真っ白いＴシャツに「i TRY!」。
文字をさかさにプリントした「さかさブラック」は、
いつでもじぶんに言い聞かせられるように。
手書き文字の「Handwrite」は、
やわらかで、かわいらしい印象になりました。
赤い文字でプリントした「レッド」は、
力強く、周りの目にも飛び込んできそうです。
６月24日の発売を前に
デザインをお披露目できたことですし、
せっかくなのでＴシャツが生まれた背景や、
糸井重里とほぼ日乗組員がやりとりした
「TRY!」のエピソードにお付き合いください。
――2020年４月。
新型コロナウイルスの感染拡大により、
史上初めての緊急事態宣言が発令されました。
およそ２か月にも及んだ外出自粛期間は、
当たり前に感じていた日常を
がらりと変える力を持っていました。
外出時のマスクに、手洗いうがいの徹底。
「三密」を避けるソーシャルディスタンス。
テレワーク、オンラインミーティング。
ぎこちなくはじまった習慣や、
テレビで連日流される感染者の数に、
いちいち戸惑ってばかりの日々でした。
「ほぼ日刊イトイ新聞」はもともと、
日曜だろうとお正月だろうと
22年間、毎日休みなく更新を続けてきたので
自宅から出られないような事態にも、
比較的対応できるメディアです。
それでも、人が集まるイベントを中止にしたり、
販売予定だった商品の発売日を延期したり、
対面での取材や撮影を控えたりと、
それまで準備を進めてきた計画も
変更を余儀なくされました。
糸井重里は「ほぼ日」のリーダーとして
社内の誰よりも危機感を持ち、
頭の中にある考えを、ことばにして伝えました。
「ぼくらが止まれば、ウイルスは止まる。」
「おちついて、やることをやる。」
「留学だと思って生活してみよう。」
「じぶんの頭で考える。」
ほぼ日乗組員全員に向けて、
おそらく、じぶんにも向けて、
しきりにこう呼びかけたのです。
「TRY! TRY! TRY!」
糸井重里が「ほぼ日」で毎日続けている
エッセイ「今日のダーリン」の中で、
５月８日にこのようなことを書きました。
１か月で収束すると見られていた、
緊急事態宣言の延長が決まった時期です。
・ラグビーだって、「トライ」のほうが高得点なんだよね。
トライ、つまり「試す」「挑戦する」ということ。
「試す」がなかったら、どれだけ練習していても、
それは単なる繰り返しになってしまう。
微妙にちょっとずつ上手になることはあるだろうけれど、
もともとあった価値を増やすことも減らすこともない。
たとえば、同じ文章を、何度も読んでみようとする。
一度は、さらっとただ読んだだけだれど、
二度めには、もうちょっとセリフを読み分けてみようか。
これは「トライ」が加わっていることになる。
やってみて、うまくいかなかったとしても、
「試す」があったぶんだけ、なにかを得られた。
三度めは、逆にもっと棒読みのようにしてみるか。
これも試しているから、なにかちがうなと思うだけでも
少し価値を加えたことになる。
なんにもむつかしいことじゃない。
「トライする＝試す」ということは、
失敗してもいいのだから。
問いに対して、決まりきった正解を言ってるだけでは、
そこに「トライ」はない。
たとえ正解でなくても、
正解以上に、なにかすばらしいものが、
ほんとはいちばんほしいものなのだ。
「トライ」があって、また「トライ」があって、
さらに別の「トライ」があって、
次々に「トライ」を繰り出せることが才能だし実力だ。
余計なことに見えるような
「ああしてやろうこうしてやろう」ということも、
ないよりあったほうが絶対にいい。
成功か失敗かということばかりを問題にして、
「トライ」を出しにくい環境が、いちばんいけない。
決まっている答えをたくさん知っている人が、
さらに「トライ」が大好きなら、それでいいのだけれど、
正解の好きな人は、わりと「トライ」を好きじゃない。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
TRY!TRY!TRY!って大書したTシャツをつくろうかと思った。
その日、「今日のダーリン」を読んだ
読者のみなさんからの感想メールに
「TRY! TRY! TRY! Tシャツ、ほしいです！」
という声をたくさんいただきました。
そしてさっそく「TRY!」を合言葉に
オリジナルデザインのＴシャツを
製作することにしました。
糸井重里からの指示はこうです。
「速度感にも、デザインにもTRY! してください。
こういうときにもTRYを入れていく！
失敗でもいいから」と。
ほぼ日の急造「TRY!」チームは、
ひたすら「TRY! TRY! TRY!」を考えます。
糸井から投げられたボールを打ち返すように、
自粛で溜まったストレスを発散するように、
１日で10個の案を考えて、
３つまで絞ったものを糸井に提案しました。
糸井からの返事は、すぐでした。
「TRY! 一発だけのやつも、つくってみてくれる？」
「冗談を言えるような感じの
デザインにもTRY! してください」
オンラインでやりとりを重ねるうちに、
「これだ！」という３つのデザインで
製作へと進めることになりました。
糸井からのGOも出たことで、
「さあデザインの入稿だ」となったのです。
ところが‥‥。
「TRY! TRY! TRY!」Ｔシャツの
生産に向けて考えを進めた矢先のことでした。
「TRY! TRY! TRY!」で検索したところ、
わたしたちが作ろうとしていたＴシャツのように、
「TRY」または「TRY TRY TRY」と
プリントされたＴシャツの画像が出てきたのです。
アイディアをもとにものづくりをしてきたわたしたちが
正直にお伝えするような
過程ではないかもしれませんが、
これにはびっくりしました。
デザインに込めた気持ちとは関係なく、
後からつくった「ほぼ日」が
まねをしたと思われるかもしれません。
そこで、速度感を重視してはじめた
プロジェクトもいったんストップしました。
１週間の時間をおいて、
なんとか既存のデザインとかぶらない
「TRY!」のアイデアを出せないか、
考え続けていました。
そこでたどり着いたデザインは、
小さな「TRY!」がたくさん集まって、
大きな「TRY!」をつくっているというもの。
このデザインを糸井にメールで送ると、
このような反応が返ってきました。
「感想は、『追い詰められて、ここに至る』でした。
最良の答えを出そうとすると、
こうなるのかもしれません。」
つまり、このデザインでは
まだ「TRY!」が感じられないということ。
糸井のメールは以下のようにつづきます。
イトイです。
社内にあったモックも見ました。
感想は、「追い詰められて、ここに至る」でした。
最良の答えを出そうとすると、こうなるのかもしれません。
ぼくは、もう、ほぼ日なら
「ことば」でつくればいいんじゃないかと思いました。
いつもトライしろ、おれよ！
みたいなことを英文字にするのはどうでしょう。
無教養主義者であるわたくしなどが思いつくのは、
TRY ALWAYS!
だとか、
ANYTIME TRY!
だとか、そんなようなまちがった感じのものですが、
おそらく正解は、ちがうんだと思います。
I TRY!
ならまちがってないような気もします。
あっ、あんがい、これ、いいかも。
主語があることで、ぐっと前にでるね。
いまフーツラボールドで文字組みにトライしてみたら、
すんばらしい！！！
小文字のi と、! が点対称になるんだ！
いま、あわてて送ります。
糸井が最後にひらめいたアイデアで、
ようやくたどり着いた「i TRY!」。
最終的に３つのデザインができて、
生産にこぎつけるところまできました。
いよいよ、発売です。
会えなかったから生まれたことば、
「TRY!」に励まされるように
「i TRY!」のＴシャツが生まれました。
気軽に出歩いたり、人に会ったりすることが
まだまだ難しそうな夏がやってきます。
こんな時だから「iTRY!」。
最近、トライしてますか？
2020-06-22-MON
