オリジナルのスピーカーキットの企画を
森 友治さんにお願いをして、
製作が決まった、2017年の春。
みちこの作ったスピーカーに触発されて、
「じぶんでもスピーカーを作ってみたい!」
ということで、まだ製品化もしていないうちに、
じぶんたちでスピーカーを作ってしまった
ほぼ日乗組員がいました。
多田、アシザワ、井谷の男子3人です。
ものづくりを趣味としていたり、
音楽が好きだったり、
スピーカーそのものに興味があったり、
それぞれの動機は別々ですが、
3人とも、みちこのスピーカーを見て
心が動いたきっかけは同じでした。
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多田
多田の作ったスピーカーは、
個人のWebサイトでオリジナルのキットを
製作している人と交渉して取り寄せたもの。
自宅のテレビを買い替えたら
音の迫力が減ってしまったという多田は、
テレビにつなぐためのスピーカーとして自作しました。
さだまさしさんの大ファンである多田は、
さださんの歌声や、ギター、ヴァイオリンの高音が
心地よく聴けるような調整をしたそうです。
そして、パーツについても独自で調査して、
選べる範囲内でいいものを選びました。
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アシザワ
アシザワは、ほぼ日社内の誰よりも、
木材や電子部品を扱った工作を得意としています。
少年時代からものづくりが好きだったアシザワでも、
スピーカーを作るのは、はじめての経験でした。
みちこのスピーカーを見て、
木の工作の延長でスピーカーも作れる気がしたようで、
キットに頼ることもなく作り上げてしまいました。
自宅で余っていた木材を使って
図面すら引かずに完成させたそうです。
サイコロのような丸みを帯びた見た目と、
木目の風合いを出したことがポイント。
木枠のつなぎ目の段差を目立たなくするために、
6面すべて削ったことが大変だったようです。
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イタニティ
井谷の作ったスピーカーは、
みちこ、多田、アシザワのスピーカーとは違う、
「バックロードホーン型」という構造のもの。
秋葉原のスピーカー専門店で相談をして、
市販のキットを購入して作りました。
バックロードホーン型のスピーカーは、
低音をより強く響かせるような構造をしています。
内側が複雑なつくりをしていて、
市販のものは手に入れにくいと聞いていたので、
どんな音が鳴るんだろうと興味を持ちました。
井谷は、こどもの頃にはあまり
工作をすることはなかったようですが、
ボンドで木をくっつけたり、
ツキ板を貼って仕上げていくと達成感があって、
いい体験ができたようです。
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みんなで秋葉原の電気街へ出かけたり、
お互いの作ったものを褒め合ったり、
ものづくりの経験と関係なく、
みんな共通して「たのしい!」という感想でした。
ただ、実際に作ってみると、
もっと簡単にできたらいいのにな、
と気づくこともいくつかありました。
たとえば、スピーカーのキットだけでなく、
音を鳴らすために必要なアンプや細かい部品を、
じぶんで揃えなればいけないこと。
そして、きれいに仕上げるためには、
作る人の器用さやセンスが必要だということ。
紙ヤスリをかける方向や
アンプやケーブルの選びかたなど、
慣れている人であれば理解できそうなことも、
はじめての人や器用でない人にとっては、
なかなか難しそうだということがわかりました。
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お部屋にずっと置いておきたくなるような、
魅力的なデザインのスピーカーを、
もっと簡単に作れるようにしよう、
という思いを持って、森さんに相談しにいきました。
福岡県の森さんのご自宅におじゃましたのは、
スピーカーに興味を持った
5人のメンバー()です。
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森さんのご自宅は、
まさに『ダカフェ日記』で見ていた舞台。
奥さまの「だぁちゃん」がいて、
長女の「海ちゃん」長男の「空くん」がいて、
3びきのワンちゃんも迎えてくれました。
そして今回の主役である、
森さんがこれまでに作ってきた
歴代のスピーカーもご用意いただきました。
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初代のスピーカー
学生時代からオーディオを趣味にしている森さん。
最初にスピーカーを作ったのは10年ほど前。
小さな8センチのスピーカーユニットと
出合ったことがきっかけなんだそうです。
「こんなちっちゃいのに、こんな音を出しちゃって!」
という衝撃があったそうです。
無事に完成はしたものの、
仕上がりには納得できなかった森さんは、
見た目もさらにいいものにしていきたくて、
どんどんハマっていったそうです。
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二代目のスピーカー
このスピーカーはじつは、
長女の海ちゃんが小学4年生の夏休みに
自由研究で作ったものです。
お父さんの熱い指導のもとで、
スピーカーと真空管アンプを作りました。
小学生だった海ちゃんにとっては、
アンプを作るときのはんだ付けが
いちばん楽しかったそうです。
おじいちゃんとおばあちゃんへの
プレゼントとして作って、
今でもテレビにつないで活躍しています。
ほぼ日のみちこは、
このスピーカーを真似して自作したのでした。
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構造の異なるものを作ってみたり、
スピーカー専門誌の付録のキットを形にしたり、
アンプを作り、スピーカーユニットも作り‥‥、
どういった形ならどんな音が鳴るのか、
どんなパーツと相性がいいのか、
挑戦と研究をくり返すなかで、
どんどん知識が溜まっていくのでした。
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集大成のスピーカー
最後に見せてくれたスピーカーは、
森さんが「集大成」と語るものでした。
イギリス製の憧れのスピーカーをモデルに、
縮尺を変えて自作したものです。
友達への結婚祝いとして贈ったそうですが、
見た目も音も気に入っていたので、
じぶんが使うために、もう一度作り直したそうです。
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森さんのスピーカーを見て盛り上がり、
みんなでゆっくりと視聴をしたあとで、
ほぼ日乗組員が作ったスピーカーも、
せっかくなので見ていただきました。
やすりでの研磨やオイル塗りの方法を
丁寧に教えていただく場面もあって、
ワークショップのような場になりました。
![](./img/02/photo_15.jpg)
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はじめてスピーカーを作る人たちが、
どんなところで壁にぶつかるのか、
という率直な意見交換をした上で、
スピーカーキットの製作がはじまったのです。
(つづきます)
2018-05-29-TUE