ーー
開発チームのお仕事は、
きっとデスクワークがメインだと思うんですけど、
ハラマキ、いかがですか?
座り仕事の方の腰痛対策にも、オススメです。
私、毎日というほどではないですけど、
わりと巻くほうなんですよ。
どうしてもお腹が冷えたりするので、
冬はハラマキして寝たり、
あと、旅行に持って行ったりとか。
ーー
あ、そうなんですね!
じゃあ、ぜひ『どうぶつの森』のハラマキも
そこに加えてください。
ちなみに、巻くとしたら、どちらのデザインを?
こっち(「
もりのせいかつ
」)かなぁ(笑)。
デザインしてるし(笑)。
ーー
そうですね(笑)。
僕は、こっち(「
とたけけ
」)かな。
つくってて、すごく楽しかったし。
あ、でも、思い入れは
こっち(「もりのせいかつ」)のほうがあるなぁ。
こっちのほうが調整に時間がかかりましたね。
そうそう、
サイズに応じて、いろいろ組み直したりもして。
でも、最終的には、ちゃんときれいに
仕上がって、すごくうれしかったですね。
ーー
たしかに、この「もりのせいかつ」は、
開発チームのみなさんと
何度もやり取りさせていただきましたね。
とくに、ゲームのなかの「雰囲気」が
きちんと再現できるかどうかがポイントで。
そうですね。
ハラマキって、印刷じゃなくて、
編んで絵をつくるじゃないですか。
そういう作業がはじめてだったので
実際に編み上がったらどうなるのか、
まったくわからなかったんです。
でも、かなりきれいに出てくれた。
ーー
はい、本当にうまく仕上がりました。
ハラマキは基本的に2色の糸しかつかえないので、
その制約のなか、微妙な濃淡をつかって
ここまで柄を表現できたのは、
私たちにとってもはじめての経験でした。
こういう表現って、
じつは、うち、得意なのかもしれないですね。
というのも、ゲームの開発って、
「制約のなかでいかに表現するか」ということが
いつもテーマだったりするので。
ーー
あーーー、なるほど!
いや、ほんとう、そう思いました。
とくに、昔からいるデザイナーは、
そういうことをつねに工夫しているんです。
たとえば、最初に出たゲームボーイって
カラーじゃなくて白黒だったんですよ。
そのとき、どうしても影を
「半透明」で表現したいんだけど、
スペック的にそれができないので、
黒い影をチカチカ点滅させて「半透明」に見せたり。
意外なところで、そういう経験がハラマキに(笑)。
そうそう(笑)。
そういうふうに、制約を逆手に取るって、
わりと好きなんです。
今回作業を担当した高村も、
NINTENDO 64の頃から
ずっとやってますから。
はい。ここに入った当時は、
ルイージをドット絵で描いたりしてました。
そう、編み物で絵を表すのって、
ドット絵の表現とすごく近いんですよね。
昔のドットの知識がこんなところで
活きるとは思わなかったです。
ーー
あーーー、そうかそうか。
まさか、こんなところで
ドット絵のスキルが役立つとは(笑)。
ーー
具体的には、どういう風に役立ったんでしょう?
たとえば、ここの、とたけけの顔の周りのライン。
こういう微妙なカーブをきれいに見せるのって、
「編み目、何個飛びでずらしていくか」
っていう技術があるわけですよ。
1、2、1、2、2とかね(笑)。
そうなんです(笑)。
だから、このカーブ、
実作業は新人さんにやってもらったんですけど、
「この間隔で曲げていったら、
こういうきれいなカーブに見えるから」って
教えながら進めていきました。
「ここ、一見、出っ張ってるように見えるけど、
この出っ張りをなくしたら、
遠目で見たときに丸く見えないから」とか。
ーー
へぇーーー。
うまい人はうまいんですよ。
ーー
いや、それで納得したんですけど、
やっぱり、デザインしていただいた2種類のハラマキ、
いつもより、曲線の表現が滑らかな気がするんですよ。
たとえば、イラストレーターさんと
ハラマキをつくるときって、
だいたい原画を描いていただいて、
それをニットのデザインに落とし込んでいくんです。
そこで原画の線なんかを再現するのに
いつもすごく苦労するんですが、
今回、任天堂さんにデザインしていただいた曲線は、
ほんとうに滑らかで。
得意分野ですから(笑)。
一応、伸縮の感じもちゃんと計算して、
そのまま編んでいただければ
ピッタリになるようにデザインして、
その通りにつくってもらったので。
ーー
はい。ハラマキを生産している
白倉ニットさんがおっしゃってたんですけど、
細かい表現がすごくやりやすかったそうです。
よかったです。
ーー
‥‥あの、今後、ほかのデザインで悩んだら、
相談にのっていただいていいですか?
一同
(笑)
ーー
この曲線の「滑らか感」を、教えてもらいたいです。
あはははは。
でも、この、とたけけは
すごくいい仕上がりですね。
2色で映えるデザインだし。
そうですね。
ーー
とたけけさんの、
鼻のテカリ、湿り気も表現されているような。
そうですね。
あとこれは、リバーシブルにしたら、
おもしろいかなと思ったんですよ。
ーー
あ、なるほど。
あー、裏返すと、また違った感じになるね。
ちょっと悪い顔になるかも。
とたけけは、目とか眉毛が実は非対称なんですよ。
ーー
え?
そうなんですよ。これ、左右を対称にしたら、
とたけけにならないんですよ。
ーー
あ、本当だ。右と左が微妙に違いますね。
え? これは、このハラマキがということではなく?
とたけけは、ぜんぶ左右非対称なんです。
1作目の『どうぶつの森』から左右非対称で。
ーー
えーーー。じゃあ、64版から。
そうなんですよ。
でも、あんまり知られてなくて。
だから、他社で企画された商品を監修すると、
皆さんだいたい最初は左右対称でつくっておられますね。
ーー
し、知らなかったです(笑)。
それは、ゲームに登場するキャラクターの顔は
みんな左右非対称にしてあるというわけではなく?
いえ、とたけけだけです。
ーー
そうなんだー。
ああ、知らなかったですー。
左右対称にすると、
とたけけの味わいにならないんですよ。
ーー
そうなんですねー。
もう、どんどん訊いちゃいますけど、
「もりのせいかつ」の方にいる村民は、
どれが、だれ、というのはあるんですか?
いちおう、元キャラはいます。
しずえと、ハムスターのハムスケ。
リスのももこと、くまのガンテツと。
あ、このネコのシルエットは‥‥?
マールですかね。
ブーケかな?
ブーケでしょう。
僕もブーケ派です
ーー
あ、解釈が分かれている(笑)。
▲左から、ももこ、ガンテツ、ハムスケ、しずえ、ブーケ (C)2012 Nintendo
むしろ、ご自分の好きなネコのキャラに
思ってもらえたら、それでいいのでは。
ーー
じゃあ、ネコは自由。
はい。ネコは自由(笑)。
ーー
わかりました。ありがとうございます。
なんだか、お話をうかがいながら思ったんですが、
開発チームのみなさん、すごくたのしそうで、
なんというか、仲もよさそうですよね。
一同
(笑)
たしかにそうですね。
仲のいいチームだと思います。
ゲームの性質もあると思うんですよ。
『どうぶつの森』って、現実の時間とリンクしていて、
クリスマスがあったり、
七夕があったりするじゃないですか。
そうすると、ゲームの中の行事を、
実際にチームでもやったりするんですよ。
クリスマスにケーキつくったりとか。
そうですね。
ーー
たのしそう!
七夕に誰かが笹を買ってきて、
みんなで願い事を書いて、チームの席に立てたりとか、
そういうことが起こりやすいチームなんで、
それで仲よしなのかもしれないですね。
だから、仕事以外の会話が生まれやすい
チームだなぁとは思います。
そうですね。
ーー
はーーー。
なんか、そういうチームのみなさんに、
デザインしてもらえてうれしいです。
発売は、いつ頃になったんですか?
ーー
おかげさまで、年内に発売できることになりました。
やっぱりハラマキだから、
寒い季節に間に合えばいいなと思っていたので、
年内になってよかったです。
ーー
そうですね。色々とご無理を聞いていただいちゃって。
年末にお届けできる感じです。
お正月のプレゼントに(笑)。
ーー
親戚の子どもたちにあげたら人気者になれるかも。
友達も、「娘に、とたけけ買ってあげる!」って
張り切ってました。
子どもさんだけじゃなくて、もちろん、大人の方もね。
身に着けて、会社の更衣室で着替えてたら、
隣の人がびっくりするかもしれませんよね。
ーー
「あのー、とたけけですか?」って、
話のきっかけにもなりますよ。
実際、温泉や銭湯の脱衣所で話しかけられることも、
ありますからね。
「それ、ハラマキなの?」って(笑)。
じゃあ、銭湯に行って、手売りしようかな?(笑)
「今なら新品があるんですけど、どうですか?」
って(笑)。
ーー
わははは。
今日はどうもありがとうございました!
(おしまい。
任天堂のみなさん、ありがとうございました!)
2014-12-17-WED