2013年のインタビュー(その3)自分の手から、ものが生まれることが不思議だった。


僕は、すごく欲ばりで、
あれもつくりたい、これもつくりたいっていうものが
いっぱいあります。
だから、自由に「これ」って決めないでやってます。
決めちゃったら、それに縛られちゃうので。
今は器、家具、インテリア‥‥いろいろつくってますね。
「机の足は鉄にしてほしい」とたのまれたら、
鉄で設計デザインをしてつくるとか。
石を彫って削って、木と組み合わせることもあります。
できることは、します。



木を使わない時もありますよ。
たとえば鉄板だけで時計作ったり。
鉄板だけしか使わないと、
「木を使ってないけどいいのかな?」
とは思いますけど(笑)。



でも、やっぱり、
一番悩んで苦しんだ時期を共にしてるのが木だから、
ずっと木を使っていくとは思います。
これから先、いろんな可能性はあるんでしょうけど、
木からは離れないと思うんです。



好きなかたちはありますが、
木目を見ながらつくることはしません。
やきものは、土の表情が出ますけど、
木は木の状態で基本的に完成しています。
考えすぎたり、手を入れ過ぎると、嘘になっていきます。
木目が美しいっていうことを
売りにはしたくないと思ってます。



考えていることは、
もう完成している、木というものを、
いかに殺さずに、ってことだけですね。
「木はどうやったら、一番きれいだろうか?」とか、
「木は一番、どの姿が自然なんやろう?」と。
もう木ができあがってるなら、
それを壊さないように、
ちょっと添えてあげれば、
それでいい、と思ってます。



僕は、木がうつわになっていく、
その過程が好きなんです。
なんていうんですか、こう、
できあがってないところが好きなんです。
あんまりつくりこまずに、
「まだ途中です」みたいな感じが好き。



スウェーデンに行ったとき、
最初の授業がうつわだったんですよ。
白樺の木を自分たちで切って、
それをうつわにするっていう授業なんですね。
その時、彫ってるっていうのが、快感だったんです。



彫るとかたちになるっていうのが、
すごく不思議だったんですよね。
自分の手から、ものが生まれることが、
不思議だったんです。
その時の感覚が、ずっと残ってます。
その時に感じた手の楽しみが、
忘れられないんですよね。



木のうつわ、毎日使ってますよ。
スープとか、コーヒーを飲むようなうつわを、
家族用につくって、みんなで使ってます。



2013-07-29-MON


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