「ほぼ日の水沢ダウン」のいちばんの特長は、
ニットデザイナー三國万里子さんがデザインする裏地ですが
今年は、いままでとちょっとちがう新展開になりました。

具体的には、
「ニットの編み柄で、
 テキスタイル(織り物)をデザインする」
ということにチャレンジしたのです。

「ニット柄をモチーフとして使うテキスタイルデザイナー」
として、三國さんにはまず、
いろいろな編み柄パーツを編んでいただきました。
その後、それらをさまざまな方法で組み合わせて、
テキスタイルとしてデザインしていきました。
実際に織り物にできるかどうかは別にして、
そういう感じに見えればいいという考えです。

その結果、いまご覧いただいている、
とても新鮮で、魅力的な裏地がうまれました。

三國万里子デザインのニット・テキスタイル、
第1弾のタイトルは、「イーハトーブの冬」。
水沢ダウンの生まれ故郷でもある岩手の偉大な先人、
宮沢賢治をオマージュした作品です。

縦方向にならんだ、岩手をイメージしたモチーフが、
横方向に移り変わっていくユニークな柄行きが、
古代壁画のように、原初のストーリーを語りかけます。

日本らしさもありながら、見ようによっては、
北欧でつくられたファブリックみたいな雰囲気もあって、
見ていて飽きません。
この柄について、三國さんに解説していただきましょう。

今回、水沢ダウンチームからもらったのは、
「イーハトーブの冬」という、
ちょっと変わったテーマでした。

わたしの理解によれば、イーハトーブというのは
宮沢賢治の脳内に広がる物語世界です。

とはいえそこは、全くの空想世界というのでもない。
賢治が生きた、明治期の岩手という
風土がなければうまれ得なかった、
ある種「抽象化された東北」ともいえる場所。
それならば「柄(模様)」との相性もいいにちがいない。
なぜなら「柄」は、ものごとを記号に
変化させようとする中で、うまれるものだから。

おもしろそう。
イーハトーブの編み柄、つくってみたい!

‥‥と、そのような経緯で生まれたのが、
今回の柄、「イーハトーブの冬」です。

もしかしたら、着るかたがお好きなように
想像してくださるのがいいのかもしれない、と思いつつ、
いちおうそれぞれのモチーフについて、ご説明しますね。

01 波
02 川
03 舞い落ちる楓の種
04 つむじ風
05 みぞれ
06 針葉樹林
07 突風
08 粉雪
09 渡り鳥
10 畑
11 綾織の毛織物(盛岡ツイード)

いかがでしょう?

わたし自身はこの柄行きが、
一枚の絵地図のようでとても気に入っています。
じっと眺めていると、賢治に手を引かれて
北の野山や畑を横切る自分が見えてくるような、
そんな気持ちになってきます。