スソアキコさんの 麦わら帽子  『太陽とライオン』

                    イラスト/スソアキコ

ほぼ日 スソさん、麦わら帽子が完成しました。
ここまでほんとうにお疲れ様でした。
スソさん ありがとうございます。
よかったです、ホッとしています。



ほぼ日 ベースになっている帽体は
エクアドル産のパナマなので
こちらは「パナマ帽」なわけですが、
「麦わら帽子」と呼んでもOKなのですよね。

スソさん そうですね、「麦わら帽子」という名前は、
もう固有名詞みたいになっていると思うんです。
つばが広くて、
天然草でつくられていて、あごひもがついている、
そういう帽子は総称として、
「麦わら帽子」と呼ばれているようです。
ほぼ日 なるほど。
そうですよね、この『太陽とライオン』は、
印象としてやっぱり「麦わら帽子」です。
夏の帽子。
太陽の下でかぶる帽子。
スソさん はい。
ほぼ日 そもそものお話をさせてください。
この帽子をスソさんと一緒に
つくることになったきっかけは、
2012年5月のこの展示会でした。



スソさん そうでしたね。
吉祥寺の「ギャラリーフェブ」さんで開いた。
ほぼ日 「lumen 輝く光」、と題された
この新作帽子展に並んでいた麦わら帽子たちが、
たいへん、とってもかわいくて。

スソアキコ新作帽子展「lumen」輝く光
(2012年5月:ギャラリーフェブ)


スソさん ありがとうございます。
たくさんの方からご好評をいただけて、
うれしかったです。
ほぼ日 かわいさに感動すると同時に、
びっくりしたんです。
その‥‥
すこし語弊があるかもしれませんが、
「スソさんが普通にかぶれる帽子をつくっている!」
スソさん はい(笑)、そうですよね。
ほぼ日 スソさんの帽子といえば
とにかくインパクトある作品の印象が強かったので。
‥‥このアトリエにも、それがあります。
かぶってみてもよろしいでしょうか。
スソさん もちろん、どうぞ。
ほぼ日 ありがとうございます(かぶる)。



ほぼ日 ‥‥おおーー(お互いを見ながら)。
スソさん たとえばその青い方の帽子は、
「人間が新人類になる前には
 もっと不思議な頭をした人間がいたんじゃないか」
という仮想のイメージを形にしたものです。
ほぼ日 すごい‥‥。
スソさん ときどき、
こうした造形的なものに走ってしまうんです。
やっぱりつくっていてすごくおもしろいので。
ところが、
これは普段かぶれない(笑)。
ほぼ日 はい(笑)。
スソさん 帽子作家としては、やっぱりかぶってほしい。
それで、こういう造形的な時と、
普段でもかぶりやすい帽子をつくる時と、
展覧会でいうと一回おきになっていって‥‥。
ほぼ日 なるほど。
スソさん それと同時に私にはずっと、
「なぜ人は帽子をかぶるんだろう?」
という疑問があるんですね。
世界中で、古代から、
頭に何かをかぶることをしていますよね、人は。
王様がかぶる、「クラウン」とか。
ほぼ日 王冠ですね。
スソさん 「クラウン」の語源を調べたんです。
そしたらそれは、
もしかしたら「コロナ」じゃないかと。
ほぼ日 コロナって、日食のとき太陽のまわりに見える
ゆらゆらした光‥‥
あー、たしかに王冠に似ています。
スソさん 王様とか地位の高い人は、
日食を利用して民を治めるじゃないですか。
「見よ、太陽が欠ける。あれは俺がやった」と。
太陽光を模したものを頭にのっけて
「俺が王だ」とやっていたことが
「クラウン」の語源だとしたら、
それはすごくおもしろいなぁって。
ほぼ日 へええーー。
スソさん まぁ、それは、
「一説によると」みたいなことなんですけどね。
そうやって、
かぶることのルーツをたどっていた頃です。
震災がありました。
それで、
「暗闇に光」というイメージがすっと結びついて、
「夜光」という展覧会を震災の年の秋に開きました。
ほぼ日 これがそのときのダイレクトメール。


スソアキコ帽子展「夜光」(2011年10月:DEE'S HALL)

スソさん ぜんぶの作品に、どこか光ってる部分がある、
ということをやりました。
ほぼ日 帽子のタイプとしては、
かぶりやすいものではなかったようですね。
スソさん ええ。
普段かぶれない帽子の展覧会でした(笑)。


スソさん でもいつか、
たのしさとかぶりやすさを
融合させたいなって思ってたんです。
「おもしろい帽子だね」って言われることと、
「すごくかぶりやすいです」と言われることが、
一緒になるといいなぁって。
ほぼ日 はい。
スソさん そういう気持ちもありながら、
もっと元気に、もっと光をとりいれて‥‥。
で、思いついたのが「麦わら帽子」でした。
ほぼ日 最初にお話した吉祥寺での
「lumen 輝く光」、という展示会ですね。
スソさん そう。
「ようし、もう、太陽だ」って(笑)。
「みんな、外に出よう!」と。
そのためには紫外線を避けられるように、
つばの大きな帽子にしよう、と。


スソアキコ新作帽子展「lumen」輝く光
(2012年5月:ギャラリーフェブ)


ほぼ日 色がすごく鮮やかで。
スソさん 知り合いがメキシコに行ったんです。
私も行きたかったのに行けなかった。
その思いを引きずって
この展覧会やったのかもしれません(笑)。
ほぼ日 メキシコの布とか人形とか、
ほんとに色鮮やかですよね。
スソさん こういうものですよね。



ほぼ日 はい、はい。
ああー、いいですねー、陽気だなー。
スソさん ねえ(笑)。
ほぼ日 その色鮮やかなスソさんの麦わら帽子が
あんまり素敵だったので、
「麦わら帽子で展示会をやりませんか?」
とお声がけしたのでした。
スソさん そうでしたね、
最初は「展覧会を」というお話でした。
それもすごくいいなぁとは思ったんですけど、
「麦わら帽子」で今度は
なにか別なことにチャレンジしたくなったんです。
ほぼ日 それは、
「展覧会に来られない方にも麦わら帽子を届ける」
というアイデアでした。
スソさん 今までの自分のキャパシティ以上に
広げることをしてみたい、と。
ほぼ日 そうして、オリジナルの麦わら帽子を、
できるだけたくさんつくることになったわけです。
大量生産ではなくて、
手作業で、できるだけたくさん。
スソさん ほんとにできるのか、
どこまでできるのか、まったくわからないままに。
ほぼ日 わからなかったですねー。
でも、ここまできました。
いくつかの困難を乗り越えて(笑)。
スソさん はい(笑)。
ほぼ日 できあがるまでの具体的なステップは、
「メイキング」のページ用意して、
そちらで別にご説明することにします。
まぁ、結局、
ほんとにかなりの部分が手作業になりましたね。
スソさん ねぇ、すごいです。
自分の帽子をこれだけの数、
誰かの手作業に託すことも初めてだったので、
その意味でも新鮮で、うれしいです。
ほぼ日 「太陽」と「ライオン」という、
ふたつのモチーフを選んだ理由は?
スソさん やっぱり、
明るくて強いイメージにしたかったので。
それで、太陽のコロナを。
ほぼ日 ああー、さっきのお話につながりましたね。
なるほどぉ、太陽のコロナは
ライオンのたてがみのようでもあります。
スソさん そうですね。
一応ここに(紙を取り出す)、
アイデアをメモしたものがあるんですが‥‥
ほぼ日 ああ‥‥(メモを読む)‥‥ほんとだ‥‥
「モチーフにライオンはどうだろう?」
となるまでの流れが記されています。

※クリックで大きな画像をご覧いただけます。

ほぼ日 オレンジという色にも、パワーを感じますよね。
かわいいなぁ‥‥。
かぶって遊びに行きたいです、夏の日に。
スソさん 海とか山とか川原とかへ、
太陽の下に飛び出していってほしいです。
麦わら帽子はちいさな日影をつくってくれます。
日影を連れて、
思いきり夏をたのしんでいただきたいですね。
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