あぶらをひろげます。

かなりの高温になるので、
土鍋に手をふれないよう注意してくださいね。

お肉を焼きます。
「くっつかないの?」
だいじょうぶ、くっつきません。

さらに具材を入れて調理します。
土楽のすきやきは、お砂糖を使いません。
お酒と、塩と、しょうゆ。それだけ。
これは雅武さん直伝、
「素材のあまみを土鍋が引き出す」のです。
甘くないすきやき、想像しづらいかもしれませんが、
ぜひいちど、ためしてみてください。
そして、具材の種類も、そんなに多くありません。
決めているわけではなく、
その日その時で、変化するんです。

この日は、ねぎ抜きでしたが、
ぜいたくに、松茸を投入!
最後に入れてざっと火を通して完成です。

放し飼いの鶏のおいしい玉子を溶いて、
いただきました。

先にご飯もいただいたし、
メインのすきやきが出たので、
きょうは軽めにおしまい‥‥と思いきや、
道歩さんが「片手鍋」で
さっと回鍋肉(ホイコーロー)を!

「まだまだありますよ。これでもつまんで、
待っていてくださいね」

さらにオーブンの中では、なにやら洋風の料理が
グツグツ煮えています。

そうなのです、土楽の土鍋は
そのままオーブンに入れられる。
だからこんな料理もできるのです。

かぶをたっぷり入れたグラタン!

‥‥道歩さん、そろそろ満腹なんですけど‥‥。

「まだまだ出ますよ!
土鍋でいろんな料理ができること、
知ってもらわなくちゃ」

そうして出てきたのがこちらです。

きのこのペペロンチーノです。
パスタを茹でるのは別鍋ですが、
土鍋をフライパンがわりにして、
にんにくととうがらしをオリーブオイルで加熱、
そこにきのこを入れて、ソースをつくりました。

フライパンはそのまま食卓にだすのを
はばかられますけれど、
土鍋ならだいじょうぶ。
蓄熱性が高いので、冷めにくいですよ。

つづいてはこちら。
ん? これは、‥‥カレー?

「カレーの恩返しをたっぷり使って、
野菜とチキンのカレーをつくりました」

ちょっと話が脱線しますが、
ここで使った「ひとくちカレー皿」。
じつはこのサイズ、「ほんとにだいじなカレー皿」を
つくったとき、最初に道歩さんが提案したサイズなんです。

じっさいに最初のアイテムになったのは
ひとりぶんがたっぷり食べられるサイズでしたが、
土楽ではこんなふうにいろんな料理をすこしずつ、
お酒をいただきながら食べて、
ご飯は最後にすこし、ということが多いので、
カレー皿もちっちゃくてだいじょうぶなのだそう。
たしかにこういうときは、大活躍です。

さて! いよいよほんとに最後です。
たっぷり湯気の立ったこの鍋、
麻婆豆腐でした。

「ちょっと材料が余ったので、つくってみました。
お豆腐のかわりにアボカドを使うのも、
じつはおいしいんですよ」

アボカドを麻婆味で!
そのレシピはあたらしい料理本
『ひとり小鍋』に掲載されているとのこと。
それは試してみなくっちゃ。

土楽の当主としての仕事だけでもそうとうなことなのに、
陶芸作家として個人の作品をつくる仕事、
そして料理の仕事と、大活躍の道歩さん。
この秋は、今回の取材に登場した土鍋やお皿が
「ほぼ日ストア」にならびます。
道歩さんの提案する味の世界、
ぜひみなさんも、体験してみてくださいね。