hobonichi gokigen haramaki
MEISEN FROM
大人気だった前回の
「冬のほぼ日エアライン」にひきつづき、
「ほぼ日ごきげんハラマキ」にも、マリンバ奏者で、
アンティーク着物コレクターとしても知られる、
通崎睦美さんプロデュースの
「MEISEN from KYOTO」シリーズが登場します。
古着の銘仙をえらぶときにとくに心がけていることや、
今回のハラマキやブランケットのもとになった
銘仙のことなど、
京都のご自宅で、ゆっくりお話していただきました。


通崎睦美さん
ほぼ日 前回の「冬のほぼ日エアライン」で、
周りの人から何か反応はありましたか?
ツウザキ ありましたね。
中国に留学している陶芸家の友達が
もともと「ほぼ日」のハラマキを巻いていて、
前回も、買おうと思ってページをひらいたら、
私がいたのでびっくりしたと連絡してきてくれました。
陶芸は、土をこねたり重労働なので、
腰をかがめているでしょう。
だから、ハラマキをしていると、
腰が楽になるみたいですよ。
ほぼ日 読者の方からも、
腰痛にハラマキが効くというメールを
いただくんですよ。
ツウザキ 雑誌の編集者の方も、
取材で寒いところに行ったりした時に
役に立ったとか、
いろいろなところから反響がありました。
ほぼ日 ところで、前回、はじめて
ツウザキさんのコレクションの銘仙が、
ハラマキやブランケットになりましたが、
その印象はいかがでしたか?
ツウザキ もはや、もとが着物であったことは意識していませんね。
どれも素敵な「ハラマキ」そして「ブランケット」。
面白いものができたかなと自画自賛しています(笑)。
ほぼ日 前回のツウザキさんプロデュースの
「MEISEN from KYOTO」のシリーズは、
人気ランキングでも1位でした。
大好評の前回にひきつづき、
今回ハラマキやブランケットのデザインをするにあたって、
何か心がけたことはありますか?
 
前回、人気ランキング
1位の「アブストラクト」
のハラマキ
ツウザキ 前回は、継続して、また夏にもやるっていうことを
全く想定していなかったものですから、
私のコレクションの中で、
着物としても魅力的な柄を、
「これぞ!」という気持ちで選びました。
言ってみれば、
「うちのエースを出します」みたいな気分でしたね。
ですので、デザインをしているときから、
自分にとって力強い感じの手応えがありました。
しかし、今回のデザインを考えるにあたって、
前回と同じ発想で柄をえらぶと、
どうしても、前回のデザインの方がよかったなあ、
ということになってしまうと思ったのです。
コレクションはどんどん増えるわけでもないですから、
前回で、すでにいいものを出していると、
どうしても、2番手、3番手になってしまう。
ですので、今回は、より、
『ハラマキにしたら、どれだけかわいくなるか。』
という観点にしぼり、改めて銘仙を見ていきました。
言ってみれば、例え着物だと平凡であっても、
『ハラマキになったときに、より魅力が増す柄は?』
そんなえらび方をしたつもりです。
ほぼ日 ツウザキさんのコレクションの中では、
エースじゃないのだけれど、
ハラマキになった時点でエースになれるような柄、
ということですね。
ツウザキ はい。
たとえば、「パイナップル」の柄は
もともと私のコレクションの中では、
ちょっとめずらしいタイプといいますか、
落ちこぼれ的な存在だったんですよ。
ほぼ日 どういうところで、落ちこぼれてしまったのですか?
ツウザキ 私は着られる銘仙、
状態のいいものしか買わないようにしています。
私が普段買っている銘仙は、
古着といっても、
基本的にほとんど着てない、未着用のものがほとんどです。
でも、あの「パイナップル」の銘仙は
着た形跡がありありと見えるものです。
わかりやすく言えば、
ちょっとくたびれていた、という感じかな。
そういうものって、私のコレクションの中では、
あるかないかくらいの珍しいことです。
ほぼ日 前回のインタビューで
ツウザキさんは、
「買い物は、買って着るという実践が大事だ」
とおっしゃっていましたよね。
ツウザキ はい。
買い物は、ウィンドウショッピングではなく、
選んだものに実際お金を払い、手に入れ、
それを使うことではじめて、勉強になります。
失敗はイタイし、それは次に買う時の慎重さに繋がります。
資金に余裕があれば、
気軽に買えるということもありますが、
資金が少ない者は、より吟味して買うわけですから、
まさに真剣勝負。
目をこやさざるをえません。
ちょうど古着に興味を持ちはじめた頃、
たまたま近所の幼なじみの家がやっていた、
古着の業者市に出入りさせてもらう、
というラッキーな経験も積みました。
魚を競り落とす時のように、
かけ声を掛けて着物を競るのです。
そこに通いながら、
大量の着物と業者の人たちが競り落とす様子を見ていたら、
だんだんと
「これは、こういう質のものだから、
 いくらくらいで競り落とされるな」
と物の価値がわかるようになっていきました。
ほぼ日 そういう中で「くたびれていた」という
パイナップルの銘仙を買ったのは、
どういう理由からなのですか?
ツウザキ とにかく、なぜか、この「パイナップル」の銘仙が、
ひっかかったのです。
ほんとに、なぜか。
いつもは、柄がめずらしい、というだけの理由では
買わないようにしています。
めずらしい、だけでなく色合いやデザインに魅力があって、
状態もいい、という条件が揃わないと、
うちの箪笥にはいれません、という感じ。
この銘仙は少しくたびれているし、
色ももうひとつ冴えない。
着ることはないだろうな、と思いつつ、
でも、気が付いたら買っていました。
まさに何かの「ご縁」があったのでしょうね。
今回、ハラマキの柄を考えているとき、
このパイナップルの模様が
ふと思い浮かびました。
色を明るくしただけで、
柄も活き活きとしたように思います。
なかなかの出来映えのハラマキと並べてみると、
冴えないと思っていた着物の色も、
なんだか落ち着いたいい色に見えてくるから不思議です。
私のコレクションとしては、
一度も表舞台に出たことがなかったのですが、
今回、ハラマキの題材として、
日の目を見ることができました。
こんな晴れ舞台に出ることができて、
着物も喜んでいるような気がします。
 
「パイナップル」柄の銘仙の着物
ほぼ日 前回のインタビューでもおっしゃっていましたが、
ツウザキさんは、銘仙の古着を購入されるとき、
デザインで決めるとおっしゃっていましたよね。
ツウザキ そうですね。
最初は、「銘仙」だとは知らずに、
デザインのおもしろい物、として購入していました。
銘仙の大半は、流行を追って作られているものなので、
どれも気合いが入っています。
そこからは、図案を描いた人たちが
新しいことに挑戦している様子が伝わってきます。
中には気合いが入りすぎて、
失敗している物もあるんですけれど。
でも、いろいろあるところが、銘仙の魅力なのです。
銘仙は主に普段着から
ちょっとしたよそいき着クラスのものでしたから、
本当に雑多なのです。
今の洋服に置き換えて考えるとよくわかります。
ジーンズだって、Tシャツだって、
ピンからキリまであるでしょう。
特徴のない物も多いけれど、
普段着だからこそ遊び心あふれるものもある。
そんな感じです。
ほぼ日 たしかに、「MEISEN from KYOTO」シリーズの
デザインを見ていると、
出典が着物だとは思えないものばかりですよね。
ツウザキ そうですよね。
たしかに、着物らしくないものばっかり買ってますね。
銘仙をよくご存知の年輩の方や研究者の方でさえ、
「こういう柄ははじめて見た」
とおっしゃることがあります。
そう言われると、ちょっとうれしくなります。(笑)
もしかして、当時は斬新すぎて売れなかった物なのかな、
とも思っています。
マニア向けだったとか。
サンプルだけ作って、量産しなかったとか。
こだわりのある人が特注で作ったけれど、
もったいなくて袖を通さなかったから、
新品のまま今に受け継がれた、とか。
いろいろな可能性が考えられますが、
その当時斬新だった物は、時を経ても、
斬新さや新鮮さを放ち続けるのかもしれません。
 
ほぼ日 最後に今回のハラマキのデザインについて、
読者のみなさまにメッセージをおねがいします。
ツウザキ 前回にひきつづき、今回もデザインは
私がプロデュースしている浴衣のデザインや、
著作『ソデカガミ』『通崎好み』の装丁も
担当してくださっている
谷本天志さんに御協力いただきました。
※谷本さんについて、くわしくはこちらをどうぞ。
これから夏にかけて、
少し開放的な気分になるでしょう。
だから、物をつくるときも、
開放的な気分がいいなと思って、
使い手になった気分で、とにかく楽しく作りました。
その分、少し力が抜けた感じの
軽やかな仕上がりになっているのではないかと思います。
普段、ピンク色は身に着けないけれど、なんだか
「うわぁ、ピンクのかざぐるま、かわいい!」
という気分です。
私自身、常々ありそうでないものをつくりたいと、
思っているのですが、
今回もありそうでないハラマキやブランケットが
できたかなと思っています。
あっ、また自画自賛。(笑)
 
ツウザキさん、どうもありがとうございました。
今回の「MEISEN from KYOTO」のデザインは、
前回とガラッとかわって、
かわいらしいラインナップになりました。
もとになった銘仙の柄といっしょにみると、
ハラマキのデザインえらびも、
さらにたのしくなりますね。