上等なペルーコットンのタイプライター生地でつくる、
MITTANのレイヤードバッグ。
使い込んでいったときに、
革のような育てる味わいが出るように、
素材と構造を考えてつくられたこのバッグは、
例えば持ち手は、16枚もの生地を重ねて縫っているそうです。
織り密度の高いしっかりした生地を
ハサミを使わず、手で裂いて裁断し、
生地を幾十にも重ねて、
多重ステッチで補強しながら縫製。
手がけているのは、
MITTANのデザイナー、
三谷さんの元同僚で
長年、ものづくりをしている
縫製職人の宮岡彰子さんです。
宮岡さんと、MITTANとの「カバン談義」。
ずっと使いたくなるカバンのひみつが、聞こえてきます。
- 宮岡
- MITTANの仕事は、初めはスカーフをやってて。
「カバンどう?」って話もらって。
- 三谷
- 2015年からお願いしています。
毎月10枚か10枚弱、
1年間で100枚から110枚ぐらい。
で、もう4年間でしょ?だから…。 - 宮岡
- 400枚、こえましたね。
初めは、この生地に針が通らなくて。
もうまったく進まへん。糸が切れて切れて。 - 三谷
- ですよね。
ミシン糸に綿100%の糸を使ってるから。
普通では考えられないようなことを
やってるんですよね。 - 宮岡
- それでも針を、いろんな針を買いそろえて試しながら。
- 三谷
- 今の針って、先が加工してあるやつですか?
- 宮岡
- ちょっと特殊。革用やねん。
何種類も、いろいろ試して。
16枚の生地をスムーズに貫通してくれんことには。
- 三谷
- そうですね、ハンドルのところは16枚重なってるし、
このタイプライター生地は、高密度だから。
僕も前、自分で縫ってたときは、
摩擦で熱を持って、針が赤くなって、
すごくビックリしました。 - 宮岡
- 針が貫通するパワーがなかったら通らへんねん。
摩擦も絶対あかんし、
針がつらかったら、糸もすぐ切れちゃうし。 - 三谷
- 生地をもうちょっと目が詰まってないやつにするとか、
糸をポリエステルにするとかしたら、
もっと楽なんですけど‥‥。 - 宮岡
- もう大丈夫。
もう、なんとも思ってない。 - 三谷
- 最初に作ったバッグがあるんですけど。
たぶんこれ、ファーストサンプル。
- 宮岡
- すごーい。え、ここがもう擦り切れてるってこと。
- 三谷
- 擦り切れて。
でも、まだ2枚目が見えてるだけかな。
10何枚重なっているから。
- 宮岡
- ほんまや。
- 三谷
- これ、修理して、使ってるんですけど。
お客さんのも、こうやって修理したりして。 - 宮岡
- すごーい。ほんまやな。
それでもこれまだ、持ち手がしっかりしてるよね。
きっと重たいの入れても大丈夫やろし。 - 三谷
- 全然大丈夫で。もう何年も使ってる。
- 宮岡
- やっぱり生地のこの感じ、この生地やからじゃない?
この糸とか生地感。 - 三谷
- そう。やっぱりきれいなんですよ。
ペルーコットンの糸もきれいだし、
織りも詰まってるから。
使っていくと、生地の目がつぶれて、
ちょっと革みたいな感じになってね、
すごくいいんですけどね。
これは藍染めしたあとにクルミで染めたので、
なんか古びて見えるのはクルミのせいです。 - 宮岡
- このカバンをそうやって
長く使ってくれたらうれしいよね。 - 三谷
- もともと、革のカバンみたいに
長い間使えるものを作りたくって。
布が好きだから、
布で作りたいって思ったんですけど、
布のカバンって
汚れたら捨てるっていう話が多かったから、
布だけど、直してずっと使えるっていうのを
作りたかったんです。
このバッグ、今は、人気があって。
待っててもらってるところもあります。 - 宮岡
- もうポツポツなマイペースで、
お待たせして申し訳ないなあ。
でもありがたいよね。
このカバン作るのって、
すごい気合いがいるんやんか。
パワーがいるんやんか。集中力もいるし。
だから、今ぐらいが、ちょうどいいペース。
継続できるし。
愛着も持ちながら、できるなあ。
この形で、ロングランで
やってくれてるのはうれしいね。 - 三谷
- 単なる四角いパーツの集まりなんですけどね。
- 宮岡
- でも、それはいろんなとこを
考え尽くされてるから。
ステッチがデザインになっているものね。 - 三谷
- あっ、そうですね。
ステッチが強度を高めるためにも入ってるし、
ハリを出すためにも入ってるから、
それで成立してるようなカバンですよね。
普通のカバンに比べたら、
ミシン目の量が比べものにならない。
これだけステッチが入ってると、
底がすごいきれいだって言われますね。 - 宮岡
- この生地の大変なのは、正方形じゃなくて、
ゆがんで菱形になってんねん。 - 三谷
- もとの生地を手で裂いてるもんだから。
全部に地の目を通すために。
あと、ハサミを使わないで裁断する
というコンセプトがあって。
ちょっと原始的なものを作ってるんで。
- 宮岡
- この生地の大変さって、
ゆがんでるのをなんとなく手の中で感じとって、
いろいろしながら収めながらつくるところかなあ。 - 三谷
- そうですよね。
場所によっては10何枚も重ねたものを縫う。
そうすると絶対ズレる。絶対ピッタリにはいかないし。
生地はゆがんでるし。
それを手で調整しながら作ると、
その手の感じが残るというか、
ちょっと揺らぎのあるものが作れるな
と思ったんです。
- 宮岡
- なるほど。
ほんとに手の中で作ってる感は持ちながらやってる。
一個一個その子の性格を見ながらやってるような。 - 三谷
- だから、量産品とは言えない部分があるんですけど。
ちょっと、工芸みたいな要素が残ってるのが
このカバンの特徴ですね。
ボロくなる感じがあんまりしなくって。 - 宮岡
- そうやね。味が出てくるね。
このカバン、一個作るのに苦労を重ねていくやんか。
一番最後に持ち手をつける、そこで失敗したら、
今までの苦労が水の泡やねんやんか。
だから、そこはすごい神経使って、一生懸命縫ってる。
- 三谷
- MITTANをつくる以前、宮岡さんと一緒に働いていた会社も、
物づくりをしてましたよね。 - 宮岡
- そうやな。
物づくりの精神を教えてくれた会社やった。
自分の手の中で、ものを作っていくっていう
感動を教えてくれたし。
一から。それも糸からやんか。
糸から、染めからやんか。
そこから始めて最初から最後まで
やらせてくれる会社って、
なかなかないと思う。
その精神を教えてもらった。 - 三谷
- そうですね。
- 宮岡
- そのテイストをMITTANが
受け継いでくれてるみたいで。
それに携わってるような、
こんなことができるのはうれしい。
役に立ててるのは、うれしい。 - 三谷
- ああ。そう言ってもらえると。
なんか、手を動かし続けるっていうのが
やっぱり喜びというか。 - 宮岡
- ええものが、できていく経過も楽しくて。
- 三谷
- そうですね。なんか、本能的なものなのかなって。
- 宮岡
- そんな気もする。うん、そんな気もするね。
- 三谷
- なかなかね、やめられない。ほんとにそうだなあ。
(おわり)
MITTANの服、販売は
2019年12月6日(金)午前11:00からです。
くわしくはこちらからどうぞ。
2019-12-04 WED