HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

Miknits 2019

2019.8.28 WED OPEN

三國万里子さんのお店
「Miknits(ミクニッツ)」がオープンします。
今年の特色は、カラーバリエーションが増えたこと。
「きれいな色を着るたのしさを広げたい。
毛糸やボタンなど素材も増えたので、手芸屋さんとしても
お使いいただけたらうれしいです」と三國さん。
編みものがはじめての人も、大歓迎です。
本日は、予告の最終回です。

Preview03
今年のMiknitsには
「オーバルのヴィンテージウッドボタン」
「コロゾナットのヴィンテージボタン」
という2種類のボタンが登場します。
ニットにとても合う
このボタンを仕入れてくださったのは、
東神田でヴィンテージボタンのお店
CO-(コー)を営む小坂さんです。
三國さんといっしょに、お話をうかがいました。
ーー
今日はあらためてボタンについて
おうかがいできれば、と思っています。
小坂
よろしくおねがいします。
三國
こちらの店舗にはじめてうかがったのは、
3年前でしたっけ。
その前から個人的にもCO-さんの通販サイトを
利用させていただいてました。
小坂
ありがとうございます。
私、通販のサイトを西荻の事務所で運営していたころ、
「三國万里子」という字を
伝票に書いたことがあります(笑)。
三國
そうだったんですね。
國の字とか、ちょっと難しいですよね(笑)。
その後、Miknitsチームのみちこさんと一緒に
こちらの東神田の店舗に来ました。
普通に客としてお買いものだけして、
「素敵だったなあ」なんて言って。
そのころはMiknitsが
はじまったばかりでしたよね。
ーー
はい。三國さんと一緒におうかがいしました。
Miknitsのオリジナルボタンをつくるために
試行錯誤していた時期だったんですよね。
小坂さんに頼めばよかったんでしょうけど、
ヴィンテージボタンを専門に扱ってらっしゃるから、
無理だろうな、と思い込んでいて。
CO-さんからボタンを仕入れよう、ということも、
まだ話したことがなかった時期でしたし。
三國
うん、ましてやオリジナルボタンを
つくってくださるなんて想像もできなくて。
路頭に迷ってましたね。
小坂
あれ、最初にボタンメーカーさんには
行かなかったんですか?
三國
ボタンメーカーさんではないんですけど、
樹脂やプラスチックで成型するものなら
なんでもつくれる、というところに行きました。
でも、実際に試作していただいたら、
だいぶ値段が高くなってしまったのと、
仕上がりがイメージと違ったんです。
ピカピカした新品のボタンに
自然な落ち着きが欲しいと思っても、
うまく伝えられなくて。
小坂
わかります。
人工的に経年変化の跡をつける、
というのはなかなか難しいですよね。
三國
はい、それで、自分たちでボタンをつくる、
ということ自体が
難しいのかなと思っていたんです。
その後、小坂さんのところでヴィンテージのボタンを
仕入れさせていただいた、
というのが最初のご縁でしたね。
ーー
「こういう感じのボタンはありますか」と聞いたら、
ぴったりのものを出してくださって。
真鍮のヴィンテージボタンで、
2017年に販売したところお客さまにも好評でした。
小坂
はいはい、紳士物のズボンに使われていたボタン。
チョッキなんかによく合うんですよね。
ーー
はい。それで、翌年にはそのボタンをもとにした
Miknitsのオリジナルボタン
もつくっていただいて。
三國
すごく素敵なものができましたよね。
実際につくってくださる方とのやりとりも
大変だったのではないですか?
小坂
そうですね。私が最初に
オリジナルボタンをつくったときも、
思っていたものと仕上がりが全然違う、
ということが何度もありました。
私トンチンカンなことをいっぱい言っちゃうんです。
「アンティークのボタンの本には
こうやってつくると書いてました」なんて言うと、
「そういうやりかたも、機械も、
この世にはもうないんだ」と言われて、
私もかなり勉強させてもらいました。
でも、よかったです。
みなさんが気に入ってくださってることが
わかって、ほっとしました。
ーー
とても好評だったので
引き続き販売する予定です。
そして今年はオリジナルの制作ではないんですが、
三國さんの希望に合うものを
いくつも出してくださって、そのなかから、
「オーバルのヴィンテージウッドボタン」
「コロゾナットのヴィンテージボタン」に決まりました。
小坂
いかがでした?
実はちょっと心配してまして‥‥(笑)。
三國
「オーバルのヴィンテージウッドボタン」は、
ropesのセーターの肩のところにつけてみたら、
とても合っていました。
特に、今回の新色
「フォレストグリーン」にもぴったりで。
小坂
わあ、よかった!
三國
1950年、60年代のアランセーターには
たいてい木のボタンがついているんですけど、
ウッドボタンをえらぶのって案外難しい。
ホッコリしすぎたデザインのものが多いんです。
小坂
ウッドボタンは、むずかしいですね。
民芸っぽくなるというか、素朴すぎちゃう。
三國
つくる側も、ウッドだから素朴感を出そう、
というのを目指しちゃうんでしょうね。
小坂さんが持ってきてくださったのは、
ほんとうにちょうどいいウッドボタンで、
うれしかったです。
もうひとつの
「コロゾナットのヴィンテージボタン」は、
ためしにブルーのボタンを
「kinoko」のセルリアンブルーの
カーディガンにつけてみたんです。
これも、すっごく合ってました。
ーー
このボタン、
一見プラスチックのように見えますが、
よく見たら木目のような柄がありますよね。
三國
そう、色もすごくきれい。
そんなべったりした色じゃなくて、
濃淡があるのは、素材によるものなんですか。
小坂
はい。天然の素材を染めているので
地の色が出てます。
コロゾナットといって
タグア椰子の実からつくられる
19世紀からある素材なんですよ。
船のバラスというんですか、
積荷の重さのバランスをとるために
椰子の実を船底に入れておく習慣があって、
その後、これ何かの材料にならないのかな‥‥
みたいなことからボタンになったらしいです。
三國
そうなんですね。
船の重りだったなんて。
小坂
でも、つくるのも大変だったらしいんですよ。
まず素材が湿気を含んでいるので
カラカラに乾燥させて加工して、
平らにして‥‥というふうに
相当手間がかかるみたいで。
これが実を輪切りにしたものなんですけど‥‥。
ーー
ああ、すてきです。
小坂
あたたかみがあってかわいいですよね。
ただこのコロゾナットのボタンには
どんな染料を使っているのか
今となってはわからないので、
念のため、薄い色のニットには
使わないでいただきたいのと、
お洗濯のときは外して、
クリーニングもだめ、ということを
お伝えしておきたいです。
ーー
色落ちして毛糸にうつっちゃったら
悲しいですもんね。
小坂
そうなんです。
こういうボタンを使うときに
私がおすすめしたいのは、
「鼓ボタン」ともいうんですけど、
ボタン2つを背中と背中で
糸でくっつけておくことです。
それで、カーディガンの両サイドにホールをあけて、
カフスのように留める。
そうすると、お洗濯のときに取り外せます。
ーー
ああー。なるほど!
三國
ただ、ボタンを2つずつとなると、
それなりの重みがでるから、
その部分が下がらないかがすこし心配‥‥。
小坂
あ、背中合わせにつけるのは
同じ重さのボタンじゃなくてもいいんです。
そういう場合は、
片方はちっちゃいボタンを
つけていただいて大丈夫です。
三國
なるほどねえ。
それで思い出しましたけど、
私、アンティークの指輪をはじめて買ったとき、
「どんなふうに手入れしたらいいですか」
と聞いたら、
「ヴィクトリアンの暮らしぶりを
想像しながら使っていただくといい」
と言われたことがあったんです。
「想像しながら」という言葉がいいなあ、
昔の人は衣類を地道に手入れしたんだなあ、
と思いました。それと似ていますね。
小坂
そうなんです。
こういうヴィンテージボタンは、
まだ、洗濯機の存在さえないときに
つくられたボタンなんですよね。
ーー
ところで、今更ですけども、
小坂さんは、どういうきっかけで
このお仕事をはじめたんですか?
小坂
私ですか?
私は、もともと丸の内の会社に勤めていた、
普通の会社員だったんです。
ーー
え、そうなんですか!
そのときは、
ボタンとは全然関係のないお仕事を?
小坂
そうなんです(笑)。
全然関係ない。
でもある日、会社を辞めて
イギリスに1年間行ったんです。
帰ってきてからも毎年行くようになって。
当時、古いものが大好きだったから、
「古いものを買い付ける仕事をしよう」
と思いまして、まず缶を買いました。
そのなかにボタンが入ってたんです。
めずらしいことではなく、
古い缶には、たまにボタンや
クリップなんかが入っているんですね。
でもボタンに何も興味がなかったので
気にもしてなくて‥‥。
その2~3日後にロンドンの
アンティーク街を歩いていたら、
通りすがりの見知らぬおばさんが、
突然手を「はいっ」って差し出して、
「これ、あげる」と言って
ボタンを3個か4個くれたんです。
「‥‥ありがとうございます」
なんて言って受け取って、
ホテルに戻って、何気なく缶を見たら、
そのなかに入っていたものと同じボタンだったんです。
一同
ええっ!
小坂
わっ、これは何か縁があるのかもしれない!
と思って、次の日から
単なる古いもの探しではなく、
ボタンを探すようになりました。
そしたら、すごーくたのしくて。
ちゃんと、ボタンのなかにアールデコも
アールヌーボーも取り入れられてて、
その当時の最新の素材が使われていたんです。
こんなちっちゃいものにすべてが詰まってる。
そう思ったのがきっかけで、
「私、ボタン屋になる」と決めました。
ーー
うわぁ‥‥いい話ですねえ。
小坂
突然何かが降りてきた!
みたいな、勝手な思い込みだけで、
今までやってきました(笑)。
三國
素敵だなぁ。
何かはじめるときに、
思い込みってすごく大事なんですよね。
小坂
思い込みがなかったら、
ここまで続けられなかったと思います。
最初は、ただ面白いボタンを探すことに
熱中していました。
「ボタンなのに、何このつくり?」
みたいなものがたまらなかったんです。
だから、一時期は実用的でないボタンばかり
揃っていたと思います。
今は、前よりは実用的に使えるものもあるかなと、
自分で思っているんですけれど。
ーー
すごく使えますよ。
ほぼ日で開催した「編み会」でも、
CO-さんのボタンコーナーをつくったら、
大盛況でしたね。
お客さまのなかにはボタンが少量ほしいかたとか、
自分の持っているものにつけたいかたが
いらっしゃるようでしたので、
今回からMikinitsではボタンを2個、3個ずつの
バラで買えるようにしようと思っています。
お好きな数、ちょうどいいぶんだけ
ご購入いただけるように。
三國
今年もCO-さんにお願いできてよかったです。
どういうものをつくりたいか、
同じイメージを描けていることが
ほんとうに大事だと思いました。
そして、Miknitsのページで購入できるもの以外にも、
この東神田のお店には素敵なボタンが
たくさんあるので、お近くのかたは、
ぜひこちらにも足を運んでほしいです。
小坂
ありがとうございます。
ありがたいことに、
すでにもう何人かのかたが
来てくださっているんですよ。
そうだ、私、あらためて聞きたかったんですけど、
Miknitsのキットを編んでいるかたが
うちのお店に来てくださったとき、
ボタンのサイズに悩まれることが多いんです。
「このボタンが欲しいけど、
キットに書いてあるサイズと
1ミリ違うから諦めます」
みたいなことをおっしゃるんですね。
でも、数ミリの誤差なら大丈夫ですよね?
三國
編みながらフレキシブルに調整できるので、
全く問題ないです。
それに少し大きめサイズのほうが、
ニットからボタンが抜けにくくていいですよ。
もし心配でしたら、
ボタンホール分のスワッチを持って、
好きなボタンが通るかなあとか、
色に合うかなあとか、
確かめながら選んでいただいてもいいと思います。
小坂
たしかに。
じゃあこれから来てくださる方には、
そう言っておすすめしますね。
今日はそのこともわかってよかったです。
ーー
ボタンひとつで、ニットの
雰囲気もすごく変わりますよね。
今日はありがとうございました。
これからもどうぞよろしくおねがいします。
三國
またうかがいますね。
ありがとうございました。

オーバルの
ヴィンテージウッドボタン

(2個)
583円(税込)
(3個)
874円(税込)

「ちょうどいいデザインのウッドボタン」
と三國さん。アラン系のニットと相性ぴったりです。

コロゾナットの
ヴィンテージウッドボタン

(2個)
1,188円(税込)
(3個)
1,782円(税込)

自然素材「タグア椰子」の実からつくられたボタン。
後染めにより表面の濃淡があります。

Miknits 2019

2019.08.27 TUE AM11:00
プレオープン

2019.08.28 WED AM11:00
発売

2019.08.27 TUE  AM11:00 プレオープン

2019.08.28 WED AM11:00 発売

styling : Miyoko Okao photo : Seishi Shirakawa, Satoru Okita(item)
hair & make : Chinone Hiromi(Cirque) Model :Jessica

予告スケジュール きれいな色を着たいから。 モヘアやカシミヤにも あかるい新色が増えました。 Miknitsの世界に新しい風。 グラフィックデザイナー鈴木哲生による ワッペンとステッカーが初登場。 「こんなちっちゃいボタンに、 すべてが詰まってる」