2011年のカバーラインナップのなかでも たくさんの人の心を惹きつけた <memories of rain> と <sleeping rose>は、 このファブリックがどのようにして作られたのか、 |
ーー | 「ほぼ日手帳2011」の手帳カバーとなった ふたつのファブリックは、 リバティの2010年秋冬コレクションとして 発表されたものですが、これは、 なにかテーマに沿ってつくられたものですか? |
皆川 | いえ、テーマというものはいっさいなかったんです。 自分のなかでのテーマとしては、 自分らしく、リバティらしく、 そしてもうひとつ、 でも、リバティではない。 やはり外部のデザイナーである自分が つくる意味をどこかにもたせたいと考えていました。 |
ーー | それをご自身のテーマに。 |
皆川 | そうですね。 リバティらしくて、リバティらしからぬ、 その接点はなんだろうか、ということを 考えることからスタートしました。 |
ーー | その接点は、微妙そうです。 |
皆川 | ええ、その微妙なさじかげんのところに 着地できたらと考えていて。 それで、ひとつ思い描いたのは、 社内のデザイナーが出した企画としては、 通りにくいかもしれないけれど、 でもリバティのファブリックとして じつは、不自然ではない。 そんなデザインが着地点かなと。 |
ーー | それは、どういった? |
皆川 | たとえば、 この <memories of rain> の柄は、 にじませる、ということを ひとつのポイントにしているんですが、 通常、プリントで「にじみ」というと、 「ミスプリント」といって、 失敗として扱われるようなことなんですね。 でも今回は、そういうミスプリントのような にじみの表情をあえてつくることで、 柄の自由度を表してみようと考えたんです。 |
ーー | 絵の具のにじみですね。 |
皆川 | ええ。これを、仮に社内のデザイナーが、 「にじんだようにしたい」と提案したとすると、 「不良品みたいに見えてしまうからだめだよ」、 みたいにいわれるかもしれない。 そんな社内の企画会議のようなことを あたまのなかで想像しまして(笑)。 |
ーー | (笑)ひとり企画会議を。 |
皆川 | でも、外のデザイナーが提案したものなら「OK」と、 まぁ、イベント的な意味合いも含めてですが、 通っていくというようなことがあるんです。 でも、そうやって 外部のデザイナーだからできることというか、 外からの視点を差し込めたほうが、 伝統的なリバティの方向性ともちがう アプローチができて、 新しい空気を感じてもらえるものが できるんじゃないかと考えたんです。 |
ーー | ほぼ日手帳のカバーとしても、 新しくて、とても魅力的なカバーになりました。 やはり手描きの力なのかなと思うのですが、 生命力があって、軽やかで、たのしげで。 |
皆川 | いたずら描きのようでしょう。 |
ーー | 子どものハミングが聴こえてきそうで、 ごきげんな感じが伝わってきます。 きっと、たのしんで描かれているんだろうな、 と想像していました。 |
皆川 | それが伝わっているなら、うれしいですね。 |
ーー | ものがたりを思わせるようで とてもすてきです。 名前は、先にイメージとして 決まっているのですか? それとも描きあがってから? |
皆川 | 描きながら、ですね。 これは、子どもが絵を描くように、 躊躇なく描いていこうと思ったんです。 子どものころにそうだったように、 うまいとかへたとか、 バランスや構図といったことは考えないで、 自分の気持ちをただ、紙にのせていくということ。 デザインとしての完成度とかじゃなくて、 気持ちだけをのせて柄を描く、ということを やってみたんです。 |
なので、 <memories of rain>という名前には、 そういう、子どものころの気持ちを憶い出して、 という意味を含んでいるのと、 「レイン」というのは、にじませているので、 そこに雨が降っているイメージですね。 |
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ーー | ちょうちょや花や、いろんなモチーフみんな、 バランスとか配置もとくに考えずに。 |
皆川 | そうです。これはもう、 あたまが考えてしまわないように、 どんどん描いて、あっという間に 描きあげた感じでした。 |
ーー | どんどん手を動かして。 |
皆川 | あたまが手に追いつくと、 っていうと変な表現ですけど、 そうするとどうしても作為的になるので、 あたまに追いつかれないように描く、 という感覚がいちばん近いです。 |
ーー | なるほどー。 とても軽やかな感じがするのは 作為がないこととか手の勢いとかに ひみつがありそうですね。 ところで、あちらのお洋服は もしかすると、 <memories of rain> の 色ちがいの生地でつくられたものですか? |
皆川 | ええ、そうです。 うち(ミナ ペルホネン)の製品としては、 子ども服のラインで展開しているんです。 遊んでいて絵の具をつけちゃった、 みたいな感じにも見えるかな、と。 |
ーー | はい、ほんとに。 とても、かわいらしいです。 |
皆川 | たぶん、子どもがこの柄を見ると、 大人の視点とはまたちがうかなと 想像しているんですけどね。 「へただなぁ」とか、 思われるのかもしれない(笑)。 (明日は <sleeping rose> についてのお話をお届けします) |