秋の土楽、山の恵みもふえ、
土鍋が食卓で活躍する季節になりました。
福森雅武さんと道歩さんに、
「こんな料理ができるんですよ」
というお手本を見せていただきます。
前編からひきつづき、
道歩さんの料理からはじめましょう。
ふたをあけると、湯気とともにこうばしいにおい!
ローストポークです。
前編では、まるごとオーブンに入れた
グラタンを紹介しましたが、
これは、ガス台の上でじっくりと
ふたをして焼くことで、
土鍋じたいがオーブンの役割をする、調理法。
厚いお肉もなかまでしっかり火が通り、
なおかつ、ジューシーさをうしないません。
つけあわせのじゃがいもも、ほくほく。
これは、気仙沼の「金のさんま」を使った
炊き込みごはんです。
甘いつゆごと使っているので、
ふだん、砂糖を料理に使わない福森家には珍しく、
甘じょっぱい香りが立ちました。
身をくずしすぎないよう、かきまぜて。
針しょうがをのせていただきます。
さて、道歩さん担当の最後の土鍋料理は、
こんな材料を使います。
刻んだ九条葱と、揚げたうどん。
これをたっぷりのおだしに入れるんです。
福森家名物の「揚げうどん」。
材料は簡単ですけれど、
うどんを1本ずつ揚げるところから始める、
とっても手間がかかる料理なんです。
ちなみにうどんは、市販の玉うどんで大丈夫。
でもここがポイント。思い切った量の九条葱!
そして、こんぶと、
たっぷりのかつおぶしでひいた、
濃いおだしをかけていただきます。
さて、ここから、福森雅武さんが担当します。
伊賀牛、茄子、ししとう。
これが何になるのかというと‥‥。
ステーキ!
こんなに強い炭火でも、土鍋はへっちゃら。
直火料理ができるんです。
なんていい焼き具合。
まんべんなく火がまわるので、
焼きむらがないんです。
絶妙のタイミングでお肉を焼いていきます。
火を見る、火を使うということにかんしては、
陶芸も料理も同じなのかもしれないです。
真剣そのものです。
お肉が焼けたらいったんとりだし、
そこで野菜を焼きます。
火力が強く蓄熱性が高いので
あっという間に火が通ります。
伊賀牛の土鍋ステーキ、完成。
土鍋で焼いたお肉って、
フライパンとはまったくちがう、
独特の食感があるように思います。
レアなのにちゃんと火が通っていて、
ぷりっ、というきもちのよい歯ごたえと、
弾力があるのに、やわらかさもあるんです。
さきほどはお肉と野菜を別々に焼きましたが、
こんどは、いっしょに焼きます。
こうすると、また味がかわるんです!
ステーキというより、大きなかたまり肉の
炒めもの‥‥というような印象に。
ふしぎなくらい味が変化していきます。
さて、土鍋を換えて、
アツアツの状態に熱したところに、
牛脂を入れました。
「こんどは松茸と伊賀牛ですきやきにしましょう」
と、福森さん。
えっ‥‥すきやきに、松茸?
これが伊賀流、というより福森流らしいです。
お肉を焼いていきます。
この段階では味はついていません。
割り下も使いません。
さっと火が通りかけたところに
松茸を手で割いて、入れます。
お塩をぱらり。
日本酒をたっぷりめに。
そして、菜園の間引き菜を、どっさり。
ざっ、ざっと炒めるように和えて。
しょうゆをひとたらしで完成!
これを溶き卵でいただきます。
砂糖も割り下も使わないのに、
自然な甘みがでていました。
そして。焼きすぎてもお肉がかたくならないのも、
土鍋ならでは!
最後に、道歩さんがつくっておいてくれた、
デザートが出てきました。
洋梨を赤ワインで煮たコンポート。
そして、土鍋で焼いたパンケーキ。
底がまるくなっている土鍋ですから、
パンケーキがとてもきれいに焼けるんです。
道歩さん。雅武さん、
どうもありがとうございました。
何年も土楽にかよい、
おふたりの料理を見てきましたが、
年々、道歩さんの料理が
雅武さんのものに近づいているような気がします。
「うつわづくりも、そうあってほしいんです」
と、笑う道歩さん。
きっとそちらも、近づいているんだと思いますよ。
「とんでもない! 父はどんどん先に進んでいますから、
距離はなかなか縮まらないんですよ」
福森雅武さんひきいる「土楽」のつくる、
「うちの土鍋」シリーズ。
この冬も、どうぞよろしくおねがいいたします。