ほぼ日手帳WEB SHOPで毎年販売している 今年も6月に「ご近所の目」チェックを実施し、 また、今回は長年ご指摘をいただいていた 「蔵前駅乗り換え問題」をご説明する前に、 |
みなさんのチェックのおかげで また一歩、「日本一の路線図」に 近づくことができました。 ご協力、ありがとうございました。 |
蔵前駅乗り換え問題‥‥それは、
この件に関して、
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ーー | 本日は、お時間をいただきありがとうございます。 実物をお持ちしたんですけど、 弊社が製作している「ほぼ日の路線図」は、 主要都市の地下鉄、JR、私鉄が、 すべて1つにまとまっている路線図なんです。 |
おぉ、すごいですね。 こちらは、いただいてもいいんですか? |
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ーー | はい。ぜひ! そして、この路線図のもう1つの大きな特徴は、 読者の方々に呼びかけて 「ご近所の目」で路線を確認していただく という方法をとっていることなんです。 届いた意見を、1つ1つ確認して、 反映していく作業を続けています。 |
ずいぶんと 大変なことをされていますね(笑)。 |
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ーー | はい(笑)。 そういう方法で成長してきた路線図なんですが、 読者の方から、毎年必ず ご意見をいただく駅がいくつかあるんですね。 その代表格が、実は「蔵前駅」なんです。 |
蔵前が。 |
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ーー | そうなんです。 最初、私たちは都営大江戸線の蔵前駅と 都営浅草線の蔵前駅が離れていることを 知らずに路線図をつくっていたんですが 読者の方からメールで指摘がありまして。 駅員さんに電話で確認したところ、 「たしかに離れてはいますが 料金がかからずに乗り換えができるので、 乗り換え駅というふうに見えたほうが、 親切なんじゃないでしょうか」 という意見をいただき 「乗り換え駅」と表示してきました。 それで正しいのかどうかということと、 そもそもなぜ離れているのかということを 教えていただきたいなと思っています。 |
なるほど。 実は、同じ意見がうちにもよく届くんです。 |
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ーー | あぁ、やっぱり、あるんですね。 |
蔵前駅は、みなさんがおっしゃる通り、 地上を歩かないと 乗り換えができない場所ですから、 いろいろな意見をいただきます。 でも、運賃面から考えると、 「同じ駅」という扱いにすることで、 運賃が継続されるという お客さんにとってのメリットがあるんです。 普通は、1回改札を出ると、 そこまでの運賃が必要で、 また入ると、初乗り料金を引かれてしまう。 ですから、「乗り換え駅」で間違いありません。 うちでは「同一駅」と言っていますが。 |
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ーー | 同一駅。 ただ、乗り換え駅だと思っていても、 はじめて降りる方は 遠いので やっぱりびっくりしちゃいますよね。 |
そうですね。 「わかりづらい」という声もいただくので、 改札を出て階段をあがったところの道路に、 「230メートル先に大江戸線」とか 「ここを直進」といった 標識を立てています。 |
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本当は、道路に広告のようなものを出すのは 禁止されているんですけど。 |
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ーー | そうなんですか? |
はい。そういう規則があるんです。 でも、やっぱりお客さまに わかりづらいといけないので、 「なんとかお願いします」って頼みに行って、 道路に立てさせてもらっています。 ▲たしかに、道路に標識が! |
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ーー | いろいろ工夫をされているんですね。 ところで、 なぜ、こんなに駅間が離れているんでしょうか。 |
その話は、駅をつくりはじめた時代まで さかのぼるんですけど、いいですか? |
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ーー | ぜひ、お願いします。 |
最初に基本的な情報からお伝えしますと、 今、東京の地下鉄は路線が13本あるんですけど、 どの路線も、駅間の距離の平均が約1キロなんです。 |
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ーー | 1キロ。 けっこう短いんですね。 |
はい。 そして、新しい駅をつくるときには お客さまの利便を考えて、繁華街や デパートがあるところなど、 人通りの多い場所につくることが多いです。 既設の鉄道があるところには接続して、 お客様の利便を上げることを考えながら、 駅をつくっていきます。 |
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ーー | なるほど。 |
まず1960年ごろ、浅草線ができました。 そのころ、東京には銀座線と丸ノ内線の一部が 既にあったんですけど 国から東京都に、 「どんどん地下鉄をつくりなさい」とお達しがあり 浅草線をつくることになりました。 浅草線の浅草駅と浅草橋駅がまず計画されたのですが、 この2つの駅間は、1.5キロもあります。 さきほど言ったように 駅間は平均1キロなので、1.5キロだと ちょっと長いんです。 |
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ーー | たしかに。 |
それで、浅草駅と浅草橋駅の間に 当時あった蔵前国技館と、 その周辺の問屋街が 人通りがすごく多いところだったので、 「ここに駅があれば便利だ」ということで、 浅草線の蔵前駅を計画したんです。 |
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ーー | 1つ目の蔵前駅が生まれたんですね。 |
▲浅草線蔵前駅。下水道局のところに、当時は国技館があったそう。 |
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そうです。 また時は流れて1972年、 東京は爆発的に人口が増えて、 経済も活発になっていました。 そこで、国から 「1985年までに地下鉄を13本つくりましょう」 というお達しがありました。 そのときにはじめて、 大江戸線をつくる構想ができました。 「どなたかやりませんか?」って言われたので、 1974年に、うち、つまり東京都交通局が 「やります」って手を挙げたんです。 |
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ーー | へぇー! そんなふうに決まるものなんですね。 |
ところがその後、オイルショックが到来したんです。 建設費もすごく上がっちゃって、 公共事業がみんなストップしました。 大江戸線の話も、一度中座したんです。 |
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ーー | ‥‥オイルショック。 そのあおりを受けたんですね。 |
そう。その後、どうにか状況が落ちついた頃、 都議会で「大江戸線の話を進めてほしい」 という要請がありました。 有楽町にあった東京都庁を 新宿へ移転するという話が持ち上がったので、 それに合わせて大江戸線を作ろうという話で。 しかも、大江戸線は都内をぐるっと 円を描くように走る環状型の線なんですけど、 既存の地下鉄線はすべて放射状に広がっていたので、 そこに大江戸線が接続したら 「利便性が飛躍的に上がる」ということで、 当時の鈴木知事が都政の最重要課題として つくる決断をされたんです。 |
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▲当時の資料。赤いラインが大江戸線。 |
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ーー | おぉー。 |
ただね、大江戸線って すごく費用がかかる路線だったんです。 浅草線(1960年開業)を1キロ通すのに 約46億円かかったのですが、 大江戸線(1991年開業)は 1キロあたり約323億円必要でした。 でも都からは「早く、安くつくりなさい」と 言われているので 安く鉄道をつくれるよう 第三セクターを設立するなどして試行錯誤したわけです。 そんな厳しい状況で、予算も増やせないなか、 浅草線の蔵前駅があった場所に 大江戸線の駅をつくろうとすると、 またさらに莫大なお金と時間が かかるということがわかったんです。 |
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ーー | ‥‥なぜですか? |
浅草線の蔵前駅のまわりは住宅地だったんです。 だから、大江戸線を接続させるとなると、 その民家の下に 線路を通すことになるわけです。 |
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ーー | あ、民家の下! たしかに‥‥。 |
▲浅草線の蔵前駅の周辺は、民家が密集しています。 |
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民家の下に線路を通す場合、 その土地を持っている人に、 保証金を払う必要があります。 下に地下鉄が通ると、 将来、その土地に大きなビルを建てようと思っても、 地下鉄が壊れる恐れがあるから 一定の大きさ以上のものを建ててはいけないっていう 制限があるんですよ。 ほかにもいろんな制限があるので、 保証金を地下鉄の業者が払う必要があるんです。 |
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ーー | なるほど。 |
それに、交渉をするにあたっても 住民全員と合意する必要があって、 時間と労力がかかるんですね。 でも、この大江戸線っていうのは、 「とにかく早く、安くつくりなさい」っていう お達しがでていたので、 やむなく、少し離れた道路の下に 大江戸線の駅が通るようにしたんです。 |
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ーー | あっ、たしかに 道路には民家がありません。 |
ただ、鉄道というのは、 「道路を通ってはいけない」 「自分で用地を買って、通しなさい」 というルールがあったので大変でした。 山手線も、道路を通ってないでしょ? だけど、地下鉄の場合は 「やむを得ない場合は、 道路の管理者が許可すればいいよ」ということで ここに通したんですね。 今、大江戸線の約80%が道路の下を通っています。 東京で最も、道路の下を通ってる路線なんです。 |
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ーー | へぇー! 知らなかったです。 |
しかも、道路の下を通るといっても、 普通の地下鉄だと、急なカーブは曲がれないから 結局はどこかで民家の下を通らなきゃいけないんですけど、 大江戸線の場合は、車輪がリニアモータという 新しいモータで走っているので、 かなりの急カーブを曲がることができます。 だから、多少の無理をしてでも 既存の道路の下を通らせることができたんです。 |
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▲45年、このお仕事に携わっているという井上さん(写真右)。 |
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ーー | へぇー。 大江戸線ってすごいですね。 |
はい。線路に勾配や高低差もあって ちょっとジェットコースターみたいですよ。 |
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ーー | ジェットコースター! |
そういうわけで、蔵前は 少し離れた場所に2つの駅があるんです。 「地上連絡」という形にしてね。 |
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ーー | やむを得ず、ということ だったんですね。 |
ええ。当時の担当者もつらかったと思います。 同じ場所に駅をつくりたかったでしょうし。 でも実行しようとすれば、すごくお金がかかるうえに、 完成するのに10年くらいかかるかもしれない‥‥。 かといって、既にあった 浅草線蔵前駅のほうを、大江戸線側に 近づけるのも無理がありました。 既に利用者がたくさんいる駅を移動するというのも、 また大変な話ですから。 それで、今のような形になりました。 本当は地下鉄の乗り換え駅は、 地下でつながっているのが原則なんですけどね。 |
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地下で乗り替えられれば、 車も来ないし、危険も少ないし。 |
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ーー | そうですね。 |
以上が顛末です。 それでも「同一駅」としていることで、 さきほどお伝えしたように、 お客さんには、運賃の面でのメリットがあります。 あと、同じ駅だと証明できる わかりやすい話をすると、 浅草線の蔵前駅で切符を買うと、 その切符を持って 大江戸線の蔵前駅からも入れるんですよ。 |
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ーー | あ、入れるんですか。 |
はい、離れていても、 同じ駅ですから。 |
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ーー | たしかに、隣の駅で買った切符は 普通は乗れないですもんね。 |
つまり、 「たまたま物理的には離れているけれども、 あくまでも同じ駅なんです」 ということなんです。 |
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ーー | ますます、 「蔵前駅は乗り換え駅でいいんだ」 という自信が出てきました。 ちなみに、この蔵前駅で乗り換えることができる おすすめのルートなどはありますか? |
そうですね‥‥ たとえば、今だとスカイツリーが 観光名所になっていますよね。 ここへ行くには、浅草線の押上駅が便利なんですけど、 西側から大江戸線でいらっしゃった方が、 どこで浅草線と接続したらいいか、っていうときには 蔵前駅を利用していただくのが便利です。 |
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ーー | なるほど。 1回乗り換えで済むので スムーズですよね。 |
地上を歩くので 天気のいい日が、おすすめです(笑)。 |
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ーー | 晴れた日限定で(笑)。 今日はいろいろお話をうかがうことができて、 当初の目的であった、 「乗り換え駅」問題もすっきりしましたし、 なぜ蔵前駅が離れているのか 理由がわかって、とっても興味深かったです。 どうもありがとうございました! |
▲浅草線蔵前駅を出て歩きはじめると、あちこちに標識がありました。 |
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▲大江戸線蔵前駅に到着! |
駅にはそれぞれ歴史があることを 今後も、「ほぼ日の路線図チーム」は 「ほぼ日の路線図 2014」は、 路線図チーム一同
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2013-08-21-WED
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