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トリニティ ―3頭のくま―
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はるかドイツのふかいふかい森の奥。
そこに棲むだれもがチョコレートが大好きな
ちいさな王国があったとさ。
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王国の王さまです。
きちょうめんな性格です。 -
いつも手帳を手にして、
気になったことがあったら、
すぐ書きこみます。 -
表紙にテディベアの顔が描かれた、
ごじまんの手帳なのです。
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ある日、王さまは
家来を呼んで言いました。
「世の中には手帳につける
カバーというものがあるそうだ」 -
「どうかわたしのために、
すてきなカバーを
見つけてきておくれ」 -
役目をおおせつかったのは、
ショコ、オーレ、ビスク。
3頭のちいさなくまたちです。 -
手帳カバーってどんなもの?
3頭ともよくわかりませんでしたが、
とりあえず探しに行くことにしました。 -
アオアシカツオドリに運んでもらって、
王国の街までひとっ飛び!
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さいしょに見つけたのは、ひげの紳士。
ネクタイとおなじ柄のあれが、
もしかして手帳カバーじゃない? -
紳士の手帳を見せてもらいながら、
ショコとオーレとビスクは歌い出しました。
♪ くまのかおいっぱい うれしいな -
♪ かるくて うすくて うれしいな
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♪ かくれんぼできて うれしいな
♪ てちょうカバーは いいものだ -
けれどネクタイ紳士が言うことにゃ、
「でも、これはカバーじゃなくて
手帳そのものなんだよ。
だからお役に立てないようだ」
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チョコのお店にいた、じょうひんなマダム。
チョコレート色のおさいふみたいだけど、
あれがもしかして手帳カバー? -
マダムの手帳にぶらさげてもらって
ショコがうきうき歌い出しました。
♪ くるくるのまきげ うれしいな -
♪ おふとんにもなる うれしいな
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♪ おかねがいっぱい うれしいな
♪ てちょうカバーは いいものだ -
けれどじょうひんマダムが言うことにゃ、
「王さまの手帳は1日1ページでしょう?
このカバーに入るのは週間タイプなのよ。
お役に立てなくて、ごめんあそばせ」
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さいごは、わかいおじょうさん。
それはもしかして、手帳カバー?
ちょっと、見せてちょうだいな。 -
あっ。
あれは? -
ひゃっほう!
くまのかおがついた、しおり!
3本も! -
ショコとオーレとビスクは、おおはしゃぎ。
しおりにからまって動けなくなるほどです。
♪♪♪ 3ぼんのしおり うれしいな -
♪ くまのて ペンさし うれしいな
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♪ いろいろ はいって うれしいな
♪ てちょうカバーは いいものだ -
おじょうさんもうれしそうに、
「はい、手帳カバーはいいものです」
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とうとう手帳カバーをみつけた3頭は、
おじょうさんのカバーを借りて、
王さまに見せにいくことにしました。 -
王さまは、おじょうさんのカバーを
たいそう気に入って、おなじものを
つくってもらうことにしました。 -
手帳カバーを探しあてたごほうびとして、
王さまは、ショコとオーレとビスクを描いた
特製チョコレートをつくってくれました。 -
ショコもオーレもビスクも、
もうおおよろこびです。 -
もちろん、おじょうさんも、
特製チョコレートを
たくさんもらいました。 -
3頭が描かれたチョコレートは、
王国でたいそう人気になったのだとか。 -
それからずいぶん経つけれど、
いまでも王宮には、
3頭を描いた絵がかざられているそうです。 -
おしまい