うちにはこうして、囲炉裏がありますから、
ここでよく料理をしますけどね。
土鍋の一番先祖というのは、
ヒトが火を発見して、
縄文って土器の時代がありますよね。
底が尖った土器を、砂の中に埋めて、
たべものを入れて、周りで火を焚いて。
それはつまり、土鍋ですよ(笑)。
だから、土鍋の先祖は縄文だって、
よくいってるんですけど。
その頃の生活は、毎回が新しいというか、
やったことのないことをやっていた感じなんだろうね。
なにかを見つけるたびに。
縄文時代の貝塚掘ったら、
フグの骨まで出ますからね。
トラフグの骨。
肝も食ったんだろうと思いますよ。
だけど、人間は学習する。
金沢にありますよ、フグの卵の糠漬け。
1年間漬けたら、毒が抜けて。
お茶漬けなんかで食べる。
それは生活の知恵ですよね。
フグには毒があると知って、
毒を抜く方法を見つける。
そうやっておいしいものをみつけてきたんでしょう。
それぞれの季節季節に、その地方地方に、
やっぱり、うまいもんがありますから。
春の山菜なんか、冬場、グーッと耐えててね、
我慢してたものが、いっぺんに出る。
香りなんか、すごいでしょう。
ふきのとうなんかね、
奉書焼きっていって、
和紙を濡らして包んでね。
囲炉裏の炭で、
和紙がちょっと黒くなるまで焼くんですよ。
蒸し焼きですね。
少し苦味が飛んでね、
それで、塩か味噌か、ちょっとのせたら、
もう春の一番の味です。
それからカンゾウ(甘草)ね。ノカンゾウ。
カンゾウって甘いんですよ。
これもおひたしにしたり。
それに、ギボシの新芽。
ウルイって名前で売ってますわ。
それと、ハナザンショウ(花山椒)ね。
それからヨモギ。
この辺は、山菜はなんでも、いろいろあります。
一番寒いときは、セリ。
ノゼリとタゼリがありますけど、
タゼリがね、軸がピンク色で、香りがよくて。
それがまた、おいしいんですよ。
昔、お袋と2人で生活してたころ、
その辺を跳び回ってる鶏、潰してね、
セリだけですき焼きするわけ。鶏すきを。
それはもう、うまいですね。
魚はね、春は桜鯛。
大きな土鍋で、鯛飯を炊いたら、うまいですよ。
桜鯛はね、また姿や色もきれいなんですよ。
蛤もね。
おいしいですよ。日本の蛤はね。
香りがあって。
尾鷲で、イタリーではスカンピと呼ばれている
手長海老が、30センチ以上の大きいのがとれる。
生きているやつを、囲炉裏で塩焼きにしたらね、
これはもう、伊勢海老よりうまいね。
夏は鮎。冬は猪、鴨。
旬の、おいしいものを追いかけてると、
一年が早い(笑)。
いや、そういう意味ではここは豊かですよ。
だけどね、それは場所だけのことじゃないですよ。
自分で料理しなかったり、
パック入りのものですませたりする人が多いでしょう?
自分で素材を知って工夫しないと、
おいしく食べられないのよね。
たとえば、魚でも、1匹買ったら、
頭をこう使ってとか、あるでしょう。
私だったら、おいしそうな天然の鰤なんて、
「頭だけくれ」っいって、
それをブリ大根するのにな(笑)。
おいしいじゃない?
それを、好きなうつわに盛って。
それとね、我々くらいの歳になると、
そんなに量は要らないんですよ。
おいしいものが、ちょっとあったらいい。
あとは、お酒を(笑)。
(おわり) |