2014年にはじめて登場した、
インナーに着るための「なかのダウン」。
この個性的なアイテムを、糸井重里は秋から冬のあいだ、
ずっと愛用しています。
もともと、商品として扱うことを決めてから
着はじめたという、わりとめずらしいケースなのですが、
日を追うごとにどんどん気に入って、
いまではもう手放せないほどなのだとか。
その魅力を、ぞんぶんに語ってもらいましょう。

きっかけは、デサントの植木さん

興味を持ったきっかけはね、
水沢ダウンの打ち合わせをするときに、
ほら、デサントの担当の人、えーと‥‥植木さんだ。
植木さんは、いつもそんなに寒くないときから、
半袖ダウンを着てますよね。
で、寒くなってからも、あの格好をしてるから、
おかしいなと思ったわけ。
下はロンTとかパーカとか、けっこう軽装だし、
そんなのでいいのかよと。
逆に、冬でも室内は寒くないのに、
ダウンを脱ぎもしなくて、外の格好のままでいるから、
なんでそういうことができるんだと思って。
まずは、そういう機能に注目したわけですよ。
冬って、脱いだり着たりすることが多くて、
けっこうめんどくさいから、これはいいなと思ってさ。
植木さんに訊いて、
すぐに原宿のデサントショップに買いに行ったんだよ。

椅子の背中にかけておける感じ

で、着はじめたんだけど、まず、
上に丈の短いメルトンのコートとか着るときに、
これをなかに着ていくと、防寒として万全なんだよ。
ウールのセーターとかも、あったかいけど、
厳寒の東北に行くときなんかは、寒いんですよ。
いつもアウターが水沢ダウンとは、かぎらないしね。
でも、これをなかに着てれば、だいじょうぶ。
半袖なんだけど、いちおう袖があって、
肩がおおわれているっていうのが、ポイントかもね。
それだけでも、ベストとはぜんぜんちがう。
そのうち、夜、暖房の温度を下げちゃったり、
暖房つけなくてもいいや、っていうときに、
部屋着になることに気づいた。
寝る前に暖房を消しちゃったあと、
まだ起きてるっていうときとか、ちょうどいいんだよ。
パジャマの上から着てたっていいわけだしね。

じゃまにならないから、いつのまにか、
家のなかでもしょっちゅう着るようになってた。
「これ着とけばいいや」って。
なんだろう、椅子の背中にかけておける感じというのかな。
椅子の背中にかけてあるものって、
ちょっと出かけるときとか、部屋が寒くなったときとか、
しょっちゅう着るじゃない?
昔の人のチャンチャンコみたいなさ。
それの現代版なのかもしれないね。

使いみちがありすぎて、
びっくりした

むちゃくちゃ軽いから、旅行にもよく持っていくよ。
旅館とかホテルで暖房入れると、暑すぎたり、
乾燥して、のどがカラカラになるじゃない?
だから、暖房をゆるめるなり止めるなりして、これを着る。
浴衣の上からでも着ておくと、もう安心だよ。
これはもう、何度もやってる。
そういえば、旅に出るときは、
これでiPadをつつんで、バッグに入れて。
iPad用のクッションにもなってる。
袖があるちゃんとしたダウンジャケットだと、
それ、やんないよね。きっと。
そういう気楽さがあるね。
もちろん、近所にもよく着ていくよ。
この胸ポケットにiPhoneがちょうど入るわけだよ。
ボタンがあるから、かがんだりしても、iPhoneが落ちない。
ふつうは、胸ポケットに入れると落ちるでしょう。
ま、たいしたことじゃないけど、
なんか、そういうところもふくめて、
べんりのかたまりなんだよなあ。
iPhone6だと無理かな?
あ、あるの? 入れてみよう。
あっ、いけるいける!
「iPhone6対応」だね。

△iPhone6を胸ポケットに入れてみせる糸井重里

とにかくね、
最近よく言うワンマイルウェア(近所着)であり、
旅行のギアであり、部屋着であり、
使いみちがありすぎて、びっくりしたんですよ。
洋服でそんないろいろのことを思ったのは、
はじめてじゃないかな。

「もういっこ買えば?」
って言われた

△2013年に糸井重里が購入した半袖ダウン

いま着てるのもそうだけど、
もともとデサントさんでつくってたのは
丸首だけだったんだよね。
で、うちの「なかのダウン」はVネックにしてもらった。
Vネックだと、これの下にシャツを着て、ネクタイして、
上にウールのジャケット着てっていうふうに、
カーディガンとかベストみたいな感覚で使えるから。
うん、自分でもやったことあるよ。
逆にノータイよりネクタイしてるほうが、
おさまりがいい感じさえある。
え、ずいぶん使い込まれてる? いま着てるやつのこと?
そりゃそうだよ、いっつも着てたもん。
かみさんに笑われるくらい。
去年の冬にクリーニングに出そうかっていうときに、
「でも、ずっと着てるしなぁ」とかぐずぐず言ってたら、
「もういっこ買えばいいじゃない」って、
ふつうに言われた。
それくらい着てたんだよ。
あのね、これだけいろいろ言っといてなんだけど、
このアイテムがヘンなものだということは、
わかってるんだよ。
だから、ぼくが植木さんに教えてもらったみたいに、
だれかが紹介してくれないかぎり、
これは流行らないと思う(笑)
いや、笑うけどさ、
だって、見てるだけだとわかんないもん、使いかたが。
だからね、今回みんなが、オレの口車に乗って、
買って、着てみて、「ほんとによかった!」って
言ってくれるんじゃないかっていう、
そんなふうになったら、いいなと思ってるんだけど。
2014.10.10 「ほぼ日」社長室にて収録