「海のコレクション」はもともと、
HOBO SIRI SIRIの
デビューコレクションとしてつくられた
ラインナップをもとにしています。
そのなかでもとくに好評だった、
ナチュラルグレーの無調色パールを使った
アイテムがだんだんふえていって、
このたび「海のコレクション」が完成したしだいです。



デビューのときのテーマ
「ガラスと、うまれたままのパール」について、
まだ開発にとりかかる前に、デザイナーの岡本菜穂さんは
こんなことを語ってくれました。
そう、「海のコレクション」のはじまりは、
こんなことでした。

わたしはもともと建築を学んでいて、
そのあとインテリアの仕事をしていました。
たとえば建築だとしたら、いま住んでいる家に
どういう問題があるかというようなヒアリングをして、
それを解決するかたちで家を建てます。
そういう問題解決型のプロセスは、
ジュエリーデザインにも活かされている気がします。

「Tシャツ+ジーンズみたいにラフな格好でも、
 これさえつけておけば、とりあえずおしゃれに見える」
というHOBO SIRI SIRIのコンセプトも、
ジュエリーを身につける人に対しての
一種の問題解決だと思います。

一般的にジュエリーは、単体で完結するように
つくられることが多いのですが、
わたしはインテリアに関わっていたこともあって、
空間をコーディネイトして統一感をもたせるのと同様に、
ジュエリーを洋服とコーディネイトすることに、
とても興味がありました。
ジュエリー単体ではなく、全体の調和が気になります。
そういう意識があったので、今回の課題は、
自分にとっては普遍的なものという印象を感じています。

具体的には、ガラスとパールの組み合わせを提案します。

ガラスはもともと女性がすきな素材ですし、
パールも、自然のものから生まれたというところが
石よりも身近な感じがして、
定番でよく使われる宝石の中では、いちばん好きです。
この好きな素材同士の組み合わせで、
いつかジュエリーをつくってみたいと思っていました。

パールの色は、希少なナチュラルグレーで。
ふつうは「調色」といって、
染色して色を整えるプロセスがあるのですが、
それをしない、無調色パールを使おうと思います。
人の手が入らない、いわば「うまれたままのパール」です。
またバロックといって、すこしいびつな形をしたものを
あえてえらびたいです。

パールは、色や形がビシッとそろってしまうと、
冠婚葬祭のようなフォーマルな印象になりがちです。
無調色のバロックパールは、
色も形もひとつひとつ微妙にちがってくるので、
自然で有機的なパワーが感じられる、
現代的なジュエリーをつくることができると思います。

ガラスは、SIRI SIRIではおなじみの、
ビーカーなどの理化学実験器具に使用される、
耐熱ガラスを使います。
軽くて固いので、実はジュエリーに向いているのです。
気がるに毎日着けられるジュエリーにしたいですからね。
つくるのは、ひょうたん型の砂時計ってありますよね、
その職人さんにお願いしようと思います。
あの砂時計をつくれる人は、日本に二人しかいないんです。

無調色バロックパールにすごく力があるし、
ガラスもひとつひとつ手づくりなので、
エネルギーのレベルがそろって、
組み合わせたときに、調和がうまれてくると思います。

ここはデザインするときに気を使うところで、
たとえば、すばらしい素材があったとしても、
それに連なるチェーンや金具が
しっかりデザインされていなかったとしたら、
ジュエリーとして完成しません。
ですから、組み合わせるもの同士のクオリティや
持っているエネルギーがいっしょになるようにして、
全体の調和を図るようにしています。

SIRI SIRIというブランド名は、スワヒリ語の
「silisili(鎖という意味)」から来ているのですが、
バングルが好きなのは、アフリカの人たちが、
腕とかにいろいろ巻いている感じが
好きだからかもしれません。

ジュエリーって不思議なことに、
原始的な生活をしている人たちほど派手で、
現代的になるほど、シンプルなデザインになる。
本来であれば逆になってもよさそうなのにという気がして、
不思議だし、すごくおもしろいです。

原始時代の土器なんかが出土されるとき、
いっしょに装飾品が出てくることが多いですよね。
それが不思議で、人にとってジュエリーって、
どんな存在なのだろうと思います。

土器は食べたりする道具だから生きるために必要だけど、
ジュエリーはかならずしも必要なものではない。
いらないのに身につける。
いらないのに身につけたい。
人間は生きていく上で、本能に従うだけじゃない、
なにかが要るのだろうなとわたしは思っています。

(SIRI SIRIデザイナー・岡本 菜穂)