「オーバルのヴィンテージウッドボタン」
「コロゾナットのヴィンテージボタン」
という2種類のボタンが登場します。
ニットにとても合う
このボタンを仕入れてくださったのは、
東神田でヴィンテージボタンのお店
CO-(コー)を営む小坂さんです。
三國さんといっしょに、お話をうかがいました。
- ーー
- 今日はあらためてボタンについて
おうかがいできれば、と思っています。
- 小坂
- よろしくおねがいします。
- 三國
- こちらの店舗にはじめてうかがったのは、
3年前でしたっけ。
その前から個人的にもCO-さんの通販サイトを
利用させていただいてました。
- 小坂
- ありがとうございます。
私、通販のサイトを西荻の事務所で運営していたころ、
「三國万里子」という字を
伝票に書いたことがあります(笑)。
- 三國
- そうだったんですね。
國の字とか、ちょっと難しいですよね(笑)。
その後、Miknitsチームのみちこさんと一緒に
こちらの東神田の店舗に来ました。
普通に客としてお買いものだけして、
「素敵だったなあ」なんて言って。
そのころはMiknitsが
はじまったばかりでしたよね。
- ーー
- はい。三國さんと一緒におうかがいしました。
Miknitsのオリジナルボタンをつくるために
試行錯誤していた時期だったんですよね。
小坂さんに頼めばよかったんでしょうけど、
ヴィンテージボタンを専門に扱ってらっしゃるから、
無理だろうな、と思い込んでいて。
CO-さんからボタンを仕入れよう、ということも、
まだ話したことがなかった時期でしたし。
- 三國
- うん、ましてやオリジナルボタンを
つくってくださるなんて想像もできなくて。
路頭に迷ってましたね。
- 小坂
- あれ、最初にボタンメーカーさんには
行かなかったんですか?
- 三國
- ボタンメーカーさんではないんですけど、
樹脂やプラスチックで成型するものなら
なんでもつくれる、というところに行きました。
でも、実際に試作していただいたら、
だいぶ値段が高くなってしまったのと、
仕上がりがイメージと違ったんです。
ピカピカした新品のボタンに
自然な落ち着きが欲しいと思っても、
うまく伝えられなくて。
- 小坂
- わかります。
人工的に経年変化の跡をつける、
というのはなかなか難しいですよね。
- 三國
- はい、それで、自分たちでボタンをつくる、
ということ自体が
難しいのかなと思っていたんです。
その後、小坂さんのところでヴィンテージのボタンを
仕入れさせていただいた、
というのが最初のご縁でしたね。
- ーー
- 「こういう感じのボタンはありますか」と聞いたら、
ぴったりのものを出してくださって。
真鍮のヴィンテージボタンで、
2017年に販売したところお客さまにも好評でした。
- 小坂
- はいはい、紳士物のズボンに使われていたボタン。
チョッキなんかによく合うんですよね。
- ーー
- はい。それで、翌年にはそのボタンをもとにした
Miknitsのオリジナルボタン
もつくっていただいて。
- 三國
- すごく素敵なものができましたよね。
実際につくってくださる方とのやりとりも
大変だったのではないですか?
- 小坂
- そうですね。私が最初に
オリジナルボタンをつくったときも、
思っていたものと仕上がりが全然違う、
ということが何度もありました。
私トンチンカンなことをいっぱい言っちゃうんです。
「アンティークのボタンの本には
こうやってつくると書いてました」なんて言うと、
「そういうやりかたも、機械も、
この世にはもうないんだ」と言われて、
私もかなり勉強させてもらいました。
でも、よかったです。
みなさんが気に入ってくださってることが
わかって、ほっとしました。
- ーー
- とても好評だったので
引き続き販売する予定です。
そして今年はオリジナルの制作ではないんですが、
三國さんの希望に合うものを
いくつも出してくださって、そのなかから、
「オーバルのヴィンテージウッドボタン」
「コロゾナットのヴィンテージボタン」に決まりました。
- 小坂
- いかがでした?
実はちょっと心配してまして‥‥(笑)。
- 三國
- 「オーバルのヴィンテージウッドボタン」は、
ropesのセーターの肩のところにつけてみたら、
とても合っていました。
特に、今回の新色
「フォレストグリーン」にもぴったりで。
- 小坂
- わあ、よかった!
- 三國
- 1950年、60年代のアランセーターには
たいてい木のボタンがついているんですけど、
ウッドボタンをえらぶのって案外難しい。
ホッコリしすぎたデザインのものが多いんです。
- 小坂
- ウッドボタンは、むずかしいですね。
民芸っぽくなるというか、素朴すぎちゃう。
- 三國
- つくる側も、ウッドだから素朴感を出そう、
というのを目指しちゃうんでしょうね。
小坂さんが持ってきてくださったのは、
ほんとうにちょうどいいウッドボタンで、
うれしかったです。
もうひとつの
「コロゾナットのヴィンテージボタン」は、
ためしにブルーのボタンを
「kinoko」のセルリアンブルーの
カーディガンにつけてみたんです。
これも、すっごく合ってました。
- ーー
- このボタン、
一見プラスチックのように見えますが、
よく見たら木目のような柄がありますよね。
- 三國
- そう、色もすごくきれい。
そんなべったりした色じゃなくて、
濃淡があるのは、素材によるものなんですか。
- 小坂
- はい。天然の素材を染めているので
地の色が出てます。
コロゾナットといって
タグア椰子の実からつくられる
19世紀からある素材なんですよ。
船のバラスというんですか、
積荷の重さのバランスをとるために
椰子の実を船底に入れておく習慣があって、
その後、これ何かの材料にならないのかな‥‥
みたいなことからボタンになったらしいです。
- 三國
- そうなんですね。
船の重りだったなんて。
- 小坂
- でも、つくるのも大変だったらしいんですよ。
まず素材が湿気を含んでいるので
カラカラに乾燥させて加工して、
平らにして‥‥というふうに
相当手間がかかるみたいで。
これが実を輪切りにしたものなんですけど‥‥。
- ーー
- ああ、すてきです。
- 小坂
- あたたかみがあってかわいいですよね。
ただこのコロゾナットのボタンには
どんな染料を使っているのか
今となってはわからないので、
念のため、薄い色のニットには
使わないでいただきたいのと、
お洗濯のときは外して、
クリーニングもだめ、ということを
お伝えしておきたいです。
- ーー
- 色落ちして毛糸にうつっちゃったら
悲しいですもんね。
- 小坂
- そうなんです。
こういうボタンを使うときに
私がおすすめしたいのは、
「鼓ボタン」ともいうんですけど、
ボタン2つを背中と背中で
糸でくっつけておくことです。
それで、カーディガンの両サイドにホールをあけて、
カフスのように留める。
そうすると、お洗濯のときに取り外せます。
- ーー
- ああー。なるほど!
- 三國
- ただ、ボタンを2つずつとなると、
それなりの重みがでるから、
その部分が下がらないかがすこし心配‥‥。
- 小坂
- あ、背中合わせにつけるのは
同じ重さのボタンじゃなくてもいいんです。
そういう場合は、
片方はちっちゃいボタンを
つけていただいて大丈夫です。
- 三國
- なるほどねえ。
それで思い出しましたけど、
私、アンティークの指輪をはじめて買ったとき、
「どんなふうに手入れしたらいいですか」
と聞いたら、
「ヴィクトリアンの暮らしぶりを
想像しながら使っていただくといい」
と言われたことがあったんです。
「想像しながら」という言葉がいいなあ、
昔の人は衣類を地道に手入れしたんだなあ、
と思いました。それと似ていますね。
- 小坂
- そうなんです。
こういうヴィンテージボタンは、
まだ、洗濯機の存在さえないときに
つくられたボタンなんですよね。
- ーー
- ところで、今更ですけども、
小坂さんは、どういうきっかけで
このお仕事をはじめたんですか?
- 小坂
- 私ですか?
私は、もともと丸の内の会社に勤めていた、
普通の会社員だったんです。
- ーー
- え、そうなんですか!
そのときは、
ボタンとは全然関係のないお仕事を?
- 小坂
- そうなんです(笑)。
全然関係ない。
でもある日、会社を辞めて
イギリスに1年間行ったんです。
帰ってきてからも毎年行くようになって。
当時、古いものが大好きだったから、
「古いものを買い付ける仕事をしよう」
と思いまして、まず缶を買いました。
そのなかにボタンが入ってたんです。
めずらしいことではなく、
古い缶には、たまにボタンや
クリップなんかが入っているんですね。
でもボタンに何も興味がなかったので
気にもしてなくて‥‥。
その2~3日後にロンドンの
アンティーク街を歩いていたら、
通りすがりの見知らぬおばさんが、
突然手を「はいっ」って差し出して、
「これ、あげる」と言って
ボタンを3個か4個くれたんです。
「‥‥ありがとうございます」
なんて言って受け取って、
ホテルに戻って、何気なく缶を見たら、
そのなかに入っていたものと同じボタンだったんです。
- 一同
- ええっ!
- 小坂
- わっ、これは何か縁があるのかもしれない!
と思って、次の日から
単なる古いもの探しではなく、
ボタンを探すようになりました。
そしたら、すごーくたのしくて。
ちゃんと、ボタンのなかにアールデコも
アールヌーボーも取り入れられてて、
その当時の最新の素材が使われていたんです。
こんなちっちゃいものにすべてが詰まってる。
そう思ったのがきっかけで、
「私、ボタン屋になる」と決めました。
- ーー
- うわぁ‥‥いい話ですねえ。
- 小坂
- 突然何かが降りてきた!
みたいな、勝手な思い込みだけで、
今までやってきました(笑)。
- 三國
- 素敵だなぁ。
何かはじめるときに、
思い込みってすごく大事なんですよね。
- 小坂
- 思い込みがなかったら、
ここまで続けられなかったと思います。
最初は、ただ面白いボタンを探すことに
熱中していました。
「ボタンなのに、何このつくり?」
みたいなものがたまらなかったんです。
だから、一時期は実用的でないボタンばかり
揃っていたと思います。
今は、前よりは実用的に使えるものもあるかなと、
自分で思っているんですけれど。
- ーー
- すごく使えますよ。
ほぼ日で開催した「編み会」でも、
CO-さんのボタンコーナーをつくったら、
大盛況でしたね。
お客さまのなかにはボタンが少量ほしいかたとか、
自分の持っているものにつけたいかたが
いらっしゃるようでしたので、
今回からMikinitsではボタンを2個、3個ずつの
バラで買えるようにしようと思っています。
お好きな数、ちょうどいいぶんだけ
ご購入いただけるように。
- 三國
- 今年もCO-さんにお願いできてよかったです。
どういうものをつくりたいか、
同じイメージを描けていることが
ほんとうに大事だと思いました。
そして、Miknitsのページで購入できるもの以外にも、
この東神田のお店には素敵なボタンが
たくさんあるので、お近くのかたは、
ぜひこちらにも足を運んでほしいです。
- 小坂
- ありがとうございます。
ありがたいことに、
すでにもう何人かのかたが
来てくださっているんですよ。
そうだ、私、あらためて聞きたかったんですけど、
Miknitsのキットを編んでいるかたが
うちのお店に来てくださったとき、
ボタンのサイズに悩まれることが多いんです。
「このボタンが欲しいけど、
キットに書いてあるサイズと
1ミリ違うから諦めます」
みたいなことをおっしゃるんですね。
でも、数ミリの誤差なら大丈夫ですよね?
- 三國
- 編みながらフレキシブルに調整できるので、
全く問題ないです。
それに少し大きめサイズのほうが、
ニットからボタンが抜けにくくていいですよ。
もし心配でしたら、
ボタンホール分のスワッチを持って、
好きなボタンが通るかなあとか、
色に合うかなあとか、
確かめながら選んでいただいてもいいと思います。
- 小坂
- たしかに。
じゃあこれから来てくださる方には、
そう言っておすすめしますね。
今日はそのこともわかってよかったです。
- ーー
- ボタンひとつで、ニットの
雰囲気もすごく変わりますよね。
今日はありがとうございました。
これからもどうぞよろしくおねがいします。
- 三國
- またうかがいますね。
ありがとうございました。
オーバルの
ヴィンテージウッドボタン
- (2個)
- 583円(税込)
- (3個)
- 874円(税込)
「ちょうどいいデザインのウッドボタン」
と三國さん。アラン系のニットと相性ぴったりです。
コロゾナットの
ヴィンテージウッドボタン
- (2個)
- 1,188円(税込)
- (3個)
- 1,782円(税込)
自然素材「タグア椰子」の実からつくられたボタン。
後染めにより表面の濃淡があります。
2019.08.27 TUE AM11:00
プレオープン
2019.08.28 WED AM11:00
発売
2019.08.27 TUE AM11:00 プレオープン
2019.08.28 WED AM11:00 発売
styling : Miyoko Okao photo : Seishi Shirakawa, Satoru Okita(item)
hair & make : Chinone Hiromi(Cirque) Model :Jessica