STAMP AND DIARYがずっと考えてきたのは、
生活をベースにした、着心地のいい服。
デザインや機能性も含め、着るひとが納得できて
ふだんの生活の中で重宝される、
そう、つまり「いい道具」のような服です。
この秋冬の新作も、
重い服が多くなりがちなシーズンを、
自分らしく、気分よく過ごせる服がいっぱい。
STAMP AND DIARYらしい心地よさ。
ディレクターの吉川修一さんに、
素材のこと、デザインのこと、
お話をうかがいました。
- ――
- ちょっと意外なんですが、
STAMP AND DIARYの秋冬物のご紹介、
ほぼ日では今回が初めてなんです。
吉川さんはいつも、
シーズンごとのテーマは特に設けず、
ふだんの生活の中での「いい道具」
っていうことで服を作られていますよね。
- 吉川
- はい、そうですね。
僕は、シーズンごとにテーマを、っていうのは
自分の服には違うかな、とはずーっと思っていて。
目線が、着飾るっていうところじゃないんですよね。
やっぱり、生活の中で便利と感じるものとか、
気持ちいい、心地いい、リラックスできる、
そんなことを考えているんです。
- ――
- 今おっしゃった、
「着飾る」ではないっていうこと、ポイントですね。
- 吉川
- 人に見せるためっていうよりは、
自分が納得する服っていう感じですね。
- ――
- 飾るより馴染むみたいな、心地よさが大事。
でも、心地よさにもその時に応じたものがあって、
今作りたいもの、提案したいものを集めると、
そのシーズンのラインナップになる、
っていう感じですか?
- 吉川
- そうですね。
自分の中でのトレンド、
セルフトレンドみたいなことかな、と思いますね。
こういうディテールがあったらいいな、
っていうところから始まって、
いつも素材を探してるみたいな感じです。
シワの質感が楽しい、
軽いコート。
- 吉川
- 例えば今回のポリエステルのコートは、
パリでたまたま、古着のコートを買って、
これが、なんかすごくいいな、っていうのが
スタートだったんですよ。
- ――
- ダブルフロントワイドコート、ですね。
- 吉川
- はい。
軍モノなんですけどなにしろ古着なので、
何用だったのかもわからなかったんですよ。
でも、いいなあ、って思ったんです。
ずいぶんディテールは崩しちゃってるので
できあがったコートはもう、原型からは離れてますけど。
かなり大きいサイズで、
ゆったりとリラックスして着られるものがいいな、と。
これ、前に綿素材で作ったんですれけど、
クシャッと丸めてバッグに入れたいなっていうのが
ずっとあったんですよ。
- ――
- わかります。
吉川さん、旅好きですもんね。
バッグに入れることも条件のひとつですね。
- 吉川
- そうなんです。
クシャッとしても大丈夫な素材を
ずーっと探してました。
そうしたら、うちの生地の担当者が知り合いだった
福井の生地屋さんに出会えたんです。
海外の有名なブランドにも卸しているところで、
そちらから、このディテールに合う素材感のものを
チョイスして、このコートができたんです。
キュッと握るとそのままになるような、
ちょっと、形状記憶的な感じがあって。
- ――
- シワ感ができる。
自分でかたちが作れるみたいな感じですね。
- 吉川
- ちょっと丸みを作ったりもできて。
だけどゴワゴワするのではなくて、
ちょっとぬめり感というか、独特なんですよ。
柔らかさと、ハリ感もあって。
ちょっとね、ミラノのブランドがやりそうな
そんな素材感なんですよ。
- ――
- ラフに丸めると、ハンドボールぐらい。
たっぷりの布なのに、軽いですよね。
- 吉川
- コートって、重いとか、硬いとか、
タイトすぎると疲れちゃうじゃないですか。
これぐらい大きければ、着てて疲れないし、
リラックスした感じをちょっと演出してみました。
脱ぎ着もしやすいですよね、大きいと。
- ――
- すっと腕が通って、ストンと落ち着く。
着込んでいくと、布もこなれてきそうですね。
- 吉川
- そうですね。
そこも楽しんでいただきたいです。
- ――
- まさに、手に馴染む道具、ですね。
冬のコットンを、
コーデュロイで。
- 吉川
- 初めてコーデュロイを使ったんです。
これはオリジナルカラーで染めています。
- ――
- コーデュロイって、すごくカジュアルで、
ごわつく感じを想像しますけれど、
これは、とても柔らかい布ですね。
- 吉川
- コーデュロイって中国製も多いんですけど、
これは、日本できちんと作られてます。
遠州ですね。静岡県で織ったものです。
- ――
- ふわふわで気持ちがいいんですよね。
表情もやさしい感じで。
- 吉川
- 染める前に、すごく丁寧な処理をして表側の毛を整えて、
それから染めの工程に入るので、フワッとした、
パイルの丸みが美しいコーデュロイに仕上がるんです。
- ――
- それでできたのが、ジャケットとパンツ。
素材のよさが生かされてますよね。
- 吉川
- セットアップでも着ていただけますし、
もちろん単品で、ほかのものと合わせても。
どちらもオーバーサイズ気味ですけど、
ちょっときちんと見える感じに作りました。
- ――
- これはコーデュロイのイメージを変えますね。
色も素敵です。
エレガントですね。
- 吉川
- そうですね。
ちょっとグレイッシュなベージュで、
コーデュロイらしくない色かもしれません。
コットン素材ですから、
ウールよりも早い季節から着られて、
長い間楽しんでいただけると思いますね。
最高級のメリノウールで、
大人のニットを。
- ――
- このニットがまたすごいんですよね。
ふわふわで。
- 吉川
- 「スーパーエクストラファインメリノウール」です。
イタリアの糸ですね。
しかも、スーパー120っていうもので、
わかる方にはわかっていただけるすごい糸なんです。
- ――
- 吉川さんの糸のこだわりが、今回も。
メリノって、少々汗をかいても大丈夫だから、
登山する人がよく着てますよね。
そういう、すぐれた機能性があるものを
日常着にしたら、使い勝手がいいでしょうねえ。
- 吉川
- そうなんです。
しかもこれは細い糸で編んでいるので、
薄くて軽いニットに仕上がってるんですよ。
- ――
- そしてこのチュニックとパンツが、
イタリアのマダムみたいなんですよね。
かっこいいなあ。
- 吉川
- イタリアの糸を使うと、
やっぱりイタリアっぽくなるんですよね。
イタリアの糸は、僕の中では
表現をするうえですごくいいものなんです。
- ――
- すごいことですね、素材がそこを支配しちゃう。
それにデザインもすごくいいんですよね。
たしかに、イタリアっぽい。
すごく着痩せして見えてうれしい、
っていう声もたくさん聞きました。
- 吉川
- 上質で落ち感のあるニットだからこそ、ですね。
素材の良し悪しがそういうところに出るんです。
それと、女性的なシルエットになるように
ところどころ、ちょっと絞ったりしてます。
体型を隠しながら、女性感が出るように。
- ――
- 面白いですね、体形を出すわけじゃないのに。
- 吉川
- 隠してるのにフェミニンな感じが出るような。
やっぱり家で着るっていうのを想定しているので
リラックスできることが大前提。
- ――
- いやー、それはもったいない(笑)。
家だけじゃもったいないですよ。
これは外に出て見せびらかさないと。
- 吉川
- (笑)。
- ――
- アクセサリーが映えますね。
服と、引き立て合う感じがします。
- 吉川
- 僕の、洋服を作る原点はそこにある気がするんです。
服そのものは目立たないんですけれど、
ほかのものを引き立たせる。
- ――
- 色もいいですよね。
ニュアンスカラーっていうのかな。
大人な色っていう感じで。
- 吉川
- そうですね。このへんの色出しはやっぱり
ヨーロッパのマダムを思い出しながら。
- ――
- そして2Wayカーディガンも、この素材で。
- 吉川
- はい。同じメリノウールです。
今シーズンは、スタイルが少し違うんです。
長袖にして、襟ぐりも詰まり気味で、
秋冬に使いやすいかたちだと思います。
タックの陰影を
ウールジョーゼットで。
- ――
- ブラウスと、ワンピース。
背中にタックのあるこのスタイルは、
おなじみ、とも言えそうですけれど。
- 吉川
- そうですね。
うちの顔みたいなものなんですが、
素材が、これも初めて使ったものなんです。
- ――
- ウールジョーゼット、ですね。
- 吉川
- 愛知県の、尾州の生地メーカーさんのものです。
高級なウールの、紳士服地の産地として有名な場所ですね。
こちらもほんとに表情がきれいなんですよ。
ツルッとサラッとしていて。
ジョーゼットって、クラシックな表情があって、
上品でかわいい素材ですね。
- ――
- ナイロンがちょっと入ってるんですね。
- 吉川
- ウールの糸がものすごく細い200双っていうもので、
細すぎてナイロンを巻かないと織れないんです。
それでわずかに入っています。強度のためですね。
- ――
- どうやってこの素材にたどり着いたんですか。
- 吉川
- ひとつ大きかったのが、秋冬ものとして、
素材の置き換えもやってみたかったことですね。
いつも綿でやってるものを、
ウールでもやってみたいって相談したときに、
うちの生地担当が「これ、いいんじゃないですか」って
薦めてくれたんです。
- ――
- こういう素材、STAMP AND DIARYでは
すごく新しい感じがします。
- 吉川
- こういうのをやりたいっていうのは僕の発案で、
探してきてくれたのがうちの生地担当ですね。
- ――
- 吉川さん、スタッフに恵まれてますよね(笑)。
- 吉川
- はい。ものすごく助かってます。
- ――
- ドレープとかタックの陰影が
すごくきれいなのも、素材ゆえ、ですね。
- 吉川
- そうです、そうです。
これも素材の良さがポイント。
軽くて、ほんのりあたたかさもあって。
- ――
- 秋冬だけど軽いっていうのは魅力的です。
動いたとき、サラサラしてるのに、
とろみみたいなものもあるんですよね。
トロッとした感じ。
- 吉川
- その「トロッ」をやってみたいと思ったんです。
ちょっとお出かけっぽくなるんですよ。
- ――
- よく知ってるデザインなんだけど、
やっぱり全然、別物に見えますね。
- 吉川
- ブラウスの形は一緒なんです。
素材の落ち感が違うんですね。
面白いですよね、ほんと素材って。
- ――
- 秋冬にふさわしい上質なものばかりですね。
上品な感じでとても魅力的です。
みなさんにご紹介するのが楽しみです。
ありがとうございました。
(おわり)
ITEMS
ダブルフロントワイドコート
39,600円
(税込)
コーデュロイのジャケット
27,500円
(税込)
コーデュロイのワンタックパンツ
24,200円
(税込)
ラウンドカラーバックタックブラウス
18,700円
(税込)
スタンドカラーバックタックワンピース
29,700円
(税込)
メリノAラインタートルネック
20,900円
(税込)
メリノ2Wayカーディガン
19,800円
(税込)
メリノニットパンツ
20,900円
(税込)
MOVIE
撮影・編集 馮 意欣
スタイリング 山口香穂
モデル miu(NVRMND)
ヘアメイク 伏屋陽子(ESPER)