2013年のインタビュー(その2) 最終形の気持ちよさ。


最近、手がものすごく慣れてきてて、
手びねりのうつわをつくる作業が速くなりました。
そのせいかもしれませんが、
「手びねりなのかろくろなのか、よくわからない」
とよく言われます。







ろくろを厚めにひいて、
仕上げに削ることもあります。
厚めにひくときは、逆さびきをしています。


▲逆さびきを見せていただきました。

逆さびきは、
うつわの口のほうが下になった状態で、
下から上に絞りながらひいていくことをいいます。
それで、口のところを切ってひっくり返して削ります。
高台は最後につけます。


▲台に接している方がうつわの口。
 なかは空洞です。



▲台から切ってひっくり返すとうつわに。
 少し乾かして、彫刻のように削ります。



▲高台をつくります。

逆さにひいてつくったものは、ちょうど、
ろくろと手びねりの間くらいの感じになって、
ぼくはこのかたちが好きです。


▲高台と合体させます。

手だけで、丸い土のかたまりからつくる手びねりと、
ろくろで厚めに逆さびきしてから削ったものは、
お客さんはほとんど見分けがつかないと思います。
そして、逆さびきはとても手間がかかります。
それなのにどうしてこの方法をとるのか?
逆さにひくと、何がいいのかなあ‥‥
ほとんど見分けはつかないし、
つくる上での効率のよさもいっさいないですね(笑)。



よく同業者の友達から、
「そこまでやって、どんな意味があるの?」
とたずねられますけど、
ただ、最後のできあがりが好きだっていう、
それだけです。
こんな手のかかることは、誰もやってないと思います。



そういうことは、ぼくの作業の中で、
すごくたくさんあることなんです。
同業者から言わせると、
非効率なことばっかりやっています。
でも、ぼくは効率については気にしていませんし、
最終形が気持ちよければそれがなにより、と思ってます。

ずっと自分なりの方法でやってきているので、
合理的なやり方を知らないだけかもしれません。
でも、ぼくはみんなが言うほど
面倒くさいと感じてないんですよね。
たったひと手間加えるだけで、
自分のやりたいことに近づけるかもしれない。
試行錯誤しているうちに、
自分がやりたいかたちが見つかるかもしれない。
そう思ったら、
いろんなことをどんどん試したくなります。



手間がかかっていることや、
人とつくり方が違うことは、
できあがったものに、特には反映されていません。
うつわを見た人がそういうことに気づかないことは、
まったく気にならないですね。
ぼくは本当に手から来るタイプなんです。
手で、こう、動かしているうちに、
頭の中にイメージが湧いてきて、
ひとつ、かたちを作ったら、
「あ、これって、こうするとおもしろいかも」って、
次のかたちが生まれてきて‥‥
作れば作るほど、湧いてくるんです。

今回の「ほぷらす」は、
小どんぶりもありますし、
子どもの飯わんとか、
お父さんの茶わんとか、
お母さんの茶わんとか
使う人を限定して考えてつくったものもあります。


▲小どんぶり


▲左から、父の碗、母の碗、子らの碗

ふだん、ぼくがつくるうつわは、
高台がないのものが多いですが、
今回は高台をつけました。
ごはん茶わんって高台がないと、
なんだかボウルみたいになっちゃいますから。
それはそれでいいんですが、
日本は、うつわを持って食べる文化だから。
こうやって手で持って使うものですからね。
高台をつけるのは、新鮮でしたね。



あと色にバリエーションがあるものもあって、
もとのかたちは同じでも、
緑だったり紫だったり、いろんな色があります。
去年まではなかった、あたらしい色もありますから、
それも楽しんでいただければうれしいです。
ぼくも、つくっていてとても楽しかったです。

2013-05-14-TUE


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HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN