〈前編〉もうひとりの自分。
- ――
- 小栗さんが以前、「news every.」で
手帳についてお話されているのを拝見しました。
「ほぼ日手帳」を使ってくださっていたんですね。
- 小栗
- だいじに使わせていただいていますよ。
- ――
- 「ほぼ日手帳」を使いはじめてから、
何年ぐらいになるのでしょうか。
- 小栗
- いま手帳を見返してみると、
あっ、2010年から使っていますね。
私は手帳を選ぶのに、ずっと迷っていたんです。
会社で支給される手帳もあるんですが、
私が使うにはちょっと薄すぎて‥‥。
取材手帳や日記としても兼ねられて、
なおかつ持ち運べるような手帳はないかしら、
と思っていたら、主人が教えてくれました。
「こういうのあるよ。いいんじゃない?」って。
- ――
- ご夫婦で使ってくださっていたんですね。
取材や日記として使おうという
思惑の通りになったのでしょうか。
- 小栗
- ええ、私のニーズに合っていたみたい。
手帳を選ぶ時に重視していたことがあって、
「こう使いたいな」っていう三本柱があるんですよ。
まず基本は、仕事のスケジュール管理に使えること。
それに、中学生の頃から続けている、
好きな言葉や「これ使えるかも」というものと
出会った時に、ノートがわりに書き留めておけること。
あとは、プライベートで気づいたことを書くために、
日記としても使えること。
それらを全部できるものということで、
ほぼ日手帳を選んで使いはじめました。
- ――
- 小栗さんにとって、
ちょうどいいサイズだったのかもしれませんね。
- 小栗
- 私は主に仕事で使っているんですけど、
そこにプラスして、もうひとりの自分が、
この手帳の中にいる感じがするんですよね。
辛いことがあっても、
手帳があると安心できるんです。
何があっても、自分を救ってくれる感じ。
だから、仕事の時だけじゃなくて、
友達に会いに行く時や、お買い物に行く時でも、
手帳を持っていないと不安になっちゃう。
- ――
- そう思うようになったのには、
何かきっかけがあったのでしょうか。
- 小栗
- 私、日本テレビを辞めていた時期があって、
復帰しようかどうしようかというタイミングで、
相談した人がいるんです。
そのかたから占いのように言われたことがあって、
「会社に戻っても戻らなくても大丈夫。
復帰するなら、会社に行く自分とは別に、
もうひとりの自分を家に置いておきなさい。
朝は『いってらっしゃい』と送り出して、
帰ったら『おかえりなさい』と出迎える自分を、
家に置いておくようにすると楽になります」
というようなことを言われました。
それはたぶん、私が仕事を一所懸命に、
とにかくやらなきゃと思いすぎていて、
上手くいかないことがあった時に、
傷ついていたからだと思うんです。
- ――
- そんな時期があったんですね。
- 小栗
- その後、会社に復帰したんですが、
2011年頃には政治部の現場にいて。
いま、手帳を見返してみると、
仕事のことも自分のことも書いていますね。
新聞の切り抜きで図表を貼り付けておいたり、
仕事以外でも、いただいたお手紙を貼ったりして、
仕事の安心と心の安心の、
どちらもが詰まっている感じがします。
- ――
- 手帳の中に、当時の小栗さんがいるんですね。
- 小栗
- 手帳を見ていると、いろいろ思い出しますね。
おいしいものを食べたなあ、
夏休みにはこんなところへ行ったなあとか。
ほんとうに、すべてが詰まってます。
- ――
- 月間カレンダーにも、
毎日スケジュールを書いているんですね。
- 小栗
- この頃は、政治部のデスクと、
テレビに出て解説する日があって、
デスクの日と解説の日がわかるように、
DとかTとか書いていました。
番組では時事に合わせた解説をしたいので、
「世の中ではこの日にこんなことがある」、
といった大雑把な予定を書いておいて、
それを元に、解説の内容を考えていました。
あとは、知人のお誕生日や命日も書いていますね。
- ――
- 「news every.」の出演者の
お誕生日も書かれていますね。
- 小栗
- そうですね、仕事関係の方やお友達の
お誕生日を書いておいて、
メールやお手紙を忘れないようにしています。
お正月には、カレンダーのページに
お誕生日や命日を書き写しています。
新年、気持ちを新たにして。
- ――
- 情報の引っ越しが、
年始の習慣になっているんですね。
- 小栗
- そうですね。
あとは、父親や母親の年回忌が何年にあって、
その時に私は何歳になっている、
みたいなことも表にしているんです。
ずーっと先まで書いているから、
その時の自分はもう、
97歳とかにまでなっているんですけど(笑)。
- ――
- かなり未来のことまで書かれるんですね。
小栗さんは、いつ手帳に
書き込んでいるんでしょうか。
先ほど、報道フロアをのぞいたら
ピリッとした空気が流れていて、
みなさんお忙しいんだろうなと思いまして。
- 小栗
- 取材の日程や予定はその時に書くし、
新聞や本を読みながらも書いてますね。
あとは、オンエアが終わってから、
夜に会食をしながら取材をすることもあって。
その場ではメモを取れないこともあるので、
家に帰る途中でファミリーレストランに寄って、
忘れないうちにワーッと書くことはありますね。
- ――
- 頭を整理するように書かれるんですね。
カラフルな付箋が目立っていますが、
色分けをされているんですか。
- 小栗
- おおまかに分けていますね。
黄緑色の付箋は、
ニュースの役に立ちそうな話について
書いたページに貼るようにしています。
何かの勉強会に参加した日とか。
たとえば人間とロボットが将棋で対決して、
ロボットに負けちゃったとします。
何かコメントしなきゃいけない時に、
IoTの勉強会に出ていたことを思い出して、
そこから情報を引っ張ってくるとか。
あるいは勉強会でお会いした人に聞けば、
最新情報をもらえるかもしれません。
そういう情報を思い出す手がかりにもなるので、
この手帳がなくなったら、もう泣いちゃいます。
- ――
- 手帳に書かれた情報が、
仕事と直結しているんですね。
- 小栗
- 自分の中に溜めていけたらいいんですけど、
私は、自分の許容量が少ないので(笑)。
いろいろなテーマで人と会うから、
情報が抜けていっちゃうんですよね。
- ――
- 手帳に書いたぞ、ということを、
忘れなければいいんですね。
ピンク色の付箋には、
どんなことが書かれているんでしょう。
- 小栗
- ピンクの付箋を貼っているページは、
人にお会いするのでお店を予約しようと思って、
忘れないように貼っていたものですね。
- ――
- お店の予約が取れたら、
付箋をはがしたりするんですか。
- 小栗
- 本来なら、はがすべきですよね(笑)。
だけど、そこにも段階があって、
先方にお店をお伝えしたとか、
地図を送ったりしなきゃいけないので、
どの段階までいったかなと思いつつ、
付箋は残ったままになっています。
- ――
- 信号が切り替わるように、
付箋の色を替えていくのもいいですね。
1段階進んだら、色が変わるとか。
- 小栗
- ああ、そうですね。
そんな使い方もいいですね。
そうしてみようかしら。
- ――
- 連絡までは済んでいるから、
黄色にしよう、みたいな。
- 小栗
- なるほど、赤・青・黄色があればいいんだ。
終わったら取っちゃえばいいし。
(後編につづきます)