2ペン先を作る技術。
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- さきほど「金ペン」について
教えていただきましたが、
万年筆のペン先は、
金でできているのが一般的なんですか。
- 金のものが多いですが、
たとえば、パイロットでは
気軽に使えて値段の安い万年筆も作っています。
1000円代のkakunoや
3000円代のコクーンはステンレスを
使っているんですよ。
- ステンレスは硬さがあるため、
金のようなコシのやわらかさがなく、
しなりが出にくいんです。
ただ、今技術が発達してきているから
ステンレスのペンも
だいぶ書きやすくなってきました。
とくにステンレスは、
本来はとても硬いものなんですけど、
万年筆のパーツとして生かすために
なるべく使いやすくできるように
努力している感じですね。
▲kakuno
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- 100年の時を経て、技術が磨かれてきたんですね。
では、話を戻して、
いまここに並んでいる
万年筆のペン先は、金ということですね。
- はい。この「カスタム74」のペン先は、金です。
よく見ると、「14Kの585」と書いてありますよね。
つまり14金ということなんです。
▲カスタム74
- 金は24金が“純金”なんですが、
金の含有率が上がっていくほど、
やわらかくなります。
14金に比べて18金のほうがやわらかく、
21金になるともっとやわらかい。
あんまりやわらかすぎても書きづらい
ということで、パイロットでは
14金のものを多く出していますね。
- ーー
- なるほど。
- また、金ペンは長く使うほどに
自分の癖がついてきて、書きやすくなります。
あと、金はさびないという長所もあります。
腐食に強いことがなぜ大切かというと、
昔のインクは酸性が強いものも
あったためです。
- そして、ペンを語る上で重要なのが
先ほども少し話に出てきた「ペンポイント」です。
金ペンだけでは、紙に当てたときに
ざらざらとした感触になってしまうのですが、
ペンポイントがあるから、当たりがよくなって
なめらかな書き味になります。
ペンポイントに、さきほども話に出てきた
「イリドスミン」で作った
小さな玉が付いているんですけど、
わかりますか?
カスタム万年筆シリーズのペンポイント(イメージ図)
- ーー
- ちょっと、先っぽのほうが丸くなっていますね。
- この玉は、ペンの太さによって
大きさを変えています。
たとえばカスタム74は15種類の
ペン先の太さをそろえていますが、
太くなるにしたがい、玉も大きくなります。
- そして最終的な仕上げの段階で
ペンポイントの先端部分を研ぐのですが、
そこも人の手でやっています。
- 日本人って、縦書きも、横書きもしますよね。
日本語の文字にも、
とめ、はね、はらいがありますし。
- ーー
- そうですね。
ローマ字だと、横書きしかないですね。
- パイロットの万年筆は、
日本語を書くことを考慮して、
ペンポイント先端の内側にも
繊細な研磨をかけているんです。
- ーー
- すごく細かそうな作業‥‥。
- 英語の場合は、文字を一行書いても
あまり紙とペンが離れませんよね。
でも日本語だと、書く時に縦横にペンが動くし、
そのたびに、紙からペンを離さなければいけないから、
ペン先の作り方には、
国内と海外のメーカーでは違いがあると思います。
- 日本語の手紙を書くときは
パイロットの万年筆を使って、
英語を書くときは海外製のものを使うという人も
いらっしゃるみたいです。
- ーー
- 海外の万年筆で、安いものなどありますが、
パイロット万年筆の特徴としては
どんなことが挙げられますか?
- 気密性の高さは、あると思います。
- ーー
- 気密性が高い、とは、
どういうことでしょうか?
- カスタム74やkakunoの
キャップの内側を見ていただくと
わかると思うのですが、
キャップの中にある二重のキャップ
「インナーキャップ」が関係しています。
この部分があることによって、
キャップ内でさらにペン先が密閉状態になり
インクの蒸発が防げる。
つまり、気密性が保たれるんですね。
- ーー
- なるほど。
目に見えないところまで
しっかりと設計されているんですね。
(つづきます)