土楽を訪ねて、囲炉裏端で。

久しぶりに、伊賀の窯元・土楽を訪ねました。
現当主の福森道歩さんの、土鍋を使った料理のかずかず、
今回は、おおぜいで、「囲炉裏端」でいただくことに。
「火と鍋を囲む」という、土鍋の原点を、
みんなで体験してきましたよ。

「ほぼ日」が土鍋の販売を始めたのは、
2007年のことでした。
江戸時代からつづく伊賀の窯元・土楽の
福森雅武さんに相談をしてつくった、
オリジナルの土鍋「ベア1号」。
その後、こぶりの「ベア2号」、
うんとおおきな「おおきいベア」がうまれ、
また、福森さんの四女であり
現当主でもある道歩さんといっしょに、
「ほんとうにだいじなカレー皿」など、
土鍋まわりのアイテムをふやしてきました。

そもそも、どうして土鍋‥‥? だったのかというと、
それは、食卓のまんなかに火をたいて、
そこで調理をしながら食べる「鍋料理」って、
いちばん「原初的なごちそう」だったんじゃないのかな、
と考えたからでした。

火のまわりには、しぜんとみんなが集まってくる。
食べる人とつくる人の境目がなく、
料理をする人が孤独にならない。
素材の質が感じられる。
失敗がすくない。
鍋を囲むと、しぜんと食卓に会話がうまれ、
こころとからだがあたたまる。
そんな「鍋料理」をつくるのに、
すがたかたちよく、耐熱性にすぐれ、
料理の味がまろやかに仕上がることで知られる
土楽の土鍋は、最高のアイテムだったのです。
煮炊きだけでなく、お肉などを直焼きすることができる、
という個性も、おおきな魅力でした。

今回はその「原点」にかえり、
伊賀の土楽で、囲炉裏での土鍋料理を紹介します。
つくり手は、福森道歩さん。
ゆったりとした時間の流れる、伊賀の空気ごと、
お伝えできたらと思います。

囲炉裏のある部屋は、
床の間に掛け軸、生け花がかざられ、
いまふうに言えば、
ダイニングルームと客間をかねています。

囲炉裏の部屋との続き間として、
1段低くなった場所に、台所があります。
(福森家の、ふだんのダイニングルームも兼ねています。)
料理家でもある福森雅武さん、
道歩さんの使うキッチンですから、
プロ用の厨房機器がずらり!
下ごしらえは、ここでして、
囲炉裏の火で仕上げます。
鍋料理ひとつだけなら
最初から囲炉裏でつくることができますが、
今回は、「たくさんつくりますよ!」と、
道歩さん、はりきってくださいました。

囲炉裏端にすわっているのは「ほぼ日」のめんめんです。
いちども土楽を訪れたことがない、
というメンバーをさそいました。
みんな、そんなに緊張しなくてもいいから!
リラックス!

おっと、道歩さん、そのお肉のかたまりは、なに?

「これは伊賀牛のイチボです。
伊賀牛は、地元のお店が一頭買いをするのがふつうなので、
ほかの地域にはあまり出回らないですよね。
ましてやこのイチボは、稀少部位。
お刺身で食べられるくらい、新鮮なんですよ。
今日はステーキにしますね」

わあ!
イチボとは、おしりに近い、やわらかいところ。
赤身のおいしさと霜降りのおいしさが合体したみたいな、
それはそれはおいしい部位なんです。

こちらは、かぶと、ロマネスコ。
ごくごくかんたんに、土鍋蒸しにします。

枝豆。これも、土鍋蒸しになる予定。
いい素材はできるだけシンプルに、が、
福森家の料理です。
土鍋が、そのおいしさを、最大限に引き出しますから。

あれ‥‥、福森雅武さんが、敷地内の畑に?

なにを掘り出しているんだろう。

みんなで見にいきました。
これは‥‥?

さといも!

土楽では、お米や野菜は、
なるべく自分の畑で育てたものを使います。
日々丹精しているんですって。
山に入れば、春は山菜、秋はきのこがあるし、
冬はジビエが豊富。
そんな場所で、土鍋はつくられているんです。

ひとしなめの、「かぶとロマネスコの土鍋蒸し」が完成。
拍手!

「まだ完成じゃないんですよ」と、道歩さん。

サーディンのペペロンチーノをかけました。
にんにくをスライス、唐辛子と一緒に
オリーブオイルでカリカリに焼いて、
そこにオイルサーディン、塩を加えたものです。
さすが酒飲みのレシピ‥‥。
「そういうことは言わなくていいです」
ハイ、すみません。

うつわによそったら、
香りの高いオリーブオイルをかけます。

いっただきまーす。

かんぱーい。

(‥‥この記事、まとめていて、
どんどんうらやましくなってきました。
くーっ、ともだちを呼んで、
同じことを家でする! 囲炉裏はないけどね!)

続いて、「枝豆の土鍋蒸し」もできました。
塩をまぶして、水をさし、蒸し焼きに。
ちょっと焦がすくらいまで炊くのが
おいしさのポイントなんだそうです。

こちらは、伊賀牛のすじ肉を使った、
「だいこんすじこんにゃく」。
かつおぶしと昆布でだしをひき、
塩、酒、醤油、すこしだけみりん。
ゆっくりじっくり炊きました。

仕上げに、柚子の皮を散らしていただきます。
ああ、しみじみ、おいしい‥‥。

きのこと、庭の畑でとれた「山東菜」(白菜の一種)。
これは何に使うかというと‥‥。

伊賀牛のイチボのステーキの、付け合わせ!

こんなふうに食材をならべるときにも、
徹底した美意識があることが、
土楽の料理のうつくしさなんですよねぇ。
(まねしよう。)

土楽の土鍋は、直焼き料理ができます。
この黒い肌は「アメ釉」といって、
鉄分を多く含む釉薬を使っているので、
フライパンのような役割をはたすんです。
ただし、買ってすぐ、はNG。
はじめにおかゆを炊いて「めどめ」をして
数回、煮炊きの料理に使ってから、どうぞ。

ステーキは、最初から囲炉裏で調理します。
煙がでるくらいまでよく熱した土鍋に牛脂をひいて、
カットしたイチボをならべて一塩します。

強火で一気に両面を焼きます。
酒としょうゆで味をつけたら、もうできあがり。

どうぞ、どうぞ。
こんなふうに目の前で取り分けて食べられるのは、
土鍋料理ならでは!
ちなみに、柚子をしぼったり、
わさびをつけたり、
アレンジはお好みで。
(どうやっても、おいしい!)

まだまだ終わりません。
グラタンが完成しましたよ。
そう、土鍋はまるごとオーブンに入れられます!

具は、さっき掘りだしたばかりの
さといもと、鶏ももです。
さといもは下ゆでをしてから、
鶏ももはさっと炒めてから、使いました。

あつあつ、ふうふう。
この土鍋、蓄熱性が高いので、
おかわりしても、あつあつです。

道歩さんの土鍋コースも、終盤に。
ごはんが出てきました。
ピーナッツごはん!

生のピーナッツをむいて、
大きいので1粒を半分にカット。
塩、酒、しょうゆを少々加えて、
ごはんと一緒に炊きました。

「もうひとつ、ごはんを炊いたんですよ」
と、出てきたのは、土楽のごはん釜で炊いた、
まいたけごはんです。
こちらは、ちょっとしょうゆを多めにしたそう。
「柚子をしぼって、どうぞ」

おつゆがわりに、
ステーキを焼いた鍋に昆布だしをさして、
きのこや山東菜を入れて、いただきました。

ラストです。
「さといもの炊いたん」です。
だし、酒、しょうゆ、塩。
シンプルこのうえない料理ですが、
ふっくら、ほくほく、ねっとり、
さといものあまみが引き立っていましたよ。

ということで、土楽の「原点」の土鍋料理を堪能。
どれも、難しい調理ではないんです。
もちろん「この場所でいただいた」よろこびは、
おいしさに加点したことでしょう。
でも、「みんなで鍋を囲む」たのしさは、
都会の集合住宅でも、熱源が囲炉裏じゃなくても、
おんなじじゃないかなぁ。
みんな、どうでしたか?

はじめての土楽、それはたのしくておいしい、
土鍋の原点を知った旅でした。
土鍋ってこんなにいろんなことができて、
こんなにも料理をおいしくしてくれるんですね。
忘れられないお料理は、イチボのステーキです。
シンプルな味付けで、
お肉の旨味が口の中いっぱいにひろがって。
すったわさびといっしょに食べたら、
もう最高においしかった!
同じ会社で働くいつものメンバーなのに、
鍋を囲むとご飯も話もすすむすすむ。
みんなでおいしいおいしいと言いながら食べるのって、
なんて幸せなんでしょう。ああ、鍋ってたのしい!
道歩さん、土楽のみなさま、
すばらしい時間をありがとうございました。
(古謝将史)

どれもこれも美味しくて、
滋味深かったり、華やかな風味だったりと
土鍋の守備範囲の広さと深さに
驚くばかりのフルコースだったのですが、
格別だったのが、ピーナッツごはん。
シャッキリとした新鮮な食感と
すっきりとした甘い香りが鮮烈で、
食べている最中に、
「こんなに美味しい炊き込みごはんに
出会えることはそうないのでは」と
名残惜しさまで感じた一品でした。
‥‥いつまでも食べていたかった。
土鍋の蓋をあけたときの静かな興奮や、
言葉にならない出来たての美味しさを、
火を囲みながら、みんなでじんわりと感じられた、
あたたかく、とてもいい時間でした。
(杉山摩美)

以前から、
「土楽の土鍋はほんとうにいろんなことができるんだよ」と
きいていたのですが、
まさかここまでいろんなお料理がでてくるとは。
道歩さんが目の前で料理してくれるその時間は
ひとつのエンターテイメントを見ているようで、
みんなでワイワイ言いながら出来上がりを待つ時間も
とても楽しかったです。
いただいたお料理は、
野菜やお肉のうまみがぎゅっと詰まって、
いつもよりもその食材そのものの香りを強く感じました。
優しい味でありながら、きちんと個性が立っていて。
わたしも土鍋をひとつ持っていますので
これからガンガン使っていきたいと思いました。
後日、自宅に人を呼んだときに
ローストポークを土鍋でつくってみたら、あらびっくり。
とっても柔らかで、自分でも美味しくできました!
しかも、土鍋自体の佇まいがかっこいいので、
テーブルに出したときに
「えっへん!」という気持ちになりました。
(平野さゆり)

鍋を囲むことはあっても、
囲炉裏でパチパチと音をたてる火を見ながら
鍋を囲むのははじめてのこと。
心地よい音や燃える炭の美しさに
気持ちもゆったりとして、
ついつい長く話してしまいたくなるような、
そんな時間でした。
煮たり、蒸したり、焼いたり。
土鍋ってこんな使い方もできるんだ! と
その使い勝手の良さにびっくりしましたが、
やさしくふっくらと火が通った食材にまたびっくり。
料理上手になった自分を想像して、
土鍋の購入を決意したのは言うまでもありません。
(篠田睦美)

ふるさとに帰ってきた。
土楽へ向かう車の中、窓の外の景色を見ながら
思ったことはそれでした。
今回はじめて行った伊賀は
自分の生まれ育った故郷にとてもよく似た
なつかしい場所でした。
そして、囲炉裏を囲んで
パチパチとはぜる火をみんなで見ながら
土鍋でいただくお料理も
どれもなつかしい気持ちになる味でした。
土鍋で作るからこそ、
土から生まれてくる素材のおいしさが活かされて
シンプルだけど深い味。
そのおいしさに刺激されて
日本人としての記憶がじわじわと蘇ってくるような
そんなしあわせな時間でした。
(藤井裕子)

お伺いした土楽のまわりには様々な植物があり畑があり、
自然に囲まれた季節の移ろいが
感じられそうなところでした。
そこで、みんなで囲炉裏を囲みながら
「おいしいねえ」「これもおいしいよ」と言いながら
たくさんの土鍋料理をいただく、
とても楽しくてあったかい時間でした。
なかでも、土鍋グラタンがあまりにもインパクトがあって
思わず、次の週末に道歩さんの本を見ながら
作ってしまったのですが
あつあつほこほこで美味しかったです。
オーブンに土鍋ごと入れるときは、
ちょっとドキドキしましたけど、
土鍋って懐が深いんですねえ。
鍋料理以外にも土鍋を活用してみようと思ってます。
ありがとうございました!
(斉藤妙子)