小さな公園に面した一軒家。
ここは、「エピソード」が生まれた現場、
そう福田利之さんのアトリエです。
日当たりのいい作業部屋には山の写真や植物が置かれ、
福田さんの作品世界と、どこか似た雰囲気があります。
「手帳カバーの製作ははじめてで、不安もありましたが、
のびのびと自分の作品を描くことができました。
もし手帳に詳しかったら、作品ではないところで
気をつかってしまうことがあったかもしれませんが、
そうでないぶん、『絵』として集中して描くことができ、
結果的に、自由でたのしい雰囲気が出せたと思います」
真っ白なキャンバス地に少しずつ色を重ね、
丁寧に仕上げたデザインをカバー生地にプリント。
作品そのものを持ち歩いているような、
贅沢なカバーをめざしました。
一見、幾何学模様のようにまとまってみえるカバーですが、
よくみると鹿、鳥、蝶、葉っぱ‥‥というふうに
1つ1つがちゃんとモチーフになっているんです。
「絵と絵の間にできたすきまを
パズルのように埋めながら描いています。
森にひそんでいる動物や植物たちの息吹を
感じられるようなデザインを心がけました」
そんな福田さんの思いがこもった丁寧なイラストと、
植物の芽吹きや、木漏れ日をイメージさせる
明るい色づかいが相まって、春らしい雰囲気を感じます。
「手帳は長くつかうものだからこそ、
つかう人に、さまざまな物語を感じてほしいんです」
とおっしゃる福田さん。
まさに「エピソード」という名にぴったりな
これから何かがはじまりそうな
予感のするカバーに仕上がりました。
こちらがカバーのもとになった原画です。
あれ、なんだか雰囲気がちがいますね。
「最初は、わりとシックな感じを
イメージしていたんです。
でも、せっかく春に出るものだから
ということで
オレンジなどの明るい色を足していき、
わくわくする感じを出しました」
実際に印刷工場にも同行し、最後まで
行程にかかわってくださった福田さん。
「工場では細かい色調整をおこないました。
背景には、
よくみると濃淡があるのですが
ここは、あえてムラを残して
手描きのよさを活かしています」
全体的な色のバランスにも
福田さんのセンスが活かされています。
「2本のしおりにはオレンジ色を用いて、
アクセントにしています。
バタフライストッパーと
内側は濃いネイビー。
カバー全体をきりっとひきしめました」
完成したカバーをみながら
福田さんと打ち合わせをしていたときのこと。
「このカバーにひそんでいる、
動物たちのキーホルダーがあったらいいね」
そんな会話から生まれたアイデアが現実化しました。
そう今回は、なんとカバーとおそろいの
キーホルダーも同時発売を予定しているんです。
モチーフにしたのは、カバー表紙の1羽の鳥。
そして、この福田さんのアトリエで、
実際の作業風景を撮らせていただくことができました。
まずは下絵を描き、ティッシュを貼って
でこぼこさせたキャンバス地に色を重ねていきます。
作業行程の一部を動画に撮りましたので、ご覧ください。
2013-01-24-THU
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN