「ベア1号」と「ベア2号」は、ひとつひとつ
職人さんが手びねりでろくろをまわして
つくっています。
どんなふうに、つくっているのか、
「土楽」の工房におじゃましました。
「ベア1号」を作っている過程を例にご紹介しますね。
まず伊賀の山で、粘土を探して掘るところから始まります。
土鍋に使う粘土は、伊賀から出土する粘土のみを
使用しています。
粘土は天然原料なので、掘る場所によって
状態が変わります。
そのため、掘るたびにデータをとって、
粘土の状態をしっかり調査します。
土鍋を成形しやすい粘土と、
耐火度の高い粘土は、
かならずしも一致しないので、
ふたつの粘土のブレンドのしかたを研究して、
土鍋に最適な粘土になるよう、テストを重ねます。
ブレンドした粘土がよいかどうかの
客観的な指標として、
公共の研究所に化学分析を依頼して、
分析値を見て、使用決定を判断しています。
堀った粘土はそのままでは使えません。
乾燥させて細かく砕いた後、
不純物を取り除き、水を加えて、
均一な濃度になるようにかき混ぜてから、
余分な水分を取り除きます。
その後、3段階の練り方で練り上げます。
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乾燥したパウダー状の粘土を
数種類ブレンドして、
「混練機」と呼ばれる大きな機械で
ムラがないよう混ぜ合わせます。
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次に1を「土練機」と呼ばれる機械で
よく練ります。
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仕上げは人の手で、解きほぐすように
菊の花びらのような形にしながら練ります。
(手のひらの跡が菊の花のような形でつくので、
「菊練り」と呼ばれています)。
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3段階でよく練る理由は、
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ろくろで手びねりして作るときに扱いやすくなる
(=可塑性がよくなる)。
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粘土の中の余分な空気が抜けるので、
焼いているときに、
空気が膨張しすぎてひびが入ったり
割れたりすることがなくなる。 |
から、です。
練りが足りないと、土の延びが悪く、
焼いているときに、素地に含まれる余分な空気のため、
ふくれて破損してしまう原因になることがあります。
最近では分業化が進んでいるので、
粘土探しから「土練機」で粘土を練るところまで、
外注している窯が多くあります。
大量生産品のなかには、
海外の土を使っているものもあります。
福森雅武さんがつくった土鍋を原型として、
土鍋専門の職人さんが、
手でひとつひとつ成形します。
「土楽」の土鍋はすべて、
ろくろをまわして手びねりで作っていますが、
熟練した技術がないと、ろくろをまわしているときに、
土鍋のかたちが崩れてしまったり、
厚さが一定にならなくて、
火にかけたときに、割れやすい土鍋になるそうです。
また、職人さんたちが使う道具は、
自分の手作りです。
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まずフタを作ります。
持ち手を削って乾燥させて、
がたつきのないきっちりしたものを作ります。
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次に胴を作り、胴の底が削れる
ちょうど良いかたさになるまで、
1〜2日間乾燥させてから
均等な厚さになるよう削っていきます。
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取っ手を胴に一つ一つしっかり付けます。
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室内で1〜2日間、
続いて、外の日かげで1〜2日間乾かし、
その後、天日で十分に乾燥させます
(必要日数は天候に左右されます)。
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「ベア1号」や「ベア2号」のように口付きの場合、
ゆがむ割合が高いので、ゆがみ防止に
胴のおしりの部分にわっかを敷くと同時に、
きっちり作っておいたフタをかぶせて矯正します。
天日で十分に乾燥させた後、
ブラシでひとつずつ、削りかすなどのそうじをし、
1回目の焼成(素焼き)の準備に入ります。
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素焼き
1回目の焼成は素焼きと呼ばれる仮焼きです。
約700度くらいで焼き上げます。
素焼きすると、もう粘土には戻らないので、
扱いやすくなります。
乾燥させただけの粘土は、水につけると戻ってしまうため、
素焼きをしていないと、
釉薬をかけるときに困ることになります。
そこで、この素焼きをすることで、釉薬をかけても
形が崩れないようにしておくのでした。
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釉薬をかける
釉薬専門の職人さんが
福森雅武さんが配合した釉薬をもとに
濃度などをきっちりと計ってブレンド、
ひとつずつ釉掛けします。
釉薬は陶器の表面のガラス状になっている部分です。
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本焼き
釉薬をかけた土鍋を窯詰めし、
約1,200度の温度で20時間ほどかけて焼き上げます。
その後、1日半かけてゆっくり冷まして、焼成完了です。
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「ベア1号」と「ベア2号」に使っている釉薬は、
黒い釉薬なので、釉薬の下の素地の割れなど、
慣れていないと見落としてしまうので、
「土楽」のベテランの検品担当者が
ひとつずつチェックします。
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