川合優さんがつくる
土鍋のための
栗の木の杓子。

3月9日(金)11時販売開始

おつゆと具がちょうどいい按配ですくえ、
焼きものの繊細な土の肌にやさしく、
手になじんで持ちやすい栗の木の杓子。
土楽の福森道歩さんからのリクエストで、
木工作家の川合優さんがつくりました。
「うちの土鍋の宇宙」のベアシリーズに
よく似合う木杓子です。

川合優[かわい・まさる]

1979年岐阜県に生まれる。
京都精華大学建築専攻卒業後、
在学中にはじめた建築の設計施工の仕事を経て、
現在の高山市にあるオークヴィレッジが運営する
森林たくみ塾で2年間修業。
そこで「椅子づくり」に強い興味をもったことから、
京都の椅子張り工房に3年間在籍。
2007年に木工作家として独立する。
現在は岐阜県美濃加茂市に工房を構え、
日本各地での個展を中心に、器や道具、家具など
木工作品の発表・販売を行なっている。
自身の作家活動と並行して、
日本の林業を考える「SOMA(杣=そま)」という
プロジェクトを立ち上げ、小物から大型什器まで幅広く、
日本の杉と檜を使った作品づくりもつづけている。
「木のおもしろさ」を伝えるため、
ヨーロッパで家を持たず、山を渡り歩きながら
そこにある木で家具を作る仕事をしていた人たちの方法で、
木の伐採から始めて、生木を使う
椅子づくりの一般向けのワークショップなども手がけている。

川合優さんのウェブサイト

interview川合優さん水につよい栗の木、
なかでも木目の美しいものを選んで、
ひとつずつ手で彫りました。

ぼくの工房のある地域は美濃加茂といいます。
木材といえば、という
代名詞のようになっている木曾とちがい、
和紙で有名なあの美濃ともちがい、
その隣の鍛冶で知られる関ともまたちがい、
とくにこれといった産業がある場所ではありません。
なにもないけれど、里山が身近にあるこの地域を、
最近はとても気に入っています。

大きくいえば、木曽川、飛騨川、長良川などの川があり、
名古屋への流通がよかったことから、
木材の産地として発展してきたエリアの一隅、
になりますが、かといってここが
木工のうんと盛んな土地というわけでもありません。
けれども祖父の兄弟がここで工務店を営んでいた縁で、
その一隅にじぶんの工房をもつことになりました。

この木杓子の材料は栗の木です。
ものすごく水に強く丈夫な木で、
すこし昔は線路の枕木に使われていましたし、
うんとさかのぼれば、縄文時代から
食器や建材として用いられてきました。

また、山中温泉の奥に我谷村(わがたにむら)っていう
いまではダムに沈んでしまった村があったんですが、
その村では栗の木を薄く割って屋根を葺く、
つまり栗の木で瓦の役目をするものを
つくっていたんです。
そして村のひとびとは
残った木でお盆をつくりました。
それが「我谷盆(わがたぼん)」
という名前で知られています。
ぼくはその我谷盆がとても好きで、
じぶんでもつくっているので、
そういうこともあって、この木杓子を
栗の木でつくろうと思ったんです。

この木杓子をつくるにあたっては
「木目の美しいもの」を選んで、
ひとつずつ手で彫りました。
堅いものもあれば、柔らかさのあるものもあります。
栗の木は堅い、というイメージが
あるかもしれませんが、栗にもいろいろあります。
それは年輪を見るとわかるんです。
土がよく栄養があって、太陽がたくさん当たって、
周りにライバルがいない所で育った栗は、
生長がはやくなり、年輪の間隔があきますよね。
逆に、すごく厳しい環境で育った木は年輪が狭くなる。
これが杉、檜、松など針葉樹の場合は、
年輪が細かいほど堅い木になるんですが、
栗の場合は逆で、年輪が細かいほう軽くて柔らかく、
年輪が広いほうが堅い木になります。

この木杓子をつくるきっかけは、
道歩さんからのリクエストでした。
「土鍋から、おつゆと具をいい按配で
いっしょにすくうための道具がほしい」
ということでした。

もともとぼくがつくっていた大きな木の匙は、
大皿から取り分ける大きなしゃもじみたいな、
サラダサーバーに使うようなものでした。
そこからアレンジをしたのですが、それにあたって、
岐阜の北のほうの高山というところの
「有道杓子(うどうじゃくし)」という、
朴(ほお)の木でつくる民芸品も参考にして。

ただし道歩さんからは、
「昔からあるような、素朴、朴訥な印象のものが
木の杓子には多いけれど、
川合くんだったらどうつくるんだろう?
もうちょっとモダンになるんじゃないかな。
それを見せてほしい」
というふうにも言われていました。

できあがったものを見た道歩さんからは、
「ええやん!」と。
じっさいに使ってみると、たしかに鍋料理には
このくらいの深さ、柄の長さ、角度がいいですよね。
手仕事ですからいちどにたくさんの数はできませんが、
すこしずつお届けをしていけたらと思っています。(談)

comment福森道歩さん使ううちどんどん風合いが増し、
かっこよく、自慢できる風貌に。
遊び心と、なんだか懐かしい、
和菓子の型のような雰囲気も。
土鍋と、すっと馴染みます。

川合君とは6年ほど前に、
習っていた日本画の先生が同じということで知り合いました。
気さくで背が高くて男前だなあ、
と思ったのを覚えています。
私はその頃、ちょうど父(福森雅武さん)も入っていた
60年続いている芸術クラブ的な集まりに
参加しておりまして、その長老が自分はもう引退をする、
後を若い私たちに託す、ということになり、
新しく自分たちの芸術の場を
立ち上げようとしておりました。
その創設メンバーの一人が木彫家の岸野承さんの父である
岸野直人さん。そこで絵を習っていたのが川合君で、
会を立ち上げるにあたって、
川合君にもぜひ参加してほしいとお話をし、
快く引き受けてくださいました。
メンバーの中で若手でしたが、
自分の意見をしっかり持っていて、人に流されず、
芯のあるとても頼りになる人で、
その人柄は、まさにそのまま作るものへ表現されています。

木杓子をお願いするきっかけとなったのは
3年ほど前に4人展(木工・木彫・水墨画・陶)を
したのですが、その時に川合君が出していた、
サーバーのような木の匙を見まして、
「あ、これ、何か出来そう!」
と直感的に思いました。

土楽の土鍋はシンプルですが、
存在感がしっかりあるものだと自負しています。
いつも使っている木杓子は、民芸的なもので、
それはそれで大好きなのですが
渋すぎるといいますか‥‥。
もう少し柔らかな曲線の木杓子があればな、と
思っていましたので、川合君のそれは、
まさに私の思っていた雰囲気なのでした。

そこで、川合君にお願いをしてみると、
なんと! 一発快諾をいただきまして、
それから一度、試作を作ってもらいましたところ、
今までに見たことのない木杓子で、
とても驚かされたのを覚えています。

それは、内側のすくうところに、
菊のような鎬が施されており、
遊び心と、なんだか懐かしいような、
和菓子の型のような雰囲気もあって、
うちの土鍋と、すっと馴染んだのです。

そして、使ってみると、とても楽しくって。
たっぷりすくえるし、持ち手もしっくりくる。
いいものを作ったね! やったね!! と思いました。

3年前からことあるごとに使っていましたら、
すごく馴染んでいい色になって、
可愛らしい木杓子だったのが、
少しずつ渋みもプラスされ、
どんどん育っていくのが嬉しいんです。

土鍋も一緒で、汚れてきたので買い替えようか、ではなく
使ううちにどんどん風合いが増してきて、
かっこよく、自慢できるような風貌になるのがいい。
割れたらそれはそれは悲しいと思える。
この木杓子もそうですし、
わたしも、そんな土鍋づくりを目指しています。

川合君も私も、切磋琢磨して
これからもモノづくりに正面から向き合っていく。
そんな良い仲間なのです。

栗の木の杓子

サイズと重さ

サイズと重さ
すくう内側の部分
約85×80×20mm
長さ
約175mm
高さ
約25mm
重さ
約50g
素材 栗(無塗装)
天然の木材を使用しているため、
ひとつひとつ木肌の風合いが異なります。
木の節があったり、色が均一でない場合もあります。
原産地 日本

価格

(税込・配送手数料別)

知っておいてほしいこと

  • 実際の寸法が仕様と若干異なる場合があります。
    手づくり品の特徴としてあらかじめご了承ください。
  • 栗の木は、使い込んでいくと、次第に黒っぽくなっていきます。
    使い込んだ木の味わいをおたのしみください。
  • ご使用の前に水で濡らし、乾いた布で軽く拭いてください。
    吸水させることで食べものの色移りが少なくなります。
  • 色やにおい移りを防ぐため、
    食材や、金属に触れたままにしないでください。
    特に栗は鉄に長時間触れていると
    変色することがありますのでお気をつけください。
  • 天然木を使っていますので、
    ご使用いただくうちに、
    少しずつ摩耗してくることがあります。
  • 食洗機、電子レンジは使えません。
  • 冷蔵庫、冷凍庫に長時間入れておかないでください。
  • 直射日光に長時間あてないようにしてください。
  • 長時間水の中に放置しないでください。
  • 焦がさないようにお使いください。
お手入れ方法
  • お使いのあと、食器用洗剤をつけた
    やわらかいスポンジで洗い、
    やわらかい布で拭いてから、
    風通しのよい場所で自然乾燥(陰干し)してください。
  • かさつきが気になったときは
    香りのうすい食用油を
    やわらかい布に少しふくませ拭いてください。

販売

2018年3月9日(金)午前11時より
「ほぼ日ストア」で数量限定販売(初回販売数90本)。
手づくりのため、生産数に限りがあります。
初回販売数完売後は、入荷次第、販売をする予定です。
くわしくは、このページでお伝えします。