Shin;Kuu special interview スタート地点に立つ、3人の女性に会いに。

スタート地点に立つ、3人の女性に会いに。

1 木村綾子さん コトゴトブックス店主 「住み開きをするように、本のことをやりたい」

2021年8月に、オンライン書店
「コトゴトブックス」を立ち上げた木村綾子さん。
本と作家、そして読者のかけ橋になり、
本にまつわるいろんなことを手がけてきた木村さんが、
独立して、あらためて挑戦したいと思ったのは、
自分の住まいを外に開くようなイメージで、
読者に本を届ける存在になることでした。
私たちが取材でお会いした日は、
『西村賢太追悼文集』の校正作業の真っ最中。
本を売る書店員という立場から一歩進んで、
本を作る出版業に挑戦する彼女の、
これまでと、これからを聞きました。

写真:石田真澄

木村綾子さんプロフィール >>

静岡県出身。大学進学を期に上京。
モデル、タレント活動をしながら、
評論、エッセイなど執筆活動をはじめる。
2009年『今さら入門 太宰治』で作家デビュー。
下北沢の本屋「B&B」には立ち上げから関わり、
その後「蔦屋書店」へ。
2021年、オンラインで本を売る
「コトゴトブックス」をスタート。
本と作家、読者をつなぐ、
さまざまなイベントを企画している。
7月にはコトゴトブックス初の書籍
『西村賢太追悼文集』を刊行したばかり。

──
コトゴトブックスで初めて売った本のこと、
教えて下さい。
木村
まだコトゴトブックスの実体がないときに、
こんなことをやりたいと思ってるんですけどって、
片岡義男さんにご挨拶に行ったんです。そうしたら、
「すばらしい。どんなことでも協力しますよ」
って言ってくださって。
──
すごくうれしいですね。
木村
片岡さんの『言葉の人生』という本を、
まず売らせてもらいたいって、決めてたんですね。
『言葉の人生』って、言葉が歩んできた歴史を、
片岡さんがその言葉を見つめながら文章を書いていて。
「言葉について考えながら、
片岡さんの目がとらえていた景色を写真に撮ってください」
ってお願いしてみたんです。
そしたら、ネガが届いて。その写真をもとに、
「じゃぁ僕は短い物語も書くよ」っておっしゃって。
それをポストカードにして、本に添えて、
販売することにしたんです。
──
素敵ですね。
木村
ですよね。そのときに、ああ、私がやりたいことって、
こういうことなのかもしれないって。
実際に本を読んでいない時間でも、
本とつながっているような体験を、届けていきたいって。
ぼんやりとではあったけれど、気持ちが決まったというか。
──
それが、一年前くらいですか?
木村
そう、2021年の7月末ですね。
8月1日に「コトゴトブックス始めます」っていう
告知をひとことだけ出して、
それで、最初に売る8冊を公開したのが8月6日。
なんとか、やっと1年経ちました。
──
おひとりではじめたんですよね。
木村
そうです。本の小売って本当に大変ですから、
1年めは、そんなに大きな稼ぎは出せないだろう、
ていうこともあって、ひとりではじめました。
今まで「B&B」や「蔦屋書店」で積んできた経験を、
自分の持ち場で、ていねいにやっていけば、
私ひとり生活していけるぶんなら、
なんとかなると思ったんです。
──
「B&B」では、立ち上げから参加されていました。
木村
はい。どんなふうに出版社から書店に本が届いて、
お客様に届けて、それでどれくらいの利益があってとか、
そういう仕組みはひと通り分かるようになりましたね。
──
「B&B」はどのくらいいらっしゃったんですか?
木村
7年半です。
──
今は、本屋さんでイベントがあったり、
お酒を飲めたりって、よく目にするけれども、
「B&B」がオープンしたときはすごく新鮮でした。
木村
そうなんです。その出会いも、偶然というかご縁で。
私、20代のころは、テレビとか雑誌とか、
マスのメディアを中心に本のことを発信してたんです。
きっとすごくたくさんの人に届いてるんだろうけど、
でも、その人たちの顔が見えないなぁって、
なんとなくもどかしさを感じていたんです。
それで、たとえば、住み開きみたいな感じで、
古い一軒家でもいいから借りて、
1階で仕事しながら本を売ったりしてみたいなあって。
周りにいろんな表現をしてる人が多かったので、
そういう人が面白いことをやれる場所を
作りたいっていうのを、
ちょうど10年ほど前に考えたんです。
──
住み開き。自宅の一部を、
クリエイティブな人が集まる場として開放する。
木村
そう、そのアイディアを知り合いの編集者に相談したら、
馬鹿じゃないの! 女ひとり暮らしなんて危ないし!
そもそも本屋やったことなでしょ!って(笑)。
じゃ、ある人を紹介してあげるって、
つなげていただいたのが、内沼晋太郎さんで。
──
あぁ、なるほど。
木村
そうしたら、内沼さんが、
「僕、ちょうどそんな書店やるよ?」って。
──
すごいタイミングです。
木村
内沼さんが話してくれた構想が、
ビールも飲めるとか、家具も売るとか、
毎日イベントを開催するとか、
私もその舟に一緒に乗りたい!って
思えるものだったんですよ。
「場所を開く自信や知識が今はないんだったら、
うちの場所で経験を積んでみませんか?」
って、言ってくださって。
──
なるほど。
木村
最初は、仕入れから発注、レジ打ちもするし、
ビールも注ぐし、イベント設営もするし、
企画もするっていう感じだったんですけど、
スタッフの体制が整ってきてからは、
イベントに注力しようと決めて。
「B&B」では、毎日イベントが開かれていたので、
もうひとりのイベント担当と一緒に、
明後日のイベント埋まってない!とか、バタバタと。
──
客席が?
木村
集客じゃなくて(笑)
イベント自体が決まってないんです。どうしよう!?って。
スタッフは表に出て喋れる人も多かったから、
「じゃあ、私が太宰のこと喋ります」と手を挙げて。
毎日イベントを開く、というのがコンセプトだったので。
──
鍛えられますね。
木村
振り返って思うのは、作家は書くことに全力を注ぐのに、
書いたあと、つまり、出し切ったあとに、
「表に出てしゃべって下さい」ってオファーするのは、
お願いの仕方によっては、失礼にあたることもあって。
──
木村さんも作家だからこその視点ですね。
木村
テンプレートな依頼をしても、
やっぱり響かないんですよね。
だからその頃から、まずは本をしっかり読んで、
自分の思いを伝えたうえで、
「この本がより広く深く届くための企画を考えました」
っていうお手紙を書いて、
という企画の立てかたを守ってきました。
ちゃんと積み上げていかないとダメだと思って。
今も、それだけは忘れないです。
──
木村さんの企画書、
じつは私も拝見したことがあるんですが、
もらったらうれしいだろうなあと感じました。
木村
ありがとうございます。
そうやって少しずつやってきて、
作家さんや編集者さんに、「木村さんとなら」って
言ってもらえるようになって。
「ひとつ、しゃべってみようかな」って
言ってくれる作家が増えていって。
今は「なにか企画してもらえませんか?」って
話をもってきてくださる機会も増えました。
──
「B&B」のあと、一瞬、蔦屋書店へ。
木村
1年間在籍しました。
──
下北沢の文化的な場所から、全国区へ。
木村
まさに、そうですね。
「B&B」では、やり切った感覚があって。
ちょうどそのとき、また巡り合わせで、
蔦屋書店の本部の企画事業部の方と知り合って、
「下北沢で続けてきたことを、
全国へ広げてみませんか?」と誘っていただいて。
ちょうど、私のやりたいことにマッチしていたんですよね。
でも、直後にコロナが来てしまって、
当初思い描いていたことは、
ほとんど叶わない1年ではあったんですけど。
──
企画自体は、考え続けていました?
木村
はい。コロナの最初の頃って、お店も閉まっていたし、
オンラインイベントの開きかたも、
みんな手探りでしたよね。
私も、ネットに詳しい人間ではなかったんですが、
「できます!」と言いながら、
影で猛勉強するみたいな方法で、
全国どこの企画者でも、こういうやり方だったら、
配信イベントができますよ、という仕組みを作りました。
──
作って、辞めた。
木村
そうですね。
どこにいても同じ体験やサービスが得られるためには、
どうすればいいのか考えられたことは、
私にとってすっごく大きな経験でした。
まさに今、コトゴトブックスにも生きてます。
苦手だったオンラインの仕組みだって、
自分で作ることができたんだから、
じゃあもう、既存の場所を借りるんじゃなくて、
自分の「場」を作ろうと思ってはじめたのが、
「コトゴトブックス」だったんです。
──
名前の由来は?
木村
じつは、ある作家さんのアイディアです。
本のことをやっていきたいんですと相談したときに、
本には世の中のあらゆる『事』が書かれているし、
君のやっているイベントも、
日本語に直すと『催事』だし。
その『事』と『事』を組み合わせて、
思わぬ人のところまで飛んで行くような事を
君はやってきたし、これからもやっていくだろうから、
っていうふうに名前をつけていただいたんです。
──
ひとつのお店なり、場をつくろうと思うと、
いろいろ考えることがあると思うんですけど、
準備期間っていうのはどんなことをされていたんですか?
木村
準備期間はほとんどなかったです。
最初に売る本どうしよう、ウェブサイトどうしよう、
ECサイトをいじってみよう、って感じて、
1か月くらいでで一気にワーッ!って。
そのときも、こんなお店にしたいっていうよりも、
今までやってきたことから、誰かの看板を取っ払ったら、
どうなるかなっていうことだけ考えてましたね。
たとえば、ツイッターひとつとっても、これまでは、
すべての企画を平等に、感情を抑えて発信していました。
でも今は、私はこれが好き!っていうのを、
全力で言えるんですよ。
──
好きなようにできる。
木村
そうです、そうです。
あとは、やっぱり、どの本の出版も、
お祝いしたい気持ちってあるんです。
今までは「出版記念=イベント」だったので、
人前に出ない作家さんや、
話すのが苦手な作家さんのことをお祝いできる場がなくて、
ずっともどかしい気持ちもあったんです。
でもそういう人の本も売りたいじゃないですか。
だから、コトゴトブックスでは、
さらに自由に発想して、グッズを作ったりとか、
あまり表に出ないかたには、
インタビューをして冊子にしたりしています。
それこそ、(西村さんのように)
亡くなってしまったかただって、
こういう文集という形で弔うこともできるし。
──
そうですね、たしかに。
木村
私、店主でございますっていうより、
作家に一番近い読者でありたいと思ってるんです。
作家の方に企画を提案するときも、
あくまで読者として感想を伝えてから、
「この本にこんな特典が付いていたら嬉しいです」
と提案する。それが私のやり方ですね。
──
なるほど。動画を事前に収録して配信する、
というスタイルも、面白いなって思います。
木村
それは裏話として、
当初どうして事前収録にしたかっていうと、
生配信イベントを、たったひとりで
運営する自信がなかったからなんです。
今ではできるようになりましたけど(笑)。
──
動画の編集も1人でされてるんですよね?
木村
はい。ダイジェスト版作ったり、
SNSに合わせて切り出し方を変えたり。
やりながら、勉強してきた感じです。
私、「やる」と決めてから、どうしようどうしようって、
後から勉強していくタイプかもしれないです。
──
あと、この本棚。興味あります。
並べ方とか、決まりはあります?
木村
もう、どんどん入れ替えてますね。
自分にとってもお守り本みたいな、
たとえば太宰の本とか近現代の本とかはあるけど、
3段目より下は、どんどん替えてかないと。
昔は、本は捨てたくない気持ちもあったんですけど、
そうすると頭の回転が鈍る感じがするんですよ。
読みたくなったらまた買えばいいし。
──
なるほど。
最初の頃イメージされてた、住み開きのように、
次はこういうのやってみたいなぁとか、あるんですか?
木村
そうですね。まず、出版は、
年に1冊でも2冊でも、やっていきたいです。
あとはやっぱり、集える場所っていうのを、
そろそろ考えていかないとなとは思っていて。
せっかく身軽なので、たとえば、地方の面白いお店で、
「あの町のこの人とこんなことをします!」みたいな
ゲリラをやってみたいなぁっていうのは、思ってます。
──
コトゴトゲリラ。いいですねぇ。
たのしみにしています!
木村
ありがとうございます。

朝つけて、夕方までしっとり。

私、長く愛用している化粧品がじつはなくて。
でも、今回starting!を使ってみて、
本当にびっくりしたんですよ。
朝、スキンケアをした直後はもちろんしっとり。
夕方、仕事の合間にふぅっと頬づえをついたら、
「あれ、まだモチモチしてる!!」って。

私にとって、一番集中できるのが朝。
しかも、起きてすぐの時間帯です。
原稿や企画を抱えていると、
夢の中でも、あーでもないこーでもないと
考えていることがあるんですが、目が覚めると、
わりと思考がすっきり整理されていて。
一目散に、パソコンを起動することも多いんです。

だからこそ、朝のスキンケアって、じつは、
集中を邪魔されるもどかしい時間でもあったんです。
starting!は、洗顔後、チャチャッ、ぺぺッと塗って終わり。
でも、抜群の保湿力があるんですよね。
香りも強すぎず、あとに残りすぎないので、
ふわっと香って気持ちよく目覚めたあとは、
仕事に集中できる。うれしいですよね。
これから秋冬になると、毎年乾燥が悩みなので、
starting!を使うのがさらに楽しみです。

(続きます)
2022-08-10-WED