「気仙沼ニッティング」の法人化が 正式に決まってから数日後のこと。 いつもの「気仙沼ニッティング・定例ミーティング」が、 しずかなお祝いの場となりました。 御手洗瑞子と糸井重里による、 座談会のような、会議の記録をここに残します。 聞き手は、プロジェクトをいっしょに進めてきた ほぼ日乗組員の山川と山下です。 |
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─── | いよいよですね。 |
御手洗 | いよいよです。 6月6日、気仙沼ニッティングが、 株式会社になります。 |
糸井 | 最初からこうするつもりで始めたことですが、 「頓挫させません」という決意があったから、 ここまできたと思うんです。 スケールの話はともかく、ここまでやれました。 |
御手洗 | 規模はまだちいさいけれど、 オーダーメイドのカーディガンをお届けできました。 |
糸井 | 車のエンジンで言うとさ、 キーを回してもセルモーターが回ってるだけで エンジンがかからないことがあるじゃないですか。 キュルルル‥‥キュルルル‥‥って。 それだけで終わることは、山ほどあるんですよ。 だけどもこれは、ゆっくりでも、 ドゥルン‥‥って回りだした。 すばらしいと思います。 ちいさな回転でもエンジンさえかかればそれは、 「どこまでも走って行けるんだ」 の始まりじゃないですか。 |
御手洗 | ええ。 |
糸井 | だから一応、 内燃機関に点火はしたんだと思うんです。 |
御手洗 | そうですね、まだまだゆっくりですが。 |
糸井 | あとはそう、 たまちゃんとこうして定期的に話してて、 時々思い出さなきゃいけないなぁと思ってるのは、 「このプロジェクトの話をすると、 みんながすごくおもしろがる」 ということですよね。 |
御手洗 | おもしろいことをやっている実感を 忘れちゃだめだと。 |
糸井 | この話なら、外国人も日本人も、 「それはおもしろいし、やれるんじゃない」 と言ってくれる。 それを語ってくれるときの相手側の膨らみ。 あの感じが、いちばんの燃料ですよね。 |
──── | たまちゃんに質問。 独立して株式会社になって、 今後の気仙沼ニッティングの展望はどうでしょう? |
御手洗 | たぶん、 ものすごくいろんな可能性があるんだと思うんです。 この会社が持っているポテンシャルは すごく大きいですよね。 そのタネをどこまで伸ばしていけるか。 わたしというちいさな器でタネが成長しないと もったいないので、 そこはちゃんとしないといけないなと‥‥ |
糸井 | お、謙虚ですね(笑)。 「いっちょう、やってやりますよ!」とか、 もっと威勢よく言うのかと思った。 |
御手洗 | いやいやいや(笑)、ほんとに謙虚に思うんです。 そりゃあ、すごく大きな夢だって見ますよ。 でもそれと同時に目の前には ちいさな課題が山のようにあるので。 |
糸井 | うん。あるよね。 ひとつひとつ解決っていうのは、 これからもずっとそうなんだと思う。 ここまでだって、たいへんなことだらけだった。 |
御手洗 | たいへんなことがいっぱいの中にも やっぱりうれしいことがあって。 いちばんは、編み手のみなさんがどんどん やる気になってくださることでした。 |
糸井 | ああー。 |
御手洗 | 次々にセーターを編んで腕を磨いたり、 お客様にお手紙を積極的に書いたり。 ご自分から考えて、 動いて、 たのしんでくださるんです。 |
糸井 | いいね。うれしいね。 だれかが一所懸命、たのしく、なにかに取り組んで、 その様子が大勢の人の心に響くっていう話は、 ぜんぶ聞いていて気持ちがいいですね。 そういう話をぼくは無意識で ずっと採集していたような気がするんですよ。 ほら、「葉っぱビジネス」とか。 |
─── | 上勝町の「いろどり」ですね。 |
糸井 | すごいんだよ、 町のおばあちゃんたちが葉っぱを拾って、 それを料理のいろどりとして売るビジネス。 あれも「タダでいいよ」になると止まるんだよね。 ちゃんと売れば、市場ができて、循環する。 そうするとおばあちゃんたちは 孫がマンション買うときの頭金を出してあげたり、 そういうことができるようになる。 |
御手洗 | すごーい! |
糸井 | すごいでしょ。 お年寄りがみんな、にっこにこしてますよ。 |
御手洗 | そういえば、編み手の方のなかに、 気仙沼ニッティングのFacebookページを 見たいからと、iPadを買った人がいて、 にこにこしてました。 |
糸井 | そうなるんですよ、上手くいってると。 |
御手洗 | ああー、そういうことが、 どーんどんあるといいなぁ。 |
糸井 | もちろんありますよ。 そうなっている最中なんです。 やっぱり、最初のうちに描いた漠然とした流れを ぼくらはぜんぜん譲ってないですよね。 それがよかった。 「こうなるといいな」を譲らなかった。 細かい修正はもちろん繰り返したけど、 たいせつな部分は守ってきました。 志を大きくスタートしたのが重要なんです。 ほどほどでよかったのなら、 わざわざアラン島に行く必要はなかったわけで。 |
▲アラン島にて。「いいものを編む会社。」より。 |
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御手洗 | アラン島に行ってから1年しか経ってないんですよ、 去年(2012年)の6月でしたから。 あのころはまだ糸もないしデザインもない、 編んでくれる方も決まってない。 その状況で「年末に販売しよう」というのは かなりチャレンジングな目標に思えました。 でも、ちいさいながらもそれが本当にできた。 ‥‥糸井さん、この前ね、 青森のお客様が採寸のために わざわざ気仙沼に来てくださったんですよ。 |
糸井 | へええー、それはうれしいね。 |
御手洗 | すっごくうれしかった! |
─── | たまちゃん、気仙沼での生活はどうですか? 斉吉商店さんでの下宿生活。 |
糸井 | 下宿させてもらおうって思いついたのは俺だからね。 |
御手洗 | おかげさまで、 ほんとによくしていただいています。 |
糸井 | ね、最高でしょ? |
御手洗 | なんだか、あの‥‥ この前はじめて聞いたんですけど、 秋につくりはじめる斉吉さんの新しいおうちに、 どうやら私の部屋があるらしいんですよ。 |
一同 | えええーーーーー! |
御手洗 | いずれお孫さんの部屋になるらしいんですけど‥‥。 |
糸井 | たまちゃんの部屋ができる‥‥ すーばらしいね(笑)。 |
─── | 話を戻しましょう。 会社になるんですね、いよいよ。 |
御手洗 | 会社になります。 |
─── | 「ほぼ日刊イトイ新聞」の中にあった記事も、 新しいウェブサイトに引っ越して。 |
御手洗 | はい。 販売も、これからは新ページで行います。 |
糸井 | あれですね、「ほぼ日」へやってきた人にも ずっとご案内はしたいので、 「入口」になるような場所は残しておきましょう。 |
──── | はい。 いままでの「気仙沼ニッティング」のページを (つまりご覧にっているこのページ) ずっと残して、 そこからご案内できるようにします。 |
御手洗 | なにとぞよろしくお願いいたします。 |
──── | おおー、なんだかよその人みたい(笑)。 |
糸井 | 社長だから(笑)。 |
御手洗 | 「いいものを編む会社」というコンテンツがあって、 ついに本当に、 株式会社になりました。 |
糸井 | その会社が上場できるようになったりしたら、 すごいね。 |
御手洗 | 海外に支社ができたり。 |
糸井 | うん。 海外とはつながる必要がありますよね。 |
御手洗 | あります。 そういうポテンシャルがあることは、 ほんとに感じる。 この前ある場所でイギリスとか いわゆる編み物の本場出身の人がいて、 その人たちに見せたら 「デザインがすばらしい」って言われたんですよ。 やっぱり、通じるんだと思って。 |
糸井 | だから、 三國万里子か否かがどれだけ重要かということです。 |
御手洗 | Mariko Mikuni。 |
糸井 | マリコ・ミクニじゃないとだめなんだよ。 |
御手洗 | はい。 三國さんのデザインを受け取る人のよろこびは とくべつなものだと思います。 お客様たちはもちろん、 それを編む、編み手の人たちも。 |
糸井 | そういう感じが広く行き渡るというのは、 ぼくのひとつのユートピアなんですよ。 つまり、作り手と買い手が その両方の気持ちを自分の中に持ってる状態。 お互いに思い合ったら、 ただただ安くしろという人もいなくなるし、 なによりも敬意が生まれるじゃないですか。 |
御手洗 | はい。 ただ物を売るというだけではなくて、 人対人でお付き合いさせてもらえるお客さんに こんなちいさい会社ながら会えたというのは、 スタート地点として ほんとにありがたいと思っています。 |
糸井 | 謙虚だなぁ(笑)。 どうしたのたまちゃん、きょうは?! |
御手洗 | いやいや(笑)、 あの、ほんと、わたしがんばりますので! |
一同 | (笑) |
─── | 「株式会社 気仙沼ニッティング」は、 当たり前ですが、気仙沼の会社として 登記するわけですよね。 |
御手洗 | はい、本社は気仙沼です。 |
─── | 気仙沼に税金を納めていく会社ですね。 |
御手洗 | ええ。そういうことになっていくはずです。 |
糸井 | ああー、払いたい。 税金をたくさん払いたーーーい! |
一同 | (笑) |
─── | たまちゃん、おめでとう! |
御手洗 | ありがとー! |
糸井 | おめでとう。たのしくいきましょう。 |
御手洗 | はい。 ありがとうございます! |
(ほぼ日での気仙沼ニッティングに関する連載は ひとまずこれで終了となります。 ここまでの経緯を見ていてくださったみなさん、 抽選販売にお申し込みくださった方々、 心より、ありがとうございました。 新しい「気仙沼ニッティング」のページを これからも引き続き、よろしくお願いします!) |