|
ほぼ日 |
はじめまして。
ようこそ、おいでくださいました!
|
ドーン |
はじめまして。
どうぞよろしくおねがいします。
|
|
ほぼ日 |
2013年版でロキャロンのタータンの手帳を
出したいね、という話になったときに
スワッチ(素材見本)を送ってもらったのですが、
いざ届いたら、すてきなタータンが
スーツケースにいっぱいで!
すっごく迷って、今回の3つの柄を選びました。
|
|
ドーン |
若干の色味の違いなども合わせますと、
アーカイブは2000点以上にのぼります。
実は、お送りしたスワッチでも、
ロキャロンのタータンの一部でしかないんですよ。
|
ほぼ日 |
わわ、覚えきれなさそう‥‥。
|
ドーン |
わたしもすべて覚えているわけではありませんよ(笑)。
ですが、見た瞬間、
それがどういうタータンなのかはわかります。
|
ほぼ日 |
おー、さすが!
チーフデザイナーさんですものね。
どれくらいロキャロンで働いてらっしゃるんですか?
|
ドーン |
大学を卒業してから24年間、
ロキャロンのデザイナーとして働いています。
現在は、セールスディレクターと役員を
兼務しています。
|
ほぼ日 |
とてもご活躍されているんですね。
あの、ロキャロンのデザイナーさんって、
具体的にはどんなことをされているのでしょう?
|
ドーン |
もうご存知だとは思いますが、
スコットランドにおいて、
タータンは、主に貴族が一族を象徴する「家紋」として、
そのアイデンティティとともに継承されてきました。
わたしたちは、そのようなタータンを
「クラシック・タータン」と呼んでいます。
今回の手帳カバーにつかっていただいた
「ブキャナン」や「カニンハム」は
典型的な「クラシック・タータン」ですね。
一方、「ニュー・タータン」といって、
毎年新しいオリジナルのタータンを発表します。
主に、デザイナーは、そのデザインを考えたり、
新しいクオリティの素材の選定などをしたりしています。
また、家族や会社などからオリジナルのタータンを
つくってほしいというオーダーにも応じています。
よく目にする高級ブランドのタータンも、
ロキャロンがつくったものだったりするんですよ。
|
|
ほぼ日 |
ニュー・タータンのデザインだけでなく、
素材の選定なども
デザイナーさんのお仕事なんですね。
|
ドーン |
そうですね。
あと、「クラシック・タータン」では、
タータンがつかわれる製品に合わせて
縮尺を変えたりするのも、デザイナーの仕事です。
|
ほぼ日 |
そうそう、今回、
手帳カバーにした3つの柄のタータンは
「ほぼ日手帳」に合うように
リサイズしていただきました。
|
ドーン |
手帳カバーの大きさに合わせて
柄が美しく見えるように、
本来のパターンのサイズから
70%小さくしました。
(手帳カバーを触りながら)
すてきな製品にできあがって、
わたしもうれしいです。
|
|
ほぼ日 |
ありがとうございます。
|
|
|
|
ほぼ日 |
さきほどのお話で考えれば、
2012年に発表された「ニュー・タータン」が
「ホーリールード・ダイヤモンド」なんですね。
|
ドーン |
はい、2012年に発表した新しいタータンです。
ただ、厳密にいうと
これは「クラシック・タータン」なんです。
|
ほぼ日 |
え、そうなんですか?
|
ドーン |
はい、分類としては
「クラシック・タータン」。
「ホーリールード・ダイヤモンド」は
エリザベス女王の即位60周年記念に
つくられたタータンなのですが、
この柄の構成は、女王の衛兵が着用する
「ロイヤル・スチュアート」と同じなんですよ。
|
|
ほぼ日 |
‥‥たしかに、構成が同じ!
|
ドーン |
実は、当初名前にある
「ダイヤモンド」をイメージした色の
オフホワイトやブルーなどをベースにした
構成を考えていたのですが、
これが何度やっても、しっくりこなくて。
ダイヤモンドに固執しすぎているのかも、と思い、
一旦ダイヤモンドから離れて考えてみたんです。
そうして考え直していたうちに、
ロイヤルファミリーの色である紫を
ベースにしたらどうだろう、と。
結果、とてもうまくいきました。
|
|
ほぼ日 |
紫はロイヤルファミリーの色だと
おっしゃってましたが、
日本でも「高貴、上品」といったイメージがあります。
実際、3つの柄のなかで一番の好評なのが
「ホーリールード・ダイヤモンド」なんですよ。
|
ドーン |
わぁ、それはすばらしいですね。
多くの方に、このタータンの上品さを
感じていただけて、たいへんうれしいです。
色の話でいうと、ほかの色にもちゃんと意味があって。
さきほどいった通り、
ベースの紫はロイヤルファミリーの色。
ブルーはスコットランドの国旗の色からとりました。
そして、アクセントになっているラインは、
今までにエリザベス女王がご経験された
25周年記念「シルバー・ジュビリー」のシルバー、
50周年記念「ゴールド・ジュビリー」のゴールド、
そして、60周年記念の「ダイヤモンド・ジュビリー」を
イメージした白になっています。
|
|
ほぼ日 |
へぇー、おもしろい!
このタータンの中に、時間の流れや
ストーリが入ってるんですね。
|
ドーン |
タータンをデザインするうえで、
一番大切にしているのは、
そのタータンに込められたストーリーなんです。
バランスをよくするために
差し色をいれることもありますが、
基本的には、色にはきちんと意味があります。
|
ほぼ日 |
ということは、
「ブキャナン」や「カニンハム」の色も?
|
|
ドーン |
もちろんです。
といっても、ずいぶん昔のタータンなので、
すべての詳しいことはわからないのですが‥‥。
昔は糸を染めるのにその土地に根付く
草木や果実がつかわれていましたので、
たとえば、「カニンハム」のこの赤は
ラズベリーやクランベリーなど、
その地方の特産物の色だったのでしょうね。
|
ほぼ日 |
つまり、「クラシック・タータン」には
そのタータンを所有していた人たちの
「自分の土地の色だ」という誇りが
つまっている。
|
ドーン |
もう、アイデンティティそのものですね。
あまりにタータンが
スコットランド人の民族意識を高揚させることから、
昔、イングランドとの戦でスコットランドが負けたとき、
タータンが禁止されたということがあったほどです。
|
ほぼ日 |
えぇっ、禁止になったんですか!?
|
ドーン |
1746年の「カロデンの戦い」にて、
スコットランドが敗戦し、禁止令が出されました。
その後撤回されましたが、
実際にタータンが復活するのは
禁止令が出て約100年後の
19世紀に入ってからです。
その間に、たくさんのタータンが
この世からなくなってしまいました。
|
ほぼ日 |
復元するにも、
元になるものがないと‥‥。
|
ドーン |
絵に描かれたタータンや、
切れ端などから復元していきました。
そんな過去も関係して、
スコットランド人のタータンへの思いは、
格別なんですよ。
|
|
ほぼ日 |
その特別な思い、ちょっと分かった気がしました。
|
|
|
|
ほぼ日 |
2013年版のラインナップを考えていたとき、
「すてきなチェックの手帳をつくりたい」と
探して、出会ったのが
ロキャロンさんのタータンだったんです。
なんていうのか、
色の発色がとても美しく見えて‥‥。
|
ドーン |
ありがとうございます。
ウール糸の染め具合はもちろん、
その糸の質やきめ細さ、
そして、織ったときの密度など
こだわりをもってつくってますので、
そういったことが
結果的に関係しているのかもしれません。
|
ほぼ日 |
あぁ、たしかに、
単に色だけじゃなくて、
そのようなこだわりすべて含めて、
「いいものなんだな」と感じます。
その品質のよさは、
イギリス王室でも認められているんですよね。
|
ドーン |
エリザベス女王には、
実際におつかいいただいています。
アンドリュー王子がロキャロン社を訪問され、
お母さまであるエリザベス女王のプレゼントに
カシミヤの大判ストールを
お買い求めくださったことがあって。
そして女王は、
スコットランドで毎年、秋に開催される
ハイランド ゲームの1つである
「ブライマー ギャザリング」をご観戦されたときに
そのストールを
お召しになられていたということがありました。
もう、会社のみんなでテレビをみながら
「あれ、ロキャロンのだよ!」って
はしゃいでしまって(笑)。
それ以来、公の場で何度か
おつかいになられているところを拝見しています。
|
▲ブライマー ギャザリングをご覧になるエリザベス女王。
膝には、ロキャロンのストールがかけられている。 |
ほぼ日 |
きっと、エリザベス女王のお気に入りなんですね。
|
ドーン |
そうだと、たいへんうれしいです。
話を戻しますが、
「ロキャロンはタータン専門の
ファブリックメーカーである」
いうことも、とても大切だと思います。
世の中にチェック柄というのは、
もうたくさんありますよね。
そのなかで、スコットランドにある
「タータン登記所」に認可、登録されているものだけが
「タータン」といえます。
ロキャロンがつくるのは、すべて「タータン」なのです。
|
▲「ホーリールード・ダイヤモンド」の公式認可証 |
ほぼ日 |
すべて、"本物"のタータンである、と。
|
ドーン |
また、一般的に
スコットランド以外の生地屋さんがつくるチェックは
番号で管理されていて、
時が経つに忘れ去られていきます。
一方、タータンには
「受け継がれていくものをつくろう」という思いが
込められていますから、番号の管理ではなく、
すべてに名前がついているんです。
|
ほぼ日 |
そうか、タータンをデザインするということは、
スコットランドの遺産になることが
前提となっているんですね。
つまり、すでにつくるときの心が、ちがう。
|
ドーン |
そう思います。
ですので、タータンは色あせることがありません。
現に、「カニンハム」などの
12世紀ごろにつくられたタータンは
今でも愛され続けていますよね。
|
ほぼ日 |
昔も今も、
「カニンハム」の柄がすてきだな、と
思う気持ちは一緒なんですね。
それって、本当にすごいことですよね。
|
ドーン |
タータンは、日本でもとても人気があります。
時代も国境も超えて愛されているタータンを
つかった「ほぼ日手帳」で、
みなさんの生活の一部に
取り入れていただけたら、うれしいです。
|
|
ほぼ日 |
本日は、ありがとうございました。
|
ドーン |
ありがとうございました。 |